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第九章 VS相羽修行
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「うう……ケツ痛え……」
ケイとの乱暴なセックスより、勝行の玩具虐めの方が後遺症がきつい気がする。翌朝になっても光は起き上がれず、布団の中で寝込んでいた。
元に戻った勝行は、やらかした事を多少は覚えているらしく「やりすぎた、ごめん」と平謝りしている。これはこれで光としても誤魔化したり隠さずに済んでいいのだが。
「お前のギャップは極端なんだよ」
「お……仰る通りで……」
「お前覚えてるかなあ。前にブラックモードのままでライブに出たことあるんだけど。すんげえ高飛車だったから、みんなビビッてたんだぜ。まあ……スカート履いてたし、コスプレだからネタだと思われて助かったけど」
「ハロウィンだろ。狼男で女装コスプレだったライブ……覚えてる。光の衣装がエロ過ぎて、みんなから厭らしい目線で見られてるのが腹立たしくて、つい……」
「じゃあそのあと、家で俺にお仕置きだっつって、バイブ突っ込んだままケーキ食わせたのも覚えてるか?」
「………………そんなことした?」
「したよ」
「ごめん……」
情けない声で謝る勝行の姿があまりに可愛くて、光は思わずぷっと笑ってしまった。昨夜の凶悪な姿はどこへやら、だ。
(多分、旅館でキレた時もそうだな。あれはケイじゃなかったんだ……くそぅ……なんか色々わかってきたぞ)
痛む腰をさすりながら、光は脳内情報を整理する。
ケイは勝行に負の感情がある時、出現した。あれはまるで怨念にでも憑りつかれているようだったが、加虐的な勝行はそれと違う。
怒った時。興奮した時。キスが止まらなくなる時。
――思えば勝行は元々、キレたらとんでもない方向に暴走する男だった。
そんな自分が嫌いなのだろう。勝行はしゅんと項垂れ、慣れない手つきで甲斐甲斐しく世話をしてくれる。
痛くて朝ごはんが作れないと愚痴れば、「寝てていいよ」と言って片岡にコーヒーとパンを買いに行かせた。そして当の本人は散々噛みついて傷つけた光の首に、消毒や絆創膏を貼りつけていた。
「はあ……どうして俺はこんなことばかり……」
「ブラックモードの勝行はすんげー楽しそうだけどな。極悪人って感じ」
「う……め、面目ない……」
過去の話を蒸し返すたび、勝行は「ああああもう俺は最低な人間だ」と頭を抱えて布団に潜り込む。これはいい復讐の機会だと思い、光はブラックに出会った時ヤラれたことをあれこれ文句をつけて報告してやった。
尿道プラグを乱暴に扱いてメスイキ地獄の回。手錠つけて乳を揉み吸いまくる乳頭開発の回。自ら乗っかってイラマチオさせてきた窒息失禁プレイ。――勝行はこれ以上聞きたくないのか、耳まで布団を被って「ごめんなさい」の一点張りだ。
「よかったな、俺がそういうのに耐性のある男で」
「むしろ光が凄すぎる。いや、もしかして最強? なんでそんなことされても俺の傍にいるんだ」
こんなことされたらドン引きして逃げるのが普通だろ。
勝行が布団の中でぼやいている言葉は、きっと過去の実体験なのだろう。友だち相手にこんなことをしでかしていては、逃げられて当然だ。普通の友人相手なら。
「こんなんで最強って言われたのは初めてだわ」
なんだか自分の性癖や悩みを隠している方がバカバカしい気がしてきて、光は苦笑した。
「まあ、慣れてるっていうのも変か」
「だから……だから嫌だったんだ。お前に酷い仕打ちをした男たちと同じ人間にはなりたくなかったのに……! ずっと怖かった。いつか暴走した俺が、あいつらと同じことをするに違いないって……っ」
勝行はベッドに突っ伏したまま、唸るような声で自分を詰っていた。手の甲に爪を立てギリギリと己を傷つけている。
他人どころか自分にも厳しい男だということを思い出し、光はその手を慌てて押さえつけた。ケイは散々勝行のことを罵っていたが、本当は取り返しのつかないことをしないよう、不器用に守っていてくれた気さえする。
「うう……ケツ痛え……」
ケイとの乱暴なセックスより、勝行の玩具虐めの方が後遺症がきつい気がする。翌朝になっても光は起き上がれず、布団の中で寝込んでいた。
元に戻った勝行は、やらかした事を多少は覚えているらしく「やりすぎた、ごめん」と平謝りしている。これはこれで光としても誤魔化したり隠さずに済んでいいのだが。
「お前のギャップは極端なんだよ」
「お……仰る通りで……」
「お前覚えてるかなあ。前にブラックモードのままでライブに出たことあるんだけど。すんげえ高飛車だったから、みんなビビッてたんだぜ。まあ……スカート履いてたし、コスプレだからネタだと思われて助かったけど」
「ハロウィンだろ。狼男で女装コスプレだったライブ……覚えてる。光の衣装がエロ過ぎて、みんなから厭らしい目線で見られてるのが腹立たしくて、つい……」
「じゃあそのあと、家で俺にお仕置きだっつって、バイブ突っ込んだままケーキ食わせたのも覚えてるか?」
「………………そんなことした?」
「したよ」
「ごめん……」
情けない声で謝る勝行の姿があまりに可愛くて、光は思わずぷっと笑ってしまった。昨夜の凶悪な姿はどこへやら、だ。
(多分、旅館でキレた時もそうだな。あれはケイじゃなかったんだ……くそぅ……なんか色々わかってきたぞ)
痛む腰をさすりながら、光は脳内情報を整理する。
ケイは勝行に負の感情がある時、出現した。あれはまるで怨念にでも憑りつかれているようだったが、加虐的な勝行はそれと違う。
怒った時。興奮した時。キスが止まらなくなる時。
――思えば勝行は元々、キレたらとんでもない方向に暴走する男だった。
そんな自分が嫌いなのだろう。勝行はしゅんと項垂れ、慣れない手つきで甲斐甲斐しく世話をしてくれる。
痛くて朝ごはんが作れないと愚痴れば、「寝てていいよ」と言って片岡にコーヒーとパンを買いに行かせた。そして当の本人は散々噛みついて傷つけた光の首に、消毒や絆創膏を貼りつけていた。
「はあ……どうして俺はこんなことばかり……」
「ブラックモードの勝行はすんげー楽しそうだけどな。極悪人って感じ」
「う……め、面目ない……」
過去の話を蒸し返すたび、勝行は「ああああもう俺は最低な人間だ」と頭を抱えて布団に潜り込む。これはいい復讐の機会だと思い、光はブラックに出会った時ヤラれたことをあれこれ文句をつけて報告してやった。
尿道プラグを乱暴に扱いてメスイキ地獄の回。手錠つけて乳を揉み吸いまくる乳頭開発の回。自ら乗っかってイラマチオさせてきた窒息失禁プレイ。――勝行はこれ以上聞きたくないのか、耳まで布団を被って「ごめんなさい」の一点張りだ。
「よかったな、俺がそういうのに耐性のある男で」
「むしろ光が凄すぎる。いや、もしかして最強? なんでそんなことされても俺の傍にいるんだ」
こんなことされたらドン引きして逃げるのが普通だろ。
勝行が布団の中でぼやいている言葉は、きっと過去の実体験なのだろう。友だち相手にこんなことをしでかしていては、逃げられて当然だ。普通の友人相手なら。
「こんなんで最強って言われたのは初めてだわ」
なんだか自分の性癖や悩みを隠している方がバカバカしい気がしてきて、光は苦笑した。
「まあ、慣れてるっていうのも変か」
「だから……だから嫌だったんだ。お前に酷い仕打ちをした男たちと同じ人間にはなりたくなかったのに……! ずっと怖かった。いつか暴走した俺が、あいつらと同じことをするに違いないって……っ」
勝行はベッドに突っ伏したまま、唸るような声で自分を詰っていた。手の甲に爪を立てギリギリと己を傷つけている。
他人どころか自分にも厳しい男だということを思い出し、光はその手を慌てて押さえつけた。ケイは散々勝行のことを罵っていたが、本当は取り返しのつかないことをしないよう、不器用に守っていてくれた気さえする。
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