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第2章

98. ローザの帰還

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僕がお風呂から出ると、アニスはソファーに座り、バジルさんは近くに控えていた。

「おまたせ。」と僕が声を掛けると「いや、コッチに座ってくれ。」と促された。

「まず、ローザのことだが森で迷ったというのは考えにくい…。この森自体、悪さをするような動物はいないし、魔物も現れたことはない。それにローザは獣人だ、もし迷った場合でも動物達に道を教えてもらえるはず…。それにさっき、熊に合っただろう?あの熊は私の叔父上でサックルと言う。叔父上はこの森を縄張りにしているから滅多に知らない人を招き入れない。だからローザも縄張りを犯して入ってしまうと追い出されるはずだ。
いつもは襲おうとはせず脅かすだけだが、さっきは怪我をして気が高ぶっていたんだろう…。フェル、怖がらせてしまってすまない。」

アニスはそう言うと頭を下げてきた。

「いや、アニスは悪くないよ!だから謝らないで。元はと言えばあの罠が仕掛けられてることが悪いんだし!

あの…サックルさんのことを聞いても…大丈夫?」

僕は恐る恐る聞いた。

「ああ…とりあえず、バジル。ローザの行方を調べてくれ。その間にフェルに説明する。」

それにバジルさんは「畏まりました。」と言うと部屋を去って行った。







「叔父上のことだが…俺が昔、学院の自己紹介で言ったことを覚えているか?」

僕はコクリと頷いた。

「獣人は先先代の国王までは人権も爵位も人間と同じだった。しかし、先代の国王によって奴隷に落とされた。その時の国王は獣人を同じ人としてではなく、召使い、もしくは奴隷のようにしか思わなかったんだ。なんとか、現代の国王によって獣人の奴隷制度は無くなったが、それもこの20年程だ。あいにく俺はその奴隷時代を知らないが叔父上はそうではない。叔父上は事業を拡げ、これからって時に奴隷に落とされたらしい。叔父上は事業を潰されたり、奴隷にされたりということに怒っているというわけではなく、そうやって人間に振り回される行為に嫌悪しているそうだ。今はもう奴隷制度は無くなり、以前の様に暮らせるが叔父上は昔の様に獣人になって暮らすことを諦めている…。」

アニスはそう言うと複雑な表情となった。

「(そうなんだ…思ってたより複雑な状況なんだ…はぁ~…神様、色々弄りすぎだよ…。)

そうなんだ…叔父さんが早く前の様になってくれたらいいね…。」

僕はそう声をかけることしか出来なかった。



それから暫くするとバジルさんが慌てて部屋に入ってきた。

「失礼致します!ローザ様の行方が分かりました!」

僕達は2人で立ち上がり、バジルさんに駆け寄った。

「近くの街まで人を走らせ、聞き込みをさせた結果、ローザ様は農場の倉庫にいらっしゃいました。」

「「倉庫!?」」

「それは閉じ込められていたということですか!?」

僕が焦っていると、バジルさんは「いえ…。」と言葉を濁した。

僕とアニスは目を合わせバジルさんをジッと見るとこう続けた。

「ローザ様は倉庫の藁の上で寝ていました。事情を聞いた者によると待ち合わせ場所でフェンネル様を待っていたローザ様は隣を横切った藁を積んだ馬車に乗り込んだそうです。本人曰く、いい匂いがして思わず乗ってしまったと…。」




「(…えっ~~!)」





僕達は言葉も出ず、ただただ驚いていた。

「もう少ししたら、ローザ様を乗せた馬車が参ります。詳しくはご本人に伺って下さい。」

バジルさんはそう言うと静かに部屋から去った。






それから30分程すると、ローザが「心配かけてゴメンね~。」と部屋に入ってきた。

ローザに事情を聞くとバジルさんの説明通り馬車の中からいい匂いがしてそれに釣られて思わず馬車に乗り込んでしまったらしい…そして農夫に起こされ…いうわけだ。

僕達はその話を聞いて溜息を吐き「心配かけないでよ…。」と怒った。







その後は気を取り直して、お泊まり会をすることになった。

僕はお昼に食べようと思っていたサンドイッチを取り出し遅めの昼食を取った。

ローザは嬉々とサンドイッチを頬張りアニスも黙々と食べていた。多めに作ったのでバジルさんにも食べてもらうと、僕はサンドイッチを5切れ違う容器に移し玄関に置いておいた。もしかしたらアニスの叔父さん、サックルさんが食べてくれるかもしれないと思ったからだ。

「(あんまり期待は出来ないけど…。)」

と思ったが、せっかくなので置いてみた。

しかし、予想に反して夕方にお皿を覗いてみるとサンドイッチは無くなっており思わずフフッと笑ってしまった。

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