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一章 過去と今
プロローグ
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今にも消えてしまいそうな蝋燭の僅かな光しか通さない暗い、薄汚れた牢獄に身も心もボロボロになった青年がいた。
いったいアレから何年経ったんだろうかと拷問のないわずかな休息に、無駄な思考が浮かび上がる。最初こそ覚えていたがもうそんなこと考える余裕がなくて気にしていなかった。毎日来ていた人たちがここ最近は数日に一回ぐらいの頻度になっていた。
何度も折られてしまった手足は治癒魔法で無理やり治されたせいで変な向きへ向き繋がってしまった。そのため自分で体を動かすこともできない。髪の毛は真っ白に変わり、爪も剥がされすぎて生えて来なくなった。目も片方抉られ、残って居る片方の目もほとんど見えていない。この世に魔法というものが存在しなければ確実に狂って死んでもおかしくないだろうに彼はまだ生きていた。
記憶もだんだんと薄れていきたまに自分が誰なのか、なぜここにいるのか忘れてしまうことがある。でも忘れると呪いのようになぜここにいるのかと今までされてきたことが脳裏に流れた。それが拷問の一つだと知ったのは随分後だった。
ぼーっといつものようにただただ時が過ぎるのを待っていれば誰かが近づく気配を感じる。随分前は誰かが近づく気配がしただけで体が震え上がっていたがもうそんな感情すら湧かなくなってしまった。
あぁ、今日はどんな拷問をされるのだろうかと思案していると音もなく扉が開いた。音がなく扉が開く時は決まって精神を中心とした拷問が多くなる。
「、、、」
入ってきたのは想像した通りの人だ。彼は拷問する多くいる人間のうちの1人。
いつもは汚れてもいいように安っぽい服を着ていたが今日は少しだけ綺麗な服を着ていた。
「、、、今日、お前の死刑が決まった」
かすかにしか聞き取れなくなった耳にまるで天使の囁きのような言葉がかけられる。
『死刑』それは彼が心の底から願っていたことだった。明日は明日はと拷問でなく死刑が来ることを望み、打ち砕かれてきた。そこに反応を示しても、どうせ嘘だろう。ごくたまに甘い言葉を囁き、そしてすぐに絶望に落とす。初めされたときは絶望のあまり自害しかけたほどだ。すぐに治癒されてしまったが。
鎖を解かれ歩けない俺を男2人で両脇に抱えながら運びだす。地下深くにある拷問場所から上に上がっていく感覚と、上に上がってくにつれて聞こえてくる音に今日は何かが違うんだと少し前の彼なら気づき希望を見出したかもしれない。だが彼にはもうそんなことも感じるほどの気力はなかった。また絶望することがわかっているからだ。
久しぶりに肌に感じる熱に彼はわずかにも外にでたことは察することができた。先ほどから聞こえていた声が鮮明になって、音として聞こえにくくなっている鼓膜の中へと入ってくる。その声の中に自分の名や立場があり、自分はそんな名前だったと思い出すのだった。
外に出て彼が向かうのは処刑台、彼の血の繋がった家族や国民の大半がいるそんな中に置かれた処刑場に彼は向かっていた。彼の処刑を今か今かと待ち遠しくしているものたちは彼がきたとわかった瞬間に声を張り上げようとしたがそれは音として発せられることはなかった。騒がしかった空気が、一瞬のうちに凍った。
彼を見たものは怒りよりもまず恐怖が身を支配した。
彼の容姿が変わりすぎていて歪すぎて、あれが同じ人間の姿なのかと恐ろしくなってしまったのだ。恨みがあるからこそ死んでほしい、だがそんな恨みよりも哀れと思う心が大きくなってしまい何も言えなくなってしまうのだ。
「こ、これより、罪人アレリア国第三王子フラン・ルイス・ディ・アレリアの処刑を始める」
そんな処刑人からの言葉に国民は我に帰ったように処刑されるものの顔を改めて見るが考えていたであろ罵倒の一言すら浮かぶことはなかった。
後にこの処刑が最も悲惨で最も静かな処刑であり、最も受刑者を哀れに思わせた刑だったと語られることになった。
処刑された王子フランの死顔は言葉では言い表せれないほど何も感じられない無の表情だった。
そんな処刑され魂となったフランは天界へと召された。死したものは多少の差はあれど、基本的に善悪関係なく死後は転生するのを待つのがその世界のルールだった。だがそんなフランを神は許さなかった。理由はただ一つ神の愛子である子供達を傷つけてしまったからだ。
神は許せなかった、だからと言って消滅させることもできないのだ。理に背けば神は全てを統べる創造神により消されてしまう。だからこそ神は彼に機会を与えることにしたのだ。世界を救うための挑戦者として、世界を正す回帰者として、今度こそ愛子達を傷つないという機会を、過去の贖罪のため、そして今度愛子達を傷つければ魂ごと消滅させると彼と魂の契約を結ばせ彼を過去へと戻した。
誰もが耐えられるはずのないほどの拷問を受けた忌わしい記憶を持って・・・
いったいアレから何年経ったんだろうかと拷問のないわずかな休息に、無駄な思考が浮かび上がる。最初こそ覚えていたがもうそんなこと考える余裕がなくて気にしていなかった。毎日来ていた人たちがここ最近は数日に一回ぐらいの頻度になっていた。
何度も折られてしまった手足は治癒魔法で無理やり治されたせいで変な向きへ向き繋がってしまった。そのため自分で体を動かすこともできない。髪の毛は真っ白に変わり、爪も剥がされすぎて生えて来なくなった。目も片方抉られ、残って居る片方の目もほとんど見えていない。この世に魔法というものが存在しなければ確実に狂って死んでもおかしくないだろうに彼はまだ生きていた。
記憶もだんだんと薄れていきたまに自分が誰なのか、なぜここにいるのか忘れてしまうことがある。でも忘れると呪いのようになぜここにいるのかと今までされてきたことが脳裏に流れた。それが拷問の一つだと知ったのは随分後だった。
ぼーっといつものようにただただ時が過ぎるのを待っていれば誰かが近づく気配を感じる。随分前は誰かが近づく気配がしただけで体が震え上がっていたがもうそんな感情すら湧かなくなってしまった。
あぁ、今日はどんな拷問をされるのだろうかと思案していると音もなく扉が開いた。音がなく扉が開く時は決まって精神を中心とした拷問が多くなる。
「、、、」
入ってきたのは想像した通りの人だ。彼は拷問する多くいる人間のうちの1人。
いつもは汚れてもいいように安っぽい服を着ていたが今日は少しだけ綺麗な服を着ていた。
「、、、今日、お前の死刑が決まった」
かすかにしか聞き取れなくなった耳にまるで天使の囁きのような言葉がかけられる。
『死刑』それは彼が心の底から願っていたことだった。明日は明日はと拷問でなく死刑が来ることを望み、打ち砕かれてきた。そこに反応を示しても、どうせ嘘だろう。ごくたまに甘い言葉を囁き、そしてすぐに絶望に落とす。初めされたときは絶望のあまり自害しかけたほどだ。すぐに治癒されてしまったが。
鎖を解かれ歩けない俺を男2人で両脇に抱えながら運びだす。地下深くにある拷問場所から上に上がっていく感覚と、上に上がってくにつれて聞こえてくる音に今日は何かが違うんだと少し前の彼なら気づき希望を見出したかもしれない。だが彼にはもうそんなことも感じるほどの気力はなかった。また絶望することがわかっているからだ。
久しぶりに肌に感じる熱に彼はわずかにも外にでたことは察することができた。先ほどから聞こえていた声が鮮明になって、音として聞こえにくくなっている鼓膜の中へと入ってくる。その声の中に自分の名や立場があり、自分はそんな名前だったと思い出すのだった。
外に出て彼が向かうのは処刑台、彼の血の繋がった家族や国民の大半がいるそんな中に置かれた処刑場に彼は向かっていた。彼の処刑を今か今かと待ち遠しくしているものたちは彼がきたとわかった瞬間に声を張り上げようとしたがそれは音として発せられることはなかった。騒がしかった空気が、一瞬のうちに凍った。
彼を見たものは怒りよりもまず恐怖が身を支配した。
彼の容姿が変わりすぎていて歪すぎて、あれが同じ人間の姿なのかと恐ろしくなってしまったのだ。恨みがあるからこそ死んでほしい、だがそんな恨みよりも哀れと思う心が大きくなってしまい何も言えなくなってしまうのだ。
「こ、これより、罪人アレリア国第三王子フラン・ルイス・ディ・アレリアの処刑を始める」
そんな処刑人からの言葉に国民は我に帰ったように処刑されるものの顔を改めて見るが考えていたであろ罵倒の一言すら浮かぶことはなかった。
後にこの処刑が最も悲惨で最も静かな処刑であり、最も受刑者を哀れに思わせた刑だったと語られることになった。
処刑された王子フランの死顔は言葉では言い表せれないほど何も感じられない無の表情だった。
そんな処刑され魂となったフランは天界へと召された。死したものは多少の差はあれど、基本的に善悪関係なく死後は転生するのを待つのがその世界のルールだった。だがそんなフランを神は許さなかった。理由はただ一つ神の愛子である子供達を傷つけてしまったからだ。
神は許せなかった、だからと言って消滅させることもできないのだ。理に背けば神は全てを統べる創造神により消されてしまう。だからこそ神は彼に機会を与えることにしたのだ。世界を救うための挑戦者として、世界を正す回帰者として、今度こそ愛子達を傷つないという機会を、過去の贖罪のため、そして今度愛子達を傷つければ魂ごと消滅させると彼と魂の契約を結ばせ彼を過去へと戻した。
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