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4章 惆悵と本懐

6話 

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入った村は村というよりは街に近かった。ただ門のところで入門税がなかったところを見るとやはり村なのだろう。
栄えており、屋台も多く出ていた。
数十キロ離れているとはいえ城に比較的近いのも理由の一つかもしれない。

「まずは宿を探そう。夜まで休んで、夜中に出発する」

「うん」

あまり目だたないように心がけているが少し周りが気になりちらちらと周囲をみてしまう。自分たちのように外から来たものたちもいるようでここでは外からくる人たちはそこまで珍しくないようだ。

近くで売り物をしていた人に宿を聞いて向かう。お金はアスセーナが用意してくれたので問題はない。ここまで準備してくれたのだから絶対に捕まえるわけにはいかない。

ついた宿はそこまで大きくはないがそこそこ綺麗な宿だった。この村には幾つか宿があって一番いい宿がここらしい。一番と言っても平民にとってのだ。貴族や王族が泊まるほど立派なものでない。

「食事付き、一泊だ。一部屋でいい」

「悪いが今はシングルの部屋しか空いてなくてね」

「それで構わない。風呂はあるか?」

「あぁ、別料金かかるがいいかい?」

「あぁ」

「風呂は予約制でね。今日のとこは入ってないから食事の後にでも入ってくれ。2階の奥の右にあるから」

「わかった」

よくわからないが泊まれるようで少しホッとして鍵をもらったロイドについて行った。

「少し物資を調達してくる。風呂はこのつきあたりのところにある。できれば手伝いたいが、、、いや、お腹空いた時は一階に降りれば用意してくれるはずだ。この宿からはでないでくれ」

「う、うん」

二人の時でもこの役を続けるのかと少しドキッとする。今までこんなふうに話したことなどないから余計にだ。自分に話しかけるような人は2種類だった。王子として敬って話しかけると見せかけてフランの地位だけしか見ていない人と、王子という身分をなくした自分を嘲笑い罵ってくる人。こんなふうに親しそうな会話はあまりないのだ。自分と対等に話せるのは家族や同じ王族ぐらいなのだから。身分の違いがありこんなふうに話すことに、色々な本を読んでいて身分違いの友情や恋愛話も少し読んでいたから本当にこんなことがあるのか不思議に思っていたのだ。アリアに聞いた時はあるかもしれないと言っていたが、物語に入っているようで少し緊張する。

とりあえず、汗をいっぱいかいてしまったしお風呂にでも入ろう。そのあとは、ご飯はロイドと一緒に食べようかいつ戻って来るかはわからないけど待っていよう。

サッと体の汚れを落としさっぱりしたあととりあえず部屋で待っていた。待っていたがベットに腰掛けていたはずがいつの間にか眠っていたようで物音がして目が覚めた。

「ん、ロイ?」

「起こしてしまったか?」

「ごめん、待って、たんだけど、、、」

「下で食事をもらってきた。食べてないだろう?」

「、、、うん。ありがとう」

美味しそうな匂いに釣られてお腹がすいてくる。

「馬を買ってきた。今日の深夜に宿を出る。それまで体を休めよう」

「うん」

食事についていたホットミルクを飲み終えると早速ベットで休むように言われた。

「ロイは?」

「私は、お風呂をかえた後に休む、先に休んでてくれ」

「うん、、、」

さきほどいっぱい寝たばかりのはずなのに、再度眠くなってしまう。ホットミルクで眠くなるなんて子供みたいだと少し恥ずかしいが眠気には抗えずそのまま意識を落とした。

 ◾️ 

 ◾️

 ◾️

すやすやと無垢な表情で眠る少年はまさしく天使のようだ。最初は悪い噂しか聞かない王子という認識しかなかった。でも初めて会った時は正直言ってなんと表せればいいのかわからなかった。噂で聞く王子ではなく、本当に王族の人間なのかと疑ってしまうほどに彼から漂う雰囲気は不思議なものだった。まるで死刑をまつ犯罪者のようなそんな雰囲気を感じたのだ。

でも、また次に会ったときはそんな雰囲気はなくとても綺麗な少年となっていた。少し影はあるがそれでも少しずつ明るくなっていっているのがわかった。

おそらく、彼の周りにいる人たちの影響だろう。
噂は当てにならないが国民全員の認識だったのは王族の中で第三王子だけが家族と不仲であるということだったがそれが解消され少しずつ彼の周りに味方が増えていったのだろう。

今回、彼の護衛を任された時の陛下や皇太子殿下もとても心配しているようだった。それなのにこんな始末だ。友の皮をかぶっていたとしてもこんな無様を晒すなんてフラン様を任せていただいたというのに不甲斐ない。必ず無傷で彼を国に戻さなければいけない。もう、ためらったりしない、どんな人間が現れたとて、油断も躊躇いもしない。

この無垢で美しい何かを背負っているだろう少年をどうにか救えるように、、、。

「、、、この旅で一番鍛えられるのは忍耐力だな、、、」

陛下や皇太子殿下に性に淡白だと思われ期待されてしまった以上、心頭滅却して耐えなければ、、、。これまでは敵地だったからなんとか意識を落として睡眠をとっていたが、今は宿で二人、宿でだ。まさかこんな少年に欲を覚えるようなことがあるとは、、、、好みではあるが、、、。

これからの旅で一番心配なのは自分自身の忍耐力になるだろう。








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