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一冊目 キス魔はどっち!? ~キスしないと眠れない?男の話
……④
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翌朝。
欠伸しながら制服のシャツに袖を通した光は、自分の腕の赤い痣に気づいて、おや、と首をかしげた。
「勝行、俺の身体になんか変な痣が」
「ほ、ほんとだね」
若干うろたえながらも、勝行は光の身体を見分し、一緒に首を傾げた。
「ダニにでも食われたんじゃないかな」
「ダニ?」
「腕以外にも、背中とかおなかとか、あちこちあるよ」
「マジか」
「お前の布団を一度クリーニングに出そう。片岡さんに頼んでくる」
「じゃあ俺、今日はどこで寝ればいいんだ?」
「俺のベッド、貸してあげるよ」
どうせ今宵は夜通し編曲作業をするから、自分は部屋で寝る気がない。そう告げると、光はじゃあそうする、とあっさり納得した。
勝行は内心ほっとしながら、自分の護衛を務めるSPの片岡を探した。室内にいない彼は今、マンションの外玄関で警護の任務についているようだ。
「梅雨の季節はいやな虫が増えるから困るね」
「ああ……そうだな」
(はあああ、光がバカ素直で助かった――!)
痣の正体などこれっぽっちも疑わない彼にごめん、と胸中で詫びつつ、勝行は制服のネクタイを締めて外に出る。
雨上がりの眩しい朝日が、裸眼に直撃して少し痛かった。
光のそれは、衣替えした半袖カッターシャツから丸見えだった。
学校で赤い痣を堂々見せびらかしながら歩く光をみて、通りすがりの何人かはぎょっと振り返り二度見する。
(は、恥ずかしすぎる……)
と思いつつも、どうにかいたずらがバレないよう会話を取り繕うのに必死な勝行は、「ダニとかほんと困ったな。布団新しいのに買い替えてもいいよ」などとわざとらしく提案しながら隣を歩いた。
「勿体ねえ、いらねーよ。どうせクリーニング終わったら、布団フカフカになってかえってくんだろ?」
洗濯後をちょっと楽しみにしているのか、光の機嫌は悪くない。
「特急便でも数日かかるっぽいんだけど……」
「お前のベッドで一緒に寝るから平気だし」
声のトーンを下げずに堂々と答える光のセリフだけをきいて、また何人かが振り返った。
火のない所に煙は立たぬというけれど、あらぬ誤解が校内にバラまかれそうである。
勝行は苦笑しながら、わざと大きめの声で答えておいた。
「うんそうだね、しばらく不便だけど、ご自由にどうぞ。おれはリビングで寝るよ」
「え、そうなのか? 別に俺は一緒に添い寝でも――ンガァッ!?」
「あ、ごめんね。蚊が飛んでたから」
爽やかな笑顔のまま、勝行の本気ビンタが間髪入れず後頭部にぶっ飛んできた。まともに食らった光は、うっすら涙目になりながら頭をさすり、
「……ホントかよ」
と唇を尖らせた。
翌朝。
欠伸しながら制服のシャツに袖を通した光は、自分の腕の赤い痣に気づいて、おや、と首をかしげた。
「勝行、俺の身体になんか変な痣が」
「ほ、ほんとだね」
若干うろたえながらも、勝行は光の身体を見分し、一緒に首を傾げた。
「ダニにでも食われたんじゃないかな」
「ダニ?」
「腕以外にも、背中とかおなかとか、あちこちあるよ」
「マジか」
「お前の布団を一度クリーニングに出そう。片岡さんに頼んでくる」
「じゃあ俺、今日はどこで寝ればいいんだ?」
「俺のベッド、貸してあげるよ」
どうせ今宵は夜通し編曲作業をするから、自分は部屋で寝る気がない。そう告げると、光はじゃあそうする、とあっさり納得した。
勝行は内心ほっとしながら、自分の護衛を務めるSPの片岡を探した。室内にいない彼は今、マンションの外玄関で警護の任務についているようだ。
「梅雨の季節はいやな虫が増えるから困るね」
「ああ……そうだな」
(はあああ、光がバカ素直で助かった――!)
痣の正体などこれっぽっちも疑わない彼にごめん、と胸中で詫びつつ、勝行は制服のネクタイを締めて外に出る。
雨上がりの眩しい朝日が、裸眼に直撃して少し痛かった。
光のそれは、衣替えした半袖カッターシャツから丸見えだった。
学校で赤い痣を堂々見せびらかしながら歩く光をみて、通りすがりの何人かはぎょっと振り返り二度見する。
(は、恥ずかしすぎる……)
と思いつつも、どうにかいたずらがバレないよう会話を取り繕うのに必死な勝行は、「ダニとかほんと困ったな。布団新しいのに買い替えてもいいよ」などとわざとらしく提案しながら隣を歩いた。
「勿体ねえ、いらねーよ。どうせクリーニング終わったら、布団フカフカになってかえってくんだろ?」
洗濯後をちょっと楽しみにしているのか、光の機嫌は悪くない。
「特急便でも数日かかるっぽいんだけど……」
「お前のベッドで一緒に寝るから平気だし」
声のトーンを下げずに堂々と答える光のセリフだけをきいて、また何人かが振り返った。
火のない所に煙は立たぬというけれど、あらぬ誤解が校内にバラまかれそうである。
勝行は苦笑しながら、わざと大きめの声で答えておいた。
「うんそうだね、しばらく不便だけど、ご自由にどうぞ。おれはリビングで寝るよ」
「え、そうなのか? 別に俺は一緒に添い寝でも――ンガァッ!?」
「あ、ごめんね。蚊が飛んでたから」
爽やかな笑顔のまま、勝行の本気ビンタが間髪入れず後頭部にぶっ飛んできた。まともに食らった光は、うっすら涙目になりながら頭をさすり、
「……ホントかよ」
と唇を尖らせた。
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