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第1章

11. 入学式

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さっきの出来事にショックを受けつつ、会場へと歩いているとザワザワと周りが騒がしくなった。なんだろうと顔を上げてみると周りの人達がこちらを見てコソコソと話している。

耳を澄ませて聞いてみると、

「ローランド侯爵家の方々だわ。」
「あの背の高い男性は、騎士団の第1部隊に配属されているらしい。」
「あの可愛らしい方が今年入学されるみたいだね。」

とそんな声が聞こえてきた。

「(えっ!?僕達のこと!?うわ~目立ってる…やっぱり最初からコソコソは無理だったんだ…。)」

と僕は今更ながら下を向いて顔を隠しながら会場へと急いだ。




やっと会場に着き、自分の席を探した。保護者は新入生の席と離れた後方に設けられていたので、両親と兄様とはここでお別れ。とりあえず会場までの道程で王道的な展開にはならなかったので良かったのかもしれない…遠巻きでは見られていたけど…。

やっと自分の席を見つけ座る。隣の席はまだ空いたままだったので隣の人が来るまで周りをキョロキョロ見渡した。

「(さっきのウサ耳の子がいる!でも席的に違うクラスっぽい…残念…。あっ!あそこには将来カッコよくなりそうなイケメンが…!あぁ~あの子可愛い~!)」

そう周りを見渡しているフェルの方が一番目立っていたのを本人は全く気がついていなかった。

しばらくすると「隣いいか?」と僕に話し掛ける人物が現れた。

その子を見た瞬間「(おぉ~!将来、有望だ~!)」と思ってしまう。

なんと隣の席の子は熊の獣人だった。僕より既に一回りは身体が大きく、身長も10cm以上は高いんじゃないかな、と思う程だった。

「どっ!どうぞっ!!(攻め要員!!)」

僕は驚き半分、嬉しさ半分でよく分からない表情で答えていた。

それを見た彼は「…宜しく。」と静かに座る。
それにどう答えるべきか一瞬悩んだが「こちらこそ!」と答えるのが精一杯だった。

「(うわ~!僕ミスったよね!?これから友好関係を築くには始めが肝心なのに…どっ…どうしよう…今からなんて声かけるべき!?こんな時、小説ではどうやってたっけ~!?こんなパターンなかったよ!いつも主人公は隣の人とすぐ仲良くなるか無視だったもん!!う~ん…無難に自己紹介しかないよね、よし!話し掛けるぞ~!」

そう思い隣をチラッと見ると彼はこちらをジッと見ていた。知らぬ間に見つめられていたらしく僕はビクッとなりながらも「あの、初めまして。僕、フェンネル・ローランドと言います。宜しくお願いします。」と伝える。

すると彼はしばらく僕を見つめた後「俺はアニス・グロブルスだ。悪い、ジッと見て。女かと思って確認してたんだ。名前を聞いて男だとわかったから安心した。」とフッと笑った。

「いや、いいよ。僕、自分が女顔だって自覚してるし。それに髪型もちょっと長めだしね。紛らわしくてゴメン。」

「いや、ローランドが謝る必要はないだろう。俺が見過ぎたせいなんだから。今更だが、俺はローランドより爵位は下だ。今からでも敬語で話した方がいいか?」

「ううん。同級生なんだし、気楽に話してくれて大丈夫だよ。僕も敬語使われるとか嫌だし。フェルって呼んでね。」

「そう言ってもらえると助かる。敬語は苦手なんだ。俺のことはアニスでいい。」

「うん、わかった。
(友達1人目ゲット~!それにまさかの獣人さん!!熊耳触りたい~!でも、耳に触るのは特別親しい人か恋人だけって小説では決まってるんだよね…。うーん…もう少し仲良くなってお願いしてみよう。)」

アニスと自己紹介していると周りの席もいつの間にか生徒で埋まっていた。そして音楽が流れ始め、入学式が始まる。学校長の挨拶や担当クラスの担任の紹介、この後の流れについて説明があり、入学式はつつがなく終わった。そのまま新入生は担任に連れられ、クラスへ移動する。保護者はそのまま会場で別の説明を受けるそうだ。

「では、1年Aクラスの方達は私について来て下さい。」

少し小柄な男性が僕達を先導してくれた。ついていくと僕達のクラスに到着する。席は名前順。順番に席に着くと先程の男性が教卓の前に立ち、自己紹介を始めた。

「皆さん、ご入学おめでとうございます。私は担任のメリッサ・マートルです。3年間宜しくお願い致します。入学したばかりで緊張もしていると思いますが、皆さんには最初に伝えておかなければならないことがあります。少し難しいことかもしれませんが、よく聞いて下さいね。この学院は皆さんの家柄など関係なくクラス分けが行われます。それは、まだこの世の中に爵位などに左右される場面があるからです。けれど、皆さんにはそんな偏見に囚われず、幅広く友人を作って欲しいと思います。今すぐ受け入れることが難しい人がいるのもわかっていますが、少しずつでもお互いに歩み寄れる関係になれるよう頑張りましょうね。」

クラスがシーンとなっている。もしかしたら何人かは該当する人がいるのかもしれない。

「…それでは、今から順に魔法の属性を測定しに行きましょう。」

そうマートル先生が言った時、クラスの扉がガラッと開いた。
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