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第1章

82. 結婚式

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それから暫くして、ロザリーナ姉様とセイボリー様の結婚式が行われた。

セイボリー様のお屋敷で行われる為、正直、プレス様に会う可能性があることが気掛かりだった。

あの時、次にもう会うことはないだろうと思い、逃げるようにお屋敷を去ったのでまたこのお屋敷にいるのは居心地が悪い。

「(今日の主役は僕じゃないからプレス様に会うことはないかもしれないけど、挨拶とかはやっぱりしないといけないのかな…はぁ~…やだなぁ…。)」

僕はそう思いながら、エリーや母様の従者に着せ替え人形のように服を着せられる。

「エリー…僕もう疲れたよ…。僕が主役じゃないんだから、変じゃなければ何でもいいと思うんだけど…。」

「フェンネル様、いけません!本日はロザリーナ様の結婚式ではありますが、フェンネル様の出会いの場でもあるのです。勿論、お兄様方もです。ですから、それなりの格好をしなければいけません!いいですか?フェンネル様や他のお兄様方も侯爵家において婚約者がいないなんて前代未聞です。特にタジェット様なんて2~3人居てもおかしくないのです!フェンネル様もですよ!カラマス様の婚約が無くなり、更にラーチ様の婚約も保留にしているなんて勿体な…いや、どなたかと婚約していないと色んな方に言い寄られてしまいます…!特にフェンネル様は容姿が優れているのですから、自覚を持って下さい!」

といつもにも増して気合いの入ったエリーに注意された。

「(エリー…今、勿体無いって言ったよね…?心の声漏れてるよ…。)
そっか…たしかに婚約者がいれば変に言い寄ってくる人の牽制にはなるよね。でも僕まだ色んな人を見てみたいし、婚約とかじゃなくて恋愛をしてみたいんだけど…。」

「…そうだったんですね。それでは今後、声をかけてくる方と恋愛なさってみては如何ですか?」

僕はその言葉に驚き「えっ!?いいの?」と声を上げる。

「はい、フェンネル様は婚約者もいらっしゃいませんし、恋愛をしてはいけないということはありませんので。」

「(そうなの…!?それなら別に婚約に拘らなかったらよかった…!そっか…普通に考えたら別に好きな人作ってもいいんだよね!?なんか毎日、色んなことがありすぎて忘れてたよ…!それに皆すぐに"婚約"って言ってくるんだもん、てっきり婚約しないと恋愛出来ないと思ってた…!うわ~…色々と無駄にした~!)」

僕はガックリと項垂れた。

するとエリーが「フェンネル様!出来ましたよ!」と声を上げたので、僕は顔を上げる。

そして鏡に映った自分を見て驚いた。






「(えっ…?これ女の子じゃない…?)」

そこには銀髪を軽く結い上げた髪型に目の色と同じ緑の飾りを付け、薄っすらと化粧の施された僕がいた。慌てて服装を見ると、かろうじてパンツは履いているものの、その上からふんわりとした膝丈のノースリーブワンピースを着せられ腰紐で結ばれている。ワンピースの裾は花弁の様な形でシースルーのようになって何重か生地が重なっている。色はクリーム色で所々に金の刺繍とラインが入っていた。

「エッ…エリー…?これ女の子が着るやつじゃないの…?」

と僕は動揺しながら聞くと、

「いえ、これはフェンネル様用に特注で作らせたものです。私と奥様がデザインした力作です!」

と笑顔で言われた。

「え…でもなんか中性的じゃない…?僕もっとカッコいい服だと思ってたんだけど。」

「それも1つ考えましたが、やはりフェンネル様の良さを出すにはこれが1番!と奥様と相談して決めました。フェンネル様の容姿は可愛らしいのでカッコいい服装にすると逆に浮いてしまうかと思い、少し中性的ではありますがこの服装になりました。あとはこれに上着を羽織っていただいて完成です。他にアクセサリーなども考えましたが、それは流石にフェンネル様が嫌がるかと思い却下しました。」

「(…じゃあ、もうどうしようもないか…特注品だし、母様の意見が入ってたら今更、嫌だなんて言えないしね。それに生前の僕には似合わなくても今の僕の容姿にはピッタリだ!せっかくこんな優れた容姿に生まれてきたんだし、今日は楽しもうかな!)…そうなんだ。ちょっと残念だけど、せっかく作ってもらったし僕に似合ってるんだったらいいかな。」

と笑顔で答える。

「はい!とてもお似合いです。きっと良い方に声を掛けて頂けるはずです。それにフェンネル様も素敵な方がいらっしゃったらご自身で声を掛けるのですよ!いいですね!」

「うっ…うん。」

最後はエリーに凄まれる形で押し切られた。








それからエリーに上着を貰い、会場へと急ぐ。

先に他の皆は会場に行っているらしく、父様と母様は来てくれた方を出迎え、タジェット兄様とディル兄様は挨拶回りに行ったそうだ。

僕は受付を済ますと早速、会場内へ入る。

会場へ入るとまず目に飛び込んで来たのは吹き抜けの天井だ。天井には様々な絵画とシャンデリアがあり、とても高級感溢れる場所だった。

「(うわ~すご~い!きれ~い!キラキラしてる。このままここで舞踏会とかできそう~。)」

と僕は天井を見つめながら入り口近くで佇んでいたので、後ろから来た人にぶつかってしまった。

ドンッ

「あっ…申し訳ございません。」

振り返りながら謝ると「こちらこそ、失礼した。」と肩を支えられた。
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