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第2章

120. 重婚

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それからエリーのおかげで帰りの馬車の中では少し心が軽くなった。

しかし、まだ日本人としての性分のせいか重婚にやや抵抗がある。

ただ、それをとっても自分が複数の人から好意を持たれて拒否出来るほどの強さもない。

「(生前からモテたことのない僕がこんな贅沢な選択肢に迫られるなんて…それに1人に絞ろうと努力したのにそれもしなくていいとか…。神様、ホント僕仕様に世界を変えてくれたんだね…。僕のこの優柔不断な性格をわかってたのかな…?僕…自分で言うのは変だけど前まではこんな優柔不断じゃなかったと思うんだよね、少なからず自分は腐男子ではあったけど人間としての感覚は外れてはなかったと思うし…。そりゃあイケメンに好かれて悪い気はしなかったと言えばしなかったけど、最初のカラマス君に対しても初恋がすぐ終わるのも可哀想だから、っていう同情からだし…。
…やっぱりBLが関係してるのかな?そういうのを見たいが為に転生させてもらったから自分を含めてそういう雰囲気になったら無下に出来なかったのも事実だ。そのせいで結果的に複数から好意を持たれてあたふたしちゃったんだけど…。
まぁ…とりあえず兄様に相談しよう…また言わなかったら凄いことになりそうだし…。)」

僕はそう思いながら馬車に揺られていた。








それから家に着き、兄様の部屋へと向かった。

あいにく兄様はまだ帰ってきておらずそのまま部屋に戻ろうかと思ったがまたすれ違いになってはややこしくなると思い、部屋に入ることにした。

「(部屋の鍵は閉まってるけど、兄様から合鍵を貰ったんだよね。「いつでも、入っていいよ。」って。早速使わせてもらおう。)」

と鍵を開けた。

ガチャと音を立てて扉が開くと兄様の爽やかな匂いが鼻いっぱいに広がる。

「(フフッ…兄様の匂いってなんか安心する…。)」

僕はそのままソファーに体育座りで腰掛け、兄様になんて説明するか考えていた。しかし、僕はいつの間にか考えながら膝に顔を埋め眠ってしまっていたようで気がつくと兄様のベッドに寝かされていた。

「(あれ…?ベッド…?兄様がしてくれたのかな…?)」

と思っていると自分の腰に回る腕に気が付いた。身をよじって後ろを確認すると案の定、兄様が僕を抱き締めて眠っている。

「(やっぱり…てか今何時…?夕食の時間には間に合わせないと…。)」

と兄様の方に身体を向けると僕は久しぶりに兄様の顔をマジマジと見つめた。

「(兄様…かっこいいなぁ…僕も最初からこんな顔に生まれたかった…そしたら日本じゃモテモテだったのに…。)

いいなぁ…。」

とポツリと呟く。

すると「何が?」と目を瞑ったまま返事をされて驚いた。

「兄様、起きてたの?」

と聞くと目がパチっと開き、

「うん、フェルがどんな反応を見せてくれるかなぁ?って思ってたとこ。
それにしても部屋に戻ってきてフェルがソファーで寝てたのはビックリしたよ。」

「あっ…ゴメンね。勝手に部屋に入って休んじゃって…。」

「ううん、いいんだよ。むしろ部屋に居てくれて嬉しかった。こんな可愛らしい天使みたいな子が部屋で待っててくれるなんて…そう思ったら次からは早く帰って来ないとね。」

と額にキスしてきた。

「(あっ…マズイ…このままだとダメな流れだ!)

あっ…あの兄様!大事な話があるんだけど!」

「ん?このままでもいいよ?」

「いや…このままは僕がダメだから…!」

「そう…?じゃあソファーに座ろうか。」

と兄様は僕を抱き上げ、膝に乗せたままソファーに腰掛けた。

「(ゔぅ…話し辛い…。)」

僕と兄様は対面で座っている。

兄様が僕の腰を離さないので僕と兄様の顔の距離はどう頑張っても15cm程だ。

「(この際、思いっきり抱き着いて顔を見られないように言っちゃおうかな。)」

僕はそう思い「フェル、話って何?」とニコニコ笑っている兄様に抱き着いた。僕の耳は兄様の胸の上にある。



僕はドキドキしながら兄様に質問をした。

「あのね…兄様…重婚って知ってる…?」

兄様の心臓がドクンッと鳴る。

「…じゅう…こん…?……ああ、知ってるよ。」

「それで………
僕がそれを選ぶって言ったらどうする…?」

そう言った瞬間、兄様の心臓がドクドクと早くなった。

僕は兄様を仰ぎ見ようと首を動かしたがギュッと抱き締められてそれは出来なかった。

「にっ…兄様…?」

と声をかけるも暫く返事がなく僕は兄様から反応があるまでジッとしていた。

時間にして5分も経っていないくらい、兄様が口を開いた。

「そうだね…私、個人的にはフェルには選んで欲しくない…でもフェルがそうしたいのなら私に止める権利はないよ。重婚は子供を産む側の人間に与えられた権利で夫になる立場の人間はそれに口出し出来ないように法律で決められている…私みたいに独占欲が強い人間は相手にそうなって欲しくないために必要以上に束縛したり監視するのかもしれないね…。」

と零した。
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