151 / 215
第3章
150. 選択
しおりを挟む
次の日、僕は1人でカラマス君の家へと向かった。すると門のところでカラマス君が立っている。近付いていくとカラマス君は僕に気付き「フェル!良かった、来てくれて!」と嬉しそうに告げた。
「そりゃあ約束したんだからちゃんと来るよ?」と笑うと「でも、昨日は不快な思いをさせて帰らせたから怒って来てくれないかと思ってたんだ。」と不安そうな顔をしたが直ぐに笑顔になった。
「ほら!僕はちゃんと来たんだし、カラマス君も僕に話があったんでしょう?なら何処か座って話そうよ。」
「ああ、そうだな。じゃあフェルが昨日、綺麗にしてくれた庭のベンチに行こう。俺達の思い出の場所だからな。」
ベンチの前に辿り着き、いざ座ろうとすると僕はいきなりカラマス君に抱き締められた。
ビックリして固まっていると「フェル…少しだけ抱き締めさせてくれ…。昨日は本当にすまない、不快な思いをさせて…。」と謝ってきた。
僕はカラマス君の背中をポンポン叩くと
「別に気にしてないよ、この世界じゃよくあることなんだし。」
と笑ってみせた。
それでもカラマス君は気になるのか僕の手を握りしめたままベンチに座る。そして真剣な目をしてこちらを見つめた。
「フェル…お前に誤解されたくないから先に言っておく。俺が愛してるのは今も昔もフェルだけだ。だから、俺のことを忘れないでくれ。」
「えっ?…忘れるってどういうこと?」
「いくら、お前と手紙のやり取りはしてるといえ、ここ何ヶ月かはほとんどやれていない状況だ。だから、フェルが…俺がお前のことを好きだということが忘れられそうで怖い…。
フェルのことだから昨日の状況から察してるとは思うが、実はまだ婚約解消出来ていないんだ。昨日の女性は俺の婚約者候補の1人でベリーと言う。最初、父様に用意された婚約者候補は5人もいたんだ。この2年間、時間をかけて円満に解決しようと思い4人は解消できた。でもあのベリーだけは首を縦に振らなくて…。アイツは俺と同じ公爵家の人間で親もそれなりに地位のある人間だ。だから本人も自分には同じような地位のある人物じゃないと婚約者として認めないという節がある。そこで候補に挙がったのが俺だ。」
カラマス君はそう切実に話してきた。
「そうだったんだ…。でも僕はカラマス君の気持ちを忘れてないから安心して。
僕、実はずっと悩んでたんだ、カラマス君の僕に対する気持ちは最初に優しくしたことへの錯覚なんじゃないかって。あの時は否定してくれたけど時間が経てば忘れるものなんじゃないかって。だから正直、この2年間でカラマス君は婚約者候補の誰かと結婚するんじゃないかって思ってた。」
「そんな…!」とカラマス君は悲痛な声を上げる。
「…うん、ゴメン。それは僕がカラマス君を信じてきれてなかったからだね。でもそう思ってたのは最初だけだよ。この2年間、忙しくしてる中で手紙をくれて愛の言葉をくれるカラマス君を僕はだんだん好きになった。またいつかカラマス君と会って話すことが出来たら僕の気持ちを伝えようって思ってた…けど…。」
そう伝えるとカラマス君は「フェル!」と感動したように抱き締めてきた。しかし、僕はその抱擁を素直に喜べない。何故なら今から彼に残酷なことを伝えるからだ。
僕はカラマス君の抱擁を少し離すと、覚悟を決めカラマス君を見つめた。
「カラマス君、僕は君に大事なことを伝えないといけない。実はこの間、僕はタジェット兄様と婚約したんだ。」
「…えっ?なっ…んで?」
「…今まで色んなことがあって兄様には沢山助けてもらった。それにずっと兄様には好きだと言われていたんだ。あることがあって僕も兄様のことが好きなんだと自覚してこの間、その告白を受け入れた。」
「えっ…でも…!今、俺のことが好きだって…!」
「うん…僕は兄様もカラマス君も好きなんだ。だから2人どちらかなんて選べない。僕はカラマス君の了承が貰えるなら"重婚"って形をとりたいんだ。」
「じゅう…こん。」
カラマス君は怒っているような悲しんでいるような複雑な表情をしている。
「重婚って知ってる…?一妻多夫のような形が取れる制度なんだ。僕は結局、兄様もカラマス君も選ぶことが出来なくてずるい選択をした。僕が偉そうに言える立場じゃないけど、カラマス君にはどうするか選んでほしい。」
カラマス君はその言葉にどうすればいいか分からず狼狽えているようだった。
「…そういえばそんな制度があると習ったことがある…。まさかフェルがその選択をするなんて…悪い…ちょっと考えさせてくれ。」
カラマス君はそう言うと頭を抱えてベンチに座った。
僕はその様子を静かに見つめ、その場を後にした。
「そりゃあ約束したんだからちゃんと来るよ?」と笑うと「でも、昨日は不快な思いをさせて帰らせたから怒って来てくれないかと思ってたんだ。」と不安そうな顔をしたが直ぐに笑顔になった。
「ほら!僕はちゃんと来たんだし、カラマス君も僕に話があったんでしょう?なら何処か座って話そうよ。」
「ああ、そうだな。じゃあフェルが昨日、綺麗にしてくれた庭のベンチに行こう。俺達の思い出の場所だからな。」
ベンチの前に辿り着き、いざ座ろうとすると僕はいきなりカラマス君に抱き締められた。
ビックリして固まっていると「フェル…少しだけ抱き締めさせてくれ…。昨日は本当にすまない、不快な思いをさせて…。」と謝ってきた。
僕はカラマス君の背中をポンポン叩くと
「別に気にしてないよ、この世界じゃよくあることなんだし。」
と笑ってみせた。
それでもカラマス君は気になるのか僕の手を握りしめたままベンチに座る。そして真剣な目をしてこちらを見つめた。
「フェル…お前に誤解されたくないから先に言っておく。俺が愛してるのは今も昔もフェルだけだ。だから、俺のことを忘れないでくれ。」
「えっ?…忘れるってどういうこと?」
「いくら、お前と手紙のやり取りはしてるといえ、ここ何ヶ月かはほとんどやれていない状況だ。だから、フェルが…俺がお前のことを好きだということが忘れられそうで怖い…。
フェルのことだから昨日の状況から察してるとは思うが、実はまだ婚約解消出来ていないんだ。昨日の女性は俺の婚約者候補の1人でベリーと言う。最初、父様に用意された婚約者候補は5人もいたんだ。この2年間、時間をかけて円満に解決しようと思い4人は解消できた。でもあのベリーだけは首を縦に振らなくて…。アイツは俺と同じ公爵家の人間で親もそれなりに地位のある人間だ。だから本人も自分には同じような地位のある人物じゃないと婚約者として認めないという節がある。そこで候補に挙がったのが俺だ。」
カラマス君はそう切実に話してきた。
「そうだったんだ…。でも僕はカラマス君の気持ちを忘れてないから安心して。
僕、実はずっと悩んでたんだ、カラマス君の僕に対する気持ちは最初に優しくしたことへの錯覚なんじゃないかって。あの時は否定してくれたけど時間が経てば忘れるものなんじゃないかって。だから正直、この2年間でカラマス君は婚約者候補の誰かと結婚するんじゃないかって思ってた。」
「そんな…!」とカラマス君は悲痛な声を上げる。
「…うん、ゴメン。それは僕がカラマス君を信じてきれてなかったからだね。でもそう思ってたのは最初だけだよ。この2年間、忙しくしてる中で手紙をくれて愛の言葉をくれるカラマス君を僕はだんだん好きになった。またいつかカラマス君と会って話すことが出来たら僕の気持ちを伝えようって思ってた…けど…。」
そう伝えるとカラマス君は「フェル!」と感動したように抱き締めてきた。しかし、僕はその抱擁を素直に喜べない。何故なら今から彼に残酷なことを伝えるからだ。
僕はカラマス君の抱擁を少し離すと、覚悟を決めカラマス君を見つめた。
「カラマス君、僕は君に大事なことを伝えないといけない。実はこの間、僕はタジェット兄様と婚約したんだ。」
「…えっ?なっ…んで?」
「…今まで色んなことがあって兄様には沢山助けてもらった。それにずっと兄様には好きだと言われていたんだ。あることがあって僕も兄様のことが好きなんだと自覚してこの間、その告白を受け入れた。」
「えっ…でも…!今、俺のことが好きだって…!」
「うん…僕は兄様もカラマス君も好きなんだ。だから2人どちらかなんて選べない。僕はカラマス君の了承が貰えるなら"重婚"って形をとりたいんだ。」
「じゅう…こん。」
カラマス君は怒っているような悲しんでいるような複雑な表情をしている。
「重婚って知ってる…?一妻多夫のような形が取れる制度なんだ。僕は結局、兄様もカラマス君も選ぶことが出来なくてずるい選択をした。僕が偉そうに言える立場じゃないけど、カラマス君にはどうするか選んでほしい。」
カラマス君はその言葉にどうすればいいか分からず狼狽えているようだった。
「…そういえばそんな制度があると習ったことがある…。まさかフェルがその選択をするなんて…悪い…ちょっと考えさせてくれ。」
カラマス君はそう言うと頭を抱えてベンチに座った。
僕はその様子を静かに見つめ、その場を後にした。
24
お気に入りに追加
4,582
あなたにおすすめの小説
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!
ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。
弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。
後にBLに発展します。
王道学園と、平凡と見せかけた非凡
壱稀
BL
定番的なBL王道学園で、日々平凡に過ごしていた哀留(非凡)。
そんなある日、ついにアンチ王道くんが現れて学園が崩壊の危機に。
風紀委員達と一緒に、なんやかんやと奮闘する哀留のドタバタコメディ。
基本総愛され一部嫌われです。王道の斜め上を爆走しながら、どう立ち向かうか?!
◆pixivでも投稿してます。
◆8月15日完結を載せてますが、その後も少しだけ番外編など掲載します。
顔出しナシのヤリ部屋待機してたらお父さんとマッチングされちゃったDCの話
ルシーアンナ
BL
01.
セフレや彼氏のいるビッチ受けショタがうっかり実の父親とセックスしてしまう話。
パパ×和樹(12)
02.
パパの単身赴任先で愛人していたDCが冬休みに会いに来たので3Pセックスする話。
和樹とリバショタとの挿入もあり。(和樹は受けのみ)
パパ×和樹(12)、パパ×龍之介(12)、龍之介×和樹
特殊な学園でペット扱いされてる男子高校生の話
みき
BL
BL R-18 特殊な学園でペット扱いされてる男子高校生が、無理矢理エロいことされちゃう話。
愛なし鬼畜→微甘 貞操帯 射精管理 無理矢理 SM 口淫 媚薬
※受けが可哀想でも平気な方向け。
高校生×高校生
※表紙は「キミの世界メーカー」よりお借りしました。
凪に顎クイされてる奏多イメージ
転移したのでその世界を楽しむ事にした
青い牡丹
BL
ある男が地球で死をとげる。
その男は神様にあい転移を勧められる。
その男は了承し異世界へ転移する事になる。
だが身体は5才児の身体になってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる