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第3章
177. 本番
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出来上がった髪型を見てみると腰まで伸びた銀髪を緩く上げ、高い位置でのポニーテール、毛先はパーマをあてたようにウェーブがかかりテッペンの方は編み込みのようなものが施されている。それに大きな花の飾りがついたコームが差し込まれ、細かい飾りは動く度に揺れるようになっている。
「敢えて首筋を出したのですが、やはりフェンネル様の白い肌にこの噛み跡は目立ちますね…。」
とエリーがぼやく。
僕は苦笑いになりながら「それでもいいよ。」と笑った。
そして次はドレスとメイク。
僕は男なのでドレスという言い方はおかしいかもしれないが、ロザリーナ姉様の時に着ていたような中性的な衣装に着替えさせられる。辛うじてパンツなものの、殆ど丈の長いスカートのせいでパンツが見えない。歩くと若干、裾が見えるくらいだ。
エメラルドグリーンの衣装に旦那様達がくれたアクセサリーを身につけ、エリーにナチュラルメイクをしてもらう。精神年齢はかなり高くはなったが、まだ身体は10歳…声変わりもまだな僕はこの中性的な衣装を着ても殆ど違和感なく着こなしてしまった。
自分で神様に注文した結果、これから一生男らしくなることはないと分かっている為、この衣装でも文句は言わない。
エリーと衣装とメイクの最終チェックをしていると部屋の扉がノックされた。
コンコンッ
「フェル、準備は出来たかい?カラマスとサックルさんを連れて迎えに来たよ。」とタジェット兄様に声を掛けられる。
それに「はーい。」と答えるとエリーが扉を開けてくれた。
「皆、お待たせしました。」
とニコッと笑うと扉の前で3人が固まっていた。
「天使…。」
「よっ…妖精がいる…。」
「っ…。」
上から順番にタジェット兄様、カラマス君、サックルさんだ。
皆の反応に僕の方が戸惑う。その時、エリーが「皆様、早く中へ。」と声をかけたことで皆、我に返りいそいそと中へ入ってきた。
しかし、心持ち距離がある。
「皆、もう少しコッチに来たら?」
と言ったが、タジェット兄様は「この距離で十分だよ。これ以上近付くと色々とヤバいから…ね?」と答える。カラマス君に至っては無言で手を出したり引いたり、よくわからない動きをしている。サックルさんは無言のまま自分の右手首を左手で握り込んで何かを必死に耐えているようだった。
「…そう?」
と僕はあまり気にしないようにし、これからのことを話すことにした。
「この後、父様と母様と合流して僕は先に父様、母様と会場に入るからその後、3人には後ろから来て欲しいんだけど、いいかな?」
「…うん、大丈夫。私もカラマスも経験はあるし、流れはだいたい分かっているよ。フェルの挨拶の後に私達が挨拶をすればいいんだよね?」
「うん、そう。婚約式でもあるから父様が紹介してくれるって。」
「うん、了解。それにしてもその衣装、とても似合ってるね、素敵だよ。」
「ありがとう、兄様。僕も凄く気に入ってるんだ…あの、その2人大丈夫かな…?」
僕は先程から不思議な動きをする2人に視線を向けた。カラマス君は僕と目が合うとカーッと顔を赤くし、目をそらす。サックルさんは僕と目が合うどころか、衣装の方に目線がいっている。
「…大丈夫だよ、フェル。後で私から言っておくから。それじゃあそろそろ行こうか、皆、早くフェルの姿が見たくてウズウズしてるよ。」
タジェット兄様はそう言うと僕の前に跪き手を差し伸べた。
「どうぞ、手をお取りくださいお姫様。」
兄様のその漫画のようなセリフは本物の王子様みたいでとてもカッコよかった。
僕は兄様の手を取ると「ありがとう、僕の大事な旦那様達。」と笑顔で寄り添った。
会場の裏口、舞台の扉の後ろに行くと既に父様、母様がスタンバイしていた。
「お待たせしました。」と声を掛ける。
父様と母様は僕の姿を見るなり「可愛い!」と褒めてくれた。それに「ありがとう。」と答え、少し打ち合わせをする。
30分程前から会場には招待された人々が入り歓談中らしい。そこに僕達が紹介されるというわけだ。
「フェル、緊張するとは思うが皆お前のことを心から祝福してくれる人達ばかりだ。せっかく沢山、練習してきたんた、その成果が出せるように頑張るんだぞ。」
そう父様に励まされ僕と父様、母様は先に会場入りする。扉の向こうでファンファーレの音が聞こえ、扉が開く。大きな拍手と共に僕達は人々の前に登場した。
「敢えて首筋を出したのですが、やはりフェンネル様の白い肌にこの噛み跡は目立ちますね…。」
とエリーがぼやく。
僕は苦笑いになりながら「それでもいいよ。」と笑った。
そして次はドレスとメイク。
僕は男なのでドレスという言い方はおかしいかもしれないが、ロザリーナ姉様の時に着ていたような中性的な衣装に着替えさせられる。辛うじてパンツなものの、殆ど丈の長いスカートのせいでパンツが見えない。歩くと若干、裾が見えるくらいだ。
エメラルドグリーンの衣装に旦那様達がくれたアクセサリーを身につけ、エリーにナチュラルメイクをしてもらう。精神年齢はかなり高くはなったが、まだ身体は10歳…声変わりもまだな僕はこの中性的な衣装を着ても殆ど違和感なく着こなしてしまった。
自分で神様に注文した結果、これから一生男らしくなることはないと分かっている為、この衣装でも文句は言わない。
エリーと衣装とメイクの最終チェックをしていると部屋の扉がノックされた。
コンコンッ
「フェル、準備は出来たかい?カラマスとサックルさんを連れて迎えに来たよ。」とタジェット兄様に声を掛けられる。
それに「はーい。」と答えるとエリーが扉を開けてくれた。
「皆、お待たせしました。」
とニコッと笑うと扉の前で3人が固まっていた。
「天使…。」
「よっ…妖精がいる…。」
「っ…。」
上から順番にタジェット兄様、カラマス君、サックルさんだ。
皆の反応に僕の方が戸惑う。その時、エリーが「皆様、早く中へ。」と声をかけたことで皆、我に返りいそいそと中へ入ってきた。
しかし、心持ち距離がある。
「皆、もう少しコッチに来たら?」
と言ったが、タジェット兄様は「この距離で十分だよ。これ以上近付くと色々とヤバいから…ね?」と答える。カラマス君に至っては無言で手を出したり引いたり、よくわからない動きをしている。サックルさんは無言のまま自分の右手首を左手で握り込んで何かを必死に耐えているようだった。
「…そう?」
と僕はあまり気にしないようにし、これからのことを話すことにした。
「この後、父様と母様と合流して僕は先に父様、母様と会場に入るからその後、3人には後ろから来て欲しいんだけど、いいかな?」
「…うん、大丈夫。私もカラマスも経験はあるし、流れはだいたい分かっているよ。フェルの挨拶の後に私達が挨拶をすればいいんだよね?」
「うん、そう。婚約式でもあるから父様が紹介してくれるって。」
「うん、了解。それにしてもその衣装、とても似合ってるね、素敵だよ。」
「ありがとう、兄様。僕も凄く気に入ってるんだ…あの、その2人大丈夫かな…?」
僕は先程から不思議な動きをする2人に視線を向けた。カラマス君は僕と目が合うとカーッと顔を赤くし、目をそらす。サックルさんは僕と目が合うどころか、衣装の方に目線がいっている。
「…大丈夫だよ、フェル。後で私から言っておくから。それじゃあそろそろ行こうか、皆、早くフェルの姿が見たくてウズウズしてるよ。」
タジェット兄様はそう言うと僕の前に跪き手を差し伸べた。
「どうぞ、手をお取りくださいお姫様。」
兄様のその漫画のようなセリフは本物の王子様みたいでとてもカッコよかった。
僕は兄様の手を取ると「ありがとう、僕の大事な旦那様達。」と笑顔で寄り添った。
会場の裏口、舞台の扉の後ろに行くと既に父様、母様がスタンバイしていた。
「お待たせしました。」と声を掛ける。
父様と母様は僕の姿を見るなり「可愛い!」と褒めてくれた。それに「ありがとう。」と答え、少し打ち合わせをする。
30分程前から会場には招待された人々が入り歓談中らしい。そこに僕達が紹介されるというわけだ。
「フェル、緊張するとは思うが皆お前のことを心から祝福してくれる人達ばかりだ。せっかく沢山、練習してきたんた、その成果が出せるように頑張るんだぞ。」
そう父様に励まされ僕と父様、母様は先に会場入りする。扉の向こうでファンファーレの音が聞こえ、扉が開く。大きな拍手と共に僕達は人々の前に登場した。
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