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第1章

33. 約束

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「フェル、ゴメンね?本当はお互いの気持ちが通じ合ってからキスしようと思ったんだけど、我慢できなかった…。」

兄様はそう謝ってきたけれど僕の頭の中は「(キスの時、ただ息すればいいと思ってたけど、実際にやられると受け側って大変なんだな…!舌入れられるわ唾液も入ってくるわでそれどころじゃないし。)」

とそんなことを考えていた。

「…ううん、大丈夫。」

「フェルはこんなにも魅力的だからある程度は覚悟してたけど、こんなにも早く婚約の話が出るなんて…。婚約を申し込まれただけでも嫌なのにフェルの口から私以外の男が好きだと言われて頭に血が上ったんだ…でも、フェルもいけないんだよ…?こんな大事なことを黙ってたんだから…。」

兄様は僕を咎めるように言う。

「(いや、こうなるから黙ってたんですけどねー!これ確実ヤンデレのパターンじゃん!)
ごっ…ごめんなさい。」

僕は兄様が怖いので本心を隠して不本意だが謝った。

「フェルがわかってくれたらいいんだ。これからは私に内緒事はやめてね?フェルのこと怖がらせたくないんだ。」

と兄様はニッコリと笑う。

「(こっ怖い…。)
うん、わかった。」

「フェルはホントに良い子だね…でも、フェルが内緒にしてたこと、私はまだ怒ってるんだよ。だから罰としてこれからは毎日寝る前に私にキスすること。」

「(えっ…?)」

「そうすればフェルもキスに慣れるし、もっと気持ちよくなれるよ…?」

「えっ…なんで?
(展開早すぎない?)」

「だって、フェルはキスは嫌じゃないんだよね?だったら私もフェルとキスがしたいし、フェルも気持ちよくなれるし、一石二鳥じゃない?」

「(…いやいやいや!なんで自分の都合の良いように持ってっちゃってるの!?それに僕とキスがしたい、って言っちゃってるし!てか、兄様このまま僕にキスを慣れさせてそのまま身体の関係を持とうと企んでるな…!既成事実さえ作れば婚約は出来ても結婚は出来ないし。うー…どうしよう。僕としてはカラマス君の件は断るつもりだし、後々兄様と…っていうのは仮にいいとしてもなんか周りから固められるって嫌なんだよな~…。でもここで断る勇気も僕にはない…。だってカラマス君より兄様の方が好きなんだもん…!ハッキリ言うと顔が好みなんだよ~!僕が生前、男と付き合うなら、とか勝手に思ってたときの理想の男なんだよ~!あぁ~それに兄様、キス上手いんだよな~気持ち良くなっちゃうし…!はぁ…なんて僕は贅沢な悩みを持っているんだ!)」

僕は兄様の言葉から色んなことを考えてみたものの結局は自分の欲望に忠実な答えを告げる。

「うん…兄様とキスする。」







次の日、僕はエリーを連れてセイボリー家に向かった。その道中の馬車内で僕は昨日のことを考える。

「(あぁ~…昨日はやってしまった…。いつも温厚な兄様がブチギレるとあそこまで暴走するわけね、勉強になったな…。でも、そもそもは父様が悪いんだよ!なんで父様、兄様に言っちゃうかな!兄様が怒ることわかってるはずなのに!もう帰ったら怒ってやるんだから!てか、今日からまた兄様とキスしないといけないの…。あぁ~それが嫌じゃない僕はもう重症だ~…。前々からそうかなって思ってたけど僕、兄様のこと好きなのかな?それとも美形だからキスできちゃったとか…?うわ~それなら僕、最悪じゃん。美形なら誰でもOKとかビッチ予備軍じゃん…。でも普通7歳でこんなこと考える…?はぁ~もう兄様と婚約した方がいいのかな…?そしたら兄様にビクビクしながら過ごさなくてもよくなる。でもその分、BLウォッチング出来なくなるか…。兄様のことだから常に自分の側に置くか必要最低限以外、家から出してもらえないかもしれない。ヤンデレに好かれると良いこともあるけど厄介な事もあるもんだね。てか、そもそも兄弟で結婚できるものなの…?)」

僕が百面相をしているのを気付いたのか、エリーが

「フェンネル様?ご休憩なさいますか?」

と聞いてきた。

「あっ、ゴメンゴメン!なんでもないから気にしないで!ちょっと考え事。」

「…そうですか?」

そこでまた2人の会話は終わり。
僕はまた昨日のことも含め、今後のことを考えていた。







暫くすると馬車が止まる。セイボリー家に着いたようだ。

僕が馬車から降りる準備をしていると屋敷の中からカラマス君とアミリス義兄様が出てきた。

「フェル~!待ってたぞー!」

カラマス君はそう言いながらこちらに手を振っている。駆け足でこちらに近付いたかと思うと僕の手を取り、馬車から降ろしてくれた。

「疲れただろ?部屋を用意してあるからゆっくり休んでくれ。」

カラマス君は繋いだ手を離そうとはせず、そのままの状態で僕を屋敷に向かい入れた。

部屋の前まで着くと

「2つ隣の部屋に飲み物を用意させるから、少し休憩したら来てくれ。待ってるから。」

そカラマス君は僕をギュッと抱き締めると早々に部屋から出て行った。

ドアが閉まるのを確認し、僕はベッドに転がる。

「う~…お尻痛い…。やっぱりいくら乗っても馬車には慣れないよ。
(道も舗装されてても日本みたいにコンクリートじゃないから常にガタガタしてるし…。この当時の人達のお尻ってどうなってんの?はぁ~…早く車が発明されないかな…?ちょっとこのまま休憩しよ…。おやすみなさい…。)」

僕は目を瞑り、少しだけ仮眠を取ることにした。

しかし思いの外、身体は疲れていたらしく仮眠のつもりが本格的に眠ってしまった。
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