上 下
137 / 215
第3章

136. 作戦

しおりを挟む
「(何言ってるんだ、この人は!!!)
えっ…いや、それはちょっと…。」と断ると、

「えぇ~!やってくんねぇの?じゃあ護衛しない。」

「エェ!?
(ちょっと!ガルバさん!なんでこの人選んだの!?)」と睨むと慌てて目を逸らされた。

「(ガルバさんは僕が出来る範囲で受け入れろって言ってたけど、キスするのはやっぱ兄様に悪いし…バレたりしないにしてもなんか後ろめたい…。でもこれでベイローレルさんに護衛を辞められるほうがもっと困るから…もう!腹を括ろう!)」

僕はベイローレルさんの太い首に出来るだけ腕を回して「ベイ…。」と呼んでこちらを向かせた。そしてチュッと唇の横にキスをし「お願い。」と上目遣いに頼んだ。

するとベイローレルさんは自分で言ったにも関わらず顔を赤くすると「わかった、フェンネルがそこまで言うならやってやる。」と照れ出し、反対に僕は「(はぁ~…ここまで自分の顔を武器にしたのは兄様以来だよ…。)」と溜息を吐いた。







それからベイローレルさんと明日、また落ち合う約束を取り付け、僕達は別れた。

「(よし、これでギルドの登録も終わったし、護衛も頼めたからあとは作戦を立てようかな。と言っても、ほとんどそんなものないんだけどね…。とりあえず建物に入り込んで片っ端から部屋の中を物色するしか…いや、待てよ。もっといい方法があった!ちょっと無理やりな感じだけど、これなら確実に証拠の部屋に辿り着ける!明日、ベイローレルさんに相談してみよう!)」

僕はそう意気込むと、教会へ泊まらせてもらうお礼に沢山の食材とお菓子を買って帰った。



その日の晩、部屋にクミンが訪れた。

「ギルドの登録は上手くいったのか?」

「うん、大丈夫だったよ。それにギルドマスターからランクAの人を紹介してもらえたし。護衛も引き受けてくれるって。」

「そっか…。なぁ、俺らになんか手伝えることないか?」

「ん~…そうだなぁ…建物内に入るのが目的だから…特にこれと言ってないんだけど…んじゃあ明日の午後はお店をたたんで、教会に戻っておいて。何があるか分からないから危険なんだ。」

「…わかった。そんなことでいいなら他の子供達にも言っておくよ。午後は教会の中にいるように、って。」

「うん、ありがとう。」

僕がお礼を言うとクミンは照れくさそうにある物を渡してきた。

「何、これ?」

それは自分で言うのも恥ずかしいけど、あの女神様の姿が彫られたペンダントだった。

「お守りだ、持っとけ。」

「いや、でもクミンの大事な物なんじゃ…?」

「明日、また返してくれたらいいから。」

「あっ、でも…。」

と言いかけたところでクミンは足早に部屋を出て行ってしまった。

「(あぁ~…。でもせっかく貸してくれたんだし、大事に持っとこ。)」

僕は上着の内ポケットに大事にしまった。






次の日、早速僕は昨日考えた作戦をベイローレルさんに伝えることにした。

"こちらが土地を売りたいと交渉し応接室などに案内してもらう、それでどうにか今までの帳簿を見せてもらい証拠を探し出す"

ということだ。

簡単ではないのは分かっているが、コソコソ入るより確実性がある。なら、ベイローレルさんじゃなくても…と思わなくもないが仕方ない、頼んでから思い付いたんだから…。

その作戦を伝え終えた時のベイローレルさんの反応は「じゃあ俺じゃなくても感」がかなり出ていたが子供の僕じゃ出来ない交渉をしてもらうことも伝えた。

すると「まぁ変装したらどうにかなるか。」と納得してくれた。

「お願いします、僕はどうやっても子供にしか見えないので向こうも本気で取ってくれないと思います…。」

「そうだな…さすがに子供に交渉されても帳簿までは見せたりしないだろうし…。よし!それならちょっと俺が協力してやる!少し待っとけ!」

そう言うと席を立ち、部屋を出て行ってしまった。

それから5分程して戻ってくると「今、手の空いている他の冒険者を動かしてる。2時間ほど時間をくれ。」と言われた。

「…それはいいですけど、大丈夫なんですか?」

「ああ、俺が保証する。
それより空いた2時間、デートしようぜ。」

「エェ!?そんなことしてる場合じゃないじゃないですか。」

「いいんだよ、どうせ時間まで何も出来ないんだから。それに変装道具も買わなきゃだろ?」

「たしかに…。」

そう納得した僕はデートというのには納得出来ないが、ベイローレルさんと街へ変装道具を買いに出掛けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

サッカー少年の性教育

てつじん
BL
小学6年生のサッカー少年、蹴翔(シュート)くん。 コーチに体を悪戯されて、それを聞いたお父さんは身をもってシュートくんに性教育をしてあげちゃいます。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!

ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。 弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。 後にBLに発展します。

王道学園と、平凡と見せかけた非凡

壱稀
BL
定番的なBL王道学園で、日々平凡に過ごしていた哀留(非凡)。 そんなある日、ついにアンチ王道くんが現れて学園が崩壊の危機に。 風紀委員達と一緒に、なんやかんやと奮闘する哀留のドタバタコメディ。 基本総愛され一部嫌われです。王道の斜め上を爆走しながら、どう立ち向かうか?! ◆pixivでも投稿してます。 ◆8月15日完結を載せてますが、その後も少しだけ番外編など掲載します。

顔出しナシのヤリ部屋待機してたらお父さんとマッチングされちゃったDCの話

ルシーアンナ
BL
01.  セフレや彼氏のいるビッチ受けショタがうっかり実の父親とセックスしてしまう話。  パパ×和樹(12) 02.  パパの単身赴任先で愛人していたDCが冬休みに会いに来たので3Pセックスする話。  和樹とリバショタとの挿入もあり。(和樹は受けのみ)  パパ×和樹(12)、パパ×龍之介(12)、龍之介×和樹

転移したのでその世界を楽しむ事にした

青い牡丹
BL
ある男が地球で死をとげる。 その男は神様にあい転移を勧められる。 その男は了承し異世界へ転移する事になる。 だが身体は5才児の身体になってしまった。

【R18】狂存トライアングル

皐月うしこ
恋愛
【オチ無し逆ハーレム】×【常時複数プレイ】 転職した会社で上司から言い渡されたのは海外研修。ろくに英語も喋れないどころか、パスポートも持っていなかったのに、見知らぬ土地でひとり。なんとかひたむきに日々を過ごしていたら、彼氏が三人も出来ました。 (直接表現あり/エロだけもあればエロ無しもある/ハッピーエンド予定) ※ムーンライトノベルズも同時連載中

処理中です...