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五冊目 恋愛相談には危険がいっぱい!? ~えっちな先生いかがですか
……②
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早くも保の場所を特定したという勝行に「どうやって調べてるんだ?」と尋ねてみた。
「万が一のことを考えて相羽家の護身用キーホルダーを渡してあるんだ。そこにGPS機能がついていてね――」と意味の分からないことを告げられ、光は盛大な「?」マークを掲げて首を傾げる。
「GPSって?」
「大体の現在位置が特定できる装置だよ。お前にもちゃんとついてる」
「えっ!? どこに」
全く身に覚えのない情報に驚き、思わず身体をきょろきょろしていると、勝行は悪だくみしてそうな顔を綻ばせた。
「さてどこでしょう。今日は三つ……いや四つついてるかな」
「な、なんだよ今日はって……つぅかそんなにいっぱい、いつの間に!」
「一日の大半を寝て過ごしてるお前には、知らない世界が沢山あると思うよ」
怯える光に嘲笑を浮かべる勝行は、そんなことより……と目の前の重要案件に話を戻した。
「行き先が病院ってのは間違いないようだ」
「マジか……?」
「ああ、ここだ。片岡さん、ロータリーで降ろしてください」
そこは光が普段通っている都内の総合病院だった。
片岡の運転する車から降り、勝行と共に正面の外来窓口から乗り込んだ光は、その目に映る人数の多さと建物の広さに絶望した。ここからどうやって保を探せというのか。
だが勝行は迷わず総合受付へと向かう。そこには女性スタッフが数人、笑顔で待ち構えていた。
「すみません。お尋ねしたいのですが……紫っぽい毛染めをしていて、二十代後半くらいの女性をお見掛けしませんでしたか。ちょうど貴女と同じくらい、すごく美人な方を探してるんです」
「まあ……」
「無理ですかね……こんな曖昧な情報だけでは……僕の大事な身内なのですが、ここに来たっきり連絡が取れず……」
「しょ、少々お待ちください!」
「ありがとうございます」
物腰柔らかいイケメン王子に美人などと言われてすっかり骨抜きにされた受付嬢が、必死になって保の特徴や氏名を伺い、調べ物を始める。熟練すぎるその懐柔っぷりに呆れた光は、空いている席にどさっと座り込んだ。
勝行のとんでもない探偵ぶりにはついていけない。それどころか――。
(なんだよ。相変わらず女にだったら誰彼構わず甘ったるい顔しやがって)
ああやって嘘の笑顔で人を誑し込んで情報を聞き出したり、都合のいいように動かす。それが勝行の特技であり、意地悪な性格の一つでもある。自分もあの笑顔に何度騙されてきたか。――わかっているはずの事なのだが、どうにも面白くなかった。
(俺のこと好きって言うくせに……それもほんとは嘘だったりして……?)
ふいに襲う後ろめたい思考に支配されたくなくて、光はガシガシと金髪頭を掻きむしった。
その時、ふいに頭ごとがっしり捕まれ、光の首は他人の手で強引に曲がる。
「いてっ」
「光じゃない、こんなとこで何してるの、練習はどうした。また喘息の発作でも出た?」
「んあ……あー!? タモツじゃねえか、てめえこそなんで病院にいるんだよ!」
光の頭を強引に上向きにした男は、ベンチの背もたれ側から「声でかいよ」と光のおでこを撫で打った。ラフなグラフィックシャツの襟もとが大胆に空いていて、光の視線からはまっ平らな胸が見えた。毛先をグラデーションのような紫に染め、変装のつもりかフチなし眼鏡をかけて、長い髪を結わえず下ろしている。それは二人が探していた、置鮎保その人だった。
「なんでって説明すると大変めんどくさいんだけど」
「てめえのせいで勝行がポンコツになったから俺はしょうがなく! てめえを探しにここに来たんだよ!」
「わかったから静かにしなさい。かっちゃんもいるの?」
事情を話すのも面倒になった光は、受付で女の子を誑かしながら保の情報を聞き出している勝行を指さした。
保は呆れたような笑顔を零してくすくす笑う。
その後ろにもう一人、ガタイのいい男がいることには、この時の光は全く気づいていなかった。
早くも保の場所を特定したという勝行に「どうやって調べてるんだ?」と尋ねてみた。
「万が一のことを考えて相羽家の護身用キーホルダーを渡してあるんだ。そこにGPS機能がついていてね――」と意味の分からないことを告げられ、光は盛大な「?」マークを掲げて首を傾げる。
「GPSって?」
「大体の現在位置が特定できる装置だよ。お前にもちゃんとついてる」
「えっ!? どこに」
全く身に覚えのない情報に驚き、思わず身体をきょろきょろしていると、勝行は悪だくみしてそうな顔を綻ばせた。
「さてどこでしょう。今日は三つ……いや四つついてるかな」
「な、なんだよ今日はって……つぅかそんなにいっぱい、いつの間に!」
「一日の大半を寝て過ごしてるお前には、知らない世界が沢山あると思うよ」
怯える光に嘲笑を浮かべる勝行は、そんなことより……と目の前の重要案件に話を戻した。
「行き先が病院ってのは間違いないようだ」
「マジか……?」
「ああ、ここだ。片岡さん、ロータリーで降ろしてください」
そこは光が普段通っている都内の総合病院だった。
片岡の運転する車から降り、勝行と共に正面の外来窓口から乗り込んだ光は、その目に映る人数の多さと建物の広さに絶望した。ここからどうやって保を探せというのか。
だが勝行は迷わず総合受付へと向かう。そこには女性スタッフが数人、笑顔で待ち構えていた。
「すみません。お尋ねしたいのですが……紫っぽい毛染めをしていて、二十代後半くらいの女性をお見掛けしませんでしたか。ちょうど貴女と同じくらい、すごく美人な方を探してるんです」
「まあ……」
「無理ですかね……こんな曖昧な情報だけでは……僕の大事な身内なのですが、ここに来たっきり連絡が取れず……」
「しょ、少々お待ちください!」
「ありがとうございます」
物腰柔らかいイケメン王子に美人などと言われてすっかり骨抜きにされた受付嬢が、必死になって保の特徴や氏名を伺い、調べ物を始める。熟練すぎるその懐柔っぷりに呆れた光は、空いている席にどさっと座り込んだ。
勝行のとんでもない探偵ぶりにはついていけない。それどころか――。
(なんだよ。相変わらず女にだったら誰彼構わず甘ったるい顔しやがって)
ああやって嘘の笑顔で人を誑し込んで情報を聞き出したり、都合のいいように動かす。それが勝行の特技であり、意地悪な性格の一つでもある。自分もあの笑顔に何度騙されてきたか。――わかっているはずの事なのだが、どうにも面白くなかった。
(俺のこと好きって言うくせに……それもほんとは嘘だったりして……?)
ふいに襲う後ろめたい思考に支配されたくなくて、光はガシガシと金髪頭を掻きむしった。
その時、ふいに頭ごとがっしり捕まれ、光の首は他人の手で強引に曲がる。
「いてっ」
「光じゃない、こんなとこで何してるの、練習はどうした。また喘息の発作でも出た?」
「んあ……あー!? タモツじゃねえか、てめえこそなんで病院にいるんだよ!」
光の頭を強引に上向きにした男は、ベンチの背もたれ側から「声でかいよ」と光のおでこを撫で打った。ラフなグラフィックシャツの襟もとが大胆に空いていて、光の視線からはまっ平らな胸が見えた。毛先をグラデーションのような紫に染め、変装のつもりかフチなし眼鏡をかけて、長い髪を結わえず下ろしている。それは二人が探していた、置鮎保その人だった。
「なんでって説明すると大変めんどくさいんだけど」
「てめえのせいで勝行がポンコツになったから俺はしょうがなく! てめえを探しにここに来たんだよ!」
「わかったから静かにしなさい。かっちゃんもいるの?」
事情を話すのも面倒になった光は、受付で女の子を誑かしながら保の情報を聞き出している勝行を指さした。
保は呆れたような笑顔を零してくすくす笑う。
その後ろにもう一人、ガタイのいい男がいることには、この時の光は全く気づいていなかった。
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