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番外編
15. 《タンジー殿下・オレガノ殿下のその後》+フェル
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※ フェルが成人を迎えた頃の話なのでまだ子供は生まれてません。
今日はタンジー殿下の定期健診の為、僕は王宮に足を運んでいた。
10歳になる前、僕をタンジー殿下の専属医とする約束をしてから早5年…タンジー殿下は僕が成人するまで成長を見守り、やっと成人を迎えた僕を主治医とした。
しかし、僕は10歳から婚約し、タジェット兄様やカラマス君、サックルさんと共に暮らしていたので主治医になった今も王宮には住まず、こうやって定期的に足を運ぶ形をとっている。
流石にタンジー殿下の体調の悪い時は王宮の部屋に泊まり込み、付きっ切りの看病になるが、タンジー殿下はあまり僕を縛り付けるようなことはせず寛大な措置をとってくれていた。
「タンジー殿下、最近の体調は如何ですか?」
「そうだねぇ…前に比べたら大分良くなったと思うよ。これもフェルのお陰だね。」
「いえ…そんな…僕は出来る限りをしているだけなので…。それに本当はもっと早く殿下の病状を良くしたいのですが、僕の知識では徐々にしか出来ないことが歯痒くて申し訳ないです…。
(そうなんだよねぇ…いくら医学的知識を入れても現代の医療には到底追い付けてない…僕が医学部とか目指してたら良かったけど只の男子高校生だったしね…。)」
「そんな謙遜しなくても。フェルは十分やってくれているよ、この国でフェルほど光魔法の上級者はいない。そんな人に診察してもらってる私は幸せ者だよ。」
そう言ってタンジー殿下は微笑む。
僕はそれに苦笑いで返しながら内心落ち込んでいた。
そのまま僕は殿下に夕食を誘われ、お言葉に甘えて夕食を共にしている。そこには年の離れたオレガノ殿下も同席しており、久しぶりの再会に花を咲かせていた。
「オレガノ殿下、学業は如何ですか?」
オレガノ殿下は今年で12歳、僕と3歳も歳が違うのだが身長は既に僕を抜かし、さらに今は魔術学校でその才能を発揮していた。しかし、それでも尚、未だに僕のマジックに感動する純粋な一面も持っている。
「うーん…相変わらずかな…学年のテストは簡単過ぎるし、変に発揮しすぎると先輩にいい顔されないし…只でさえ殿下ってだけで遠巻きに見られてるのにさ。」と愚痴を零している。
僕はそれにフフッと笑うと「殿下も大変ですね。」と答える。
「それより、フェルの学院時代は大変じゃなかったのか?だって2つの能力持ちだろう?」
「いえ…私は能力を隠してましたから。水魔法の能力者として学院には通ってましたし、能力以上に身体能力の無さが目立って殆ど埋もれてましたよ。ただ、侯爵家とタジェット兄様の弟ということで目立ってましたけど。」
「(…いや、その容姿じゃ目立ってたと思うけど…。)
そうなんだ…僕は皆に合わせてるからちょっと物足りないかなぁ…一回でいいから思いっきり魔力を使ってみたいと思うけど今は難しいし…。」
「…それなら私が防御壁を張るのでその中でなら思いっきり出来ますよ?なさいますか?」
「えっ!?いいの!?やってみたい!是非お願いするよ!」とオレガノ殿下はウキウキとはしゃぐ。
「タンジー殿下、宜しいですか…?」と僕が窺うと
「うん、いいよ。でもオレガノ、必ず防御壁内で行うって約束してね?」とオレガノ殿下に約束を取り付けていた。
数日後、タジェット兄様が休みの日を利用して再び王宮を訪れる。
行きすがら僕はタジェット兄様とこんな話をしていた。
「フェル…相手はオレガノ殿下なんだよね…?ある程度、手加減した方がいいかな。」
「うーん…そうだね…でもオレガノ殿下は本気でやりたいって言ってたし、変に手加減したら怒るんじゃないかな?」
「まぁ…そうだね…程々、本気を出すことにするよ。それよりフェル…私の貴重な休みをオレガノ殿下に費やすんだから、それなりにご褒美ちょうだいね?」
「えっ…?」
「だって、フェルとのデートを邪魔されたんだよ?それくらいしてもらわないと割に合わない!」と兄様は拗ねている。
「えぇー…そうなの?…じゃあ今夜は兄様の言う事、なんでも聞くから…ね?」と答えるとそれに気を良くした兄様は「オレガノ殿下のこと任せて!」と気合いを入れていた。
「フェルー!待ってたよ!」とオレガノ殿下とタンジー殿下が僕達を出迎えてくれる。
僕は挨拶をそこそこに王宮の広い庭の一部を借り、そこに防御壁を張った。
「はい、これで大丈夫です。タジェット兄様がお相手をしますので全力でお願いします。万が一、何かあっても私が治療しますのでご安心下さい。」
「タジェット様、宜しくお願い致します!」
「こちらこそ、宜しくお願い致します。」
「では、参ります!」
そう気合いを入れたオレガノ殿下は早速、水魔法を使って初級魔法を繰り出す。タジェット兄様は火なのでどちらかといえばオレガノ殿下の方が有利だが、火力が強いと水を蒸発させることも出来るので一概には言えない。
兄様はオレガノ殿下の魔法を受けたが、片手でガードするとその水を消滅させる。
「よし!次はこれだ!」
そう構えたオレガノ殿下は中級魔法を繰り出す。
しかし、兄様はそれを素早く弾き飛ばすとオレガノ殿下に近付いた。事前に兄様には攻撃魔法を禁止していたので、きっと接近戦だろう。
兄様は殿下の実力を測るように拳を繰り出し、殿下はそれを防御しながら隙を探しているようだった。
僕とタンジー殿下はそれをハラハラしながら見、拳を握り締める。
暫くすると兄様が殿下から距離を取った。
「殿下、全力でどうぞ。」
「では、行きます!」
殿下はその言葉と共に上級魔法を生成する。
兄様はニヤッと笑いながら、その攻撃をマトモに受けた。爆風と共に一瞬兄様の姿が消え、その衝撃を物語る。
僕達が兄様の姿を確認する頃には、兄様は其処には居らず、オレガノ殿下の後ろで殿下の肩に手を置いていた。
僕とタンジー殿下は何が起こったのか分からず放心していると兄様が「オレガノ殿下、後ろがガラ空きですよ。」と笑顔で告げる。
オレガノ殿下は「はぁ~…。」と溜息を吐くと「参りました。」と言って座り込んだ。
僕はハッとして「殿下!大丈夫ですか!?」と近付くと「大丈夫、ただ魔力切れだよ。」と兄様が答える。
僕は兄様を驚いた顔で見つめ「兄様、さっき何が起こったの?」と聞いた。
兄様曰く先程、上級魔法を繰り出したことで既に殿下の魔力は底を尽き、新たに攻撃することは出来なかったそうだ。そういう意味では殿下の希望は叶ったかもしれない。
そして、殿下の上級魔法を受けた兄様は再び防御を行なった後、殿下の後ろに回り込み、肩を叩いて勝負の終わりを告げたということだ。
「タジェット様、お付き合い頂きましてありがとうございました。また機会があれば次回もよろしくお願い致します。」
「ええ、構いませんよ。フェル次第ですが…。」と兄様は僕をニコニコしながら見つめてきたが僕は冷や汗をかく羽目となった。
今日はタンジー殿下の定期健診の為、僕は王宮に足を運んでいた。
10歳になる前、僕をタンジー殿下の専属医とする約束をしてから早5年…タンジー殿下は僕が成人するまで成長を見守り、やっと成人を迎えた僕を主治医とした。
しかし、僕は10歳から婚約し、タジェット兄様やカラマス君、サックルさんと共に暮らしていたので主治医になった今も王宮には住まず、こうやって定期的に足を運ぶ形をとっている。
流石にタンジー殿下の体調の悪い時は王宮の部屋に泊まり込み、付きっ切りの看病になるが、タンジー殿下はあまり僕を縛り付けるようなことはせず寛大な措置をとってくれていた。
「タンジー殿下、最近の体調は如何ですか?」
「そうだねぇ…前に比べたら大分良くなったと思うよ。これもフェルのお陰だね。」
「いえ…そんな…僕は出来る限りをしているだけなので…。それに本当はもっと早く殿下の病状を良くしたいのですが、僕の知識では徐々にしか出来ないことが歯痒くて申し訳ないです…。
(そうなんだよねぇ…いくら医学的知識を入れても現代の医療には到底追い付けてない…僕が医学部とか目指してたら良かったけど只の男子高校生だったしね…。)」
「そんな謙遜しなくても。フェルは十分やってくれているよ、この国でフェルほど光魔法の上級者はいない。そんな人に診察してもらってる私は幸せ者だよ。」
そう言ってタンジー殿下は微笑む。
僕はそれに苦笑いで返しながら内心落ち込んでいた。
そのまま僕は殿下に夕食を誘われ、お言葉に甘えて夕食を共にしている。そこには年の離れたオレガノ殿下も同席しており、久しぶりの再会に花を咲かせていた。
「オレガノ殿下、学業は如何ですか?」
オレガノ殿下は今年で12歳、僕と3歳も歳が違うのだが身長は既に僕を抜かし、さらに今は魔術学校でその才能を発揮していた。しかし、それでも尚、未だに僕のマジックに感動する純粋な一面も持っている。
「うーん…相変わらずかな…学年のテストは簡単過ぎるし、変に発揮しすぎると先輩にいい顔されないし…只でさえ殿下ってだけで遠巻きに見られてるのにさ。」と愚痴を零している。
僕はそれにフフッと笑うと「殿下も大変ですね。」と答える。
「それより、フェルの学院時代は大変じゃなかったのか?だって2つの能力持ちだろう?」
「いえ…私は能力を隠してましたから。水魔法の能力者として学院には通ってましたし、能力以上に身体能力の無さが目立って殆ど埋もれてましたよ。ただ、侯爵家とタジェット兄様の弟ということで目立ってましたけど。」
「(…いや、その容姿じゃ目立ってたと思うけど…。)
そうなんだ…僕は皆に合わせてるからちょっと物足りないかなぁ…一回でいいから思いっきり魔力を使ってみたいと思うけど今は難しいし…。」
「…それなら私が防御壁を張るのでその中でなら思いっきり出来ますよ?なさいますか?」
「えっ!?いいの!?やってみたい!是非お願いするよ!」とオレガノ殿下はウキウキとはしゃぐ。
「タンジー殿下、宜しいですか…?」と僕が窺うと
「うん、いいよ。でもオレガノ、必ず防御壁内で行うって約束してね?」とオレガノ殿下に約束を取り付けていた。
数日後、タジェット兄様が休みの日を利用して再び王宮を訪れる。
行きすがら僕はタジェット兄様とこんな話をしていた。
「フェル…相手はオレガノ殿下なんだよね…?ある程度、手加減した方がいいかな。」
「うーん…そうだね…でもオレガノ殿下は本気でやりたいって言ってたし、変に手加減したら怒るんじゃないかな?」
「まぁ…そうだね…程々、本気を出すことにするよ。それよりフェル…私の貴重な休みをオレガノ殿下に費やすんだから、それなりにご褒美ちょうだいね?」
「えっ…?」
「だって、フェルとのデートを邪魔されたんだよ?それくらいしてもらわないと割に合わない!」と兄様は拗ねている。
「えぇー…そうなの?…じゃあ今夜は兄様の言う事、なんでも聞くから…ね?」と答えるとそれに気を良くした兄様は「オレガノ殿下のこと任せて!」と気合いを入れていた。
「フェルー!待ってたよ!」とオレガノ殿下とタンジー殿下が僕達を出迎えてくれる。
僕は挨拶をそこそこに王宮の広い庭の一部を借り、そこに防御壁を張った。
「はい、これで大丈夫です。タジェット兄様がお相手をしますので全力でお願いします。万が一、何かあっても私が治療しますのでご安心下さい。」
「タジェット様、宜しくお願い致します!」
「こちらこそ、宜しくお願い致します。」
「では、参ります!」
そう気合いを入れたオレガノ殿下は早速、水魔法を使って初級魔法を繰り出す。タジェット兄様は火なのでどちらかといえばオレガノ殿下の方が有利だが、火力が強いと水を蒸発させることも出来るので一概には言えない。
兄様はオレガノ殿下の魔法を受けたが、片手でガードするとその水を消滅させる。
「よし!次はこれだ!」
そう構えたオレガノ殿下は中級魔法を繰り出す。
しかし、兄様はそれを素早く弾き飛ばすとオレガノ殿下に近付いた。事前に兄様には攻撃魔法を禁止していたので、きっと接近戦だろう。
兄様は殿下の実力を測るように拳を繰り出し、殿下はそれを防御しながら隙を探しているようだった。
僕とタンジー殿下はそれをハラハラしながら見、拳を握り締める。
暫くすると兄様が殿下から距離を取った。
「殿下、全力でどうぞ。」
「では、行きます!」
殿下はその言葉と共に上級魔法を生成する。
兄様はニヤッと笑いながら、その攻撃をマトモに受けた。爆風と共に一瞬兄様の姿が消え、その衝撃を物語る。
僕達が兄様の姿を確認する頃には、兄様は其処には居らず、オレガノ殿下の後ろで殿下の肩に手を置いていた。
僕とタンジー殿下は何が起こったのか分からず放心していると兄様が「オレガノ殿下、後ろがガラ空きですよ。」と笑顔で告げる。
オレガノ殿下は「はぁ~…。」と溜息を吐くと「参りました。」と言って座り込んだ。
僕はハッとして「殿下!大丈夫ですか!?」と近付くと「大丈夫、ただ魔力切れだよ。」と兄様が答える。
僕は兄様を驚いた顔で見つめ「兄様、さっき何が起こったの?」と聞いた。
兄様曰く先程、上級魔法を繰り出したことで既に殿下の魔力は底を尽き、新たに攻撃することは出来なかったそうだ。そういう意味では殿下の希望は叶ったかもしれない。
そして、殿下の上級魔法を受けた兄様は再び防御を行なった後、殿下の後ろに回り込み、肩を叩いて勝負の終わりを告げたということだ。
「タジェット様、お付き合い頂きましてありがとうございました。また機会があれば次回もよろしくお願い致します。」
「ええ、構いませんよ。フェル次第ですが…。」と兄様は僕をニコニコしながら見つめてきたが僕は冷や汗をかく羽目となった。
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