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四冊目 りんごあめと白雪王子 ~絶対恋愛関係にならない二人の最後の夏休み
プロローグ……③ アルバムCM
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渋谷の交差点を見下ろす大型ビジョン。そこに初めて映し出されたビジュアルを、足を止めて見入る人間がちらほらといる。
可愛さの残るあどけない表情の少年が、誘うような仕草でこちらを見つめながら、アカペラで甘い歌声を響かせる。時差でその伴奏が流れ始めた途端、ロックテイストのベースギターに合わせてシンセサイザーの軽やかなメロディが踊るように走り出した。
空中で弾ける楽し気なサビパートが終わるや否や、しっとりバラードのピアノ曲にかわり、空を眺める二人の少年のシルエットが、手を絡め合いながら離れていく。
あっという間に印象が変わるCMを見つめていた何人かの通行人が、スマホを取り出した。
【WINGSWEB】の文字と共に映し出されるのは、眼力の強い綺麗な顔立ちの美少年。気だるそうな表情の中、スローモーションで開いた口元からちらりと見える舌が、ねっとりと動いて妖艶な色気を漂わせる。最初に映し出された少年とはまた違う、あやうい雰囲気に、雑踏の中から小さなどよめきが湧き出した。
パーツばかりのアップで、容姿の全容は全く明かされない。
それはまるで新鋭アイドルのような――モデルのような――
けれどそれは、ロックバンドのファーストフルアルバムの発売日を予告するテロップで終わりを告げる。
「あれは誰?」
瞬く間に人の手によって情報拡散されていくそのCMの動画が、大型ビジョンで流れたのは、盛夏の三日間のみだった。
渋谷の交差点を見下ろす大型ビジョン。そこに初めて映し出されたビジュアルを、足を止めて見入る人間がちらほらといる。
可愛さの残るあどけない表情の少年が、誘うような仕草でこちらを見つめながら、アカペラで甘い歌声を響かせる。時差でその伴奏が流れ始めた途端、ロックテイストのベースギターに合わせてシンセサイザーの軽やかなメロディが踊るように走り出した。
空中で弾ける楽し気なサビパートが終わるや否や、しっとりバラードのピアノ曲にかわり、空を眺める二人の少年のシルエットが、手を絡め合いながら離れていく。
あっという間に印象が変わるCMを見つめていた何人かの通行人が、スマホを取り出した。
【WINGSWEB】の文字と共に映し出されるのは、眼力の強い綺麗な顔立ちの美少年。気だるそうな表情の中、スローモーションで開いた口元からちらりと見える舌が、ねっとりと動いて妖艶な色気を漂わせる。最初に映し出された少年とはまた違う、あやうい雰囲気に、雑踏の中から小さなどよめきが湧き出した。
パーツばかりのアップで、容姿の全容は全く明かされない。
それはまるで新鋭アイドルのような――モデルのような――
けれどそれは、ロックバンドのファーストフルアルバムの発売日を予告するテロップで終わりを告げる。
「あれは誰?」
瞬く間に人の手によって情報拡散されていくそのCMの動画が、大型ビジョンで流れたのは、盛夏の三日間のみだった。
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