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王様編
1. 真実を告げる日
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王様との約束から約70年あまり…クローブさんはその長い寿命に幕を下ろした。
クローブさんの最期は穏やかに、それでいて今後待ち受けている僕の未来を心配しているようだった。僕は最期まで彼に心配しないで、と伝え「天国でまた会おうね。」と笑顔で彼を看取った。
それからクローブさんのことが落ち着くまで1ヶ月。
僕は自分の状況について、子供達そして孫達に伝える事にした。この場に集まったのは総勢13人。僕とクローブさんの子供は全部で5人、シダーを除いた上2人が既に結婚し、孫も5人いる。
その中でも僕のことを1番心配していたのはやはり長男のシダーだ。シダーは年齢を重ねるにつれ、益々クローブさんに似ていき、僕のことを1番に大事にしてくれている。
次男のエレミは相変わらず子供っぽさが抜けないところはあるが、そこを含めて好きになってくれた包容力のある旦那さんと出会い、3人の子供をもうけた。
僕はいよいよ告げなければいけない真実に深呼吸すると集まってくれた皆を見渡す。自分がこの70年間で幸せな家庭を築けた事に感動しながら口を開いた。
「皆、今日はわざわざ集まってくれてありがとう。皆にはクローブさんのことが落ち着いてから話そうと思っていたことがある、心して聞いて欲しい。」
僕はおもむろに立ち上がると自分の息子達を順番に抱き締める。息子達は僕の緊張感を察してか、ふざける人は誰1人といなかった。
僕は既に泣きそうだった。いくら覚悟を決めたといえ、もうこの子達に会えないかもしれないと思うと涙が溢れてくる。その様子に孫達がざわつき、僕は急いで涙を拭うと、皆を見据えて改めて口を開いた。
まず僕という存在について。
僕がヒトであるというのは既に子供達には話していた為、日頃から皆に問われてきた僕が全く姿形が変わらない理由についてを述べる。
昔から子供達を始め、孫達からも聞かれていたその疑問を「…ヒトだからかな?」という理由で僕はずっと答えを濁していた。
しかし、今回は真実を告げる。
勿論、王様についてのアレコレはオブラートに包んで伝えたが、それによって王様の元へ行くことはハッキリと伝えた。
すると真っ先にシダーが「でも、たまになら母様には会えますよね!?」と叫ぶ。しかし、僕は死んでしまうかもしれない運命なら、これからは一生会えないということにした方がいいと、残酷な事実を告げる。
僕の答えに子供達は言葉を失い、孫達は「嫌だー。」「ばぁばに会いたいー!」という言葉が飛んだ。
少し落ち着いたところで僕はこう告げる。
心残りであった下2人の結婚式についてだ。
「ラベン、サラ。ごめんね、2人の結婚式に出たかったけど、王様との約束は守らないと…。」
と僕の困った様子に2人は動揺しながらも口を開く。
「…正直、まだ頭の中で整理しきれてないけど、どうしても行かなきゃダメなんだよね…?」とラベン。
それにコクッと頷くとサラが「嫌だよぉ…母様…何処にも行かないで…。」と泣き出した。サラは末っ子なだけあって1番の甘えただ。僕はサラを抱き締めると「泣かないで、サラ。サラが哀しむと僕まで哀しくなっちゃうから。」と告げる。
僕がサラの背中をポンポンとしているとシダーから「母様…どうしても行くおつもりですか?」と聞かれる。
シダーも僕にとっては心残りだ。
「…本当はこのまま皆と一緒にいたいけど…クローブさんの最期を看取ったら城に戻るように約束したんだ…。その約束は破れない。」
そう僕が静かに告げるとシダーは悔しそうにグッと手を握り締め「…分かりました。母様のそこまでの覚悟を俺たちがとやかく言うことは出来ません…母様、向こうへ行ってもお身体に気をつけて。それと…最後にお願いが…抱き締めても良いですか?」と頼んでくる。
僕は「勿論。」とサラを宥めると立ち上がった。
僕をギュッと抱き締めたシダーは
「母様…母様は俺の初恋でした。母様のような可愛くて綺麗な心の持ち主は他にはいません。俺はこれからもこの家を守っていきます、どうか心配しないで、俺はいつまでも貴方の帰りを待っています。」
と答える。
僕は「ありがとう。」と言いながら頰に口付けた。その後、息子達が次々と僕を抱き締め、それは孫達までに至った。
次の日になると前日に頼んでいた王家の馬車が家の前で止まる。僕は子供達に見送られながらその馬車に乗り込んだ。
すると、なんとそこには王様が悠々と座っていた。
クローブさんの最期は穏やかに、それでいて今後待ち受けている僕の未来を心配しているようだった。僕は最期まで彼に心配しないで、と伝え「天国でまた会おうね。」と笑顔で彼を看取った。
それからクローブさんのことが落ち着くまで1ヶ月。
僕は自分の状況について、子供達そして孫達に伝える事にした。この場に集まったのは総勢13人。僕とクローブさんの子供は全部で5人、シダーを除いた上2人が既に結婚し、孫も5人いる。
その中でも僕のことを1番心配していたのはやはり長男のシダーだ。シダーは年齢を重ねるにつれ、益々クローブさんに似ていき、僕のことを1番に大事にしてくれている。
次男のエレミは相変わらず子供っぽさが抜けないところはあるが、そこを含めて好きになってくれた包容力のある旦那さんと出会い、3人の子供をもうけた。
僕はいよいよ告げなければいけない真実に深呼吸すると集まってくれた皆を見渡す。自分がこの70年間で幸せな家庭を築けた事に感動しながら口を開いた。
「皆、今日はわざわざ集まってくれてありがとう。皆にはクローブさんのことが落ち着いてから話そうと思っていたことがある、心して聞いて欲しい。」
僕はおもむろに立ち上がると自分の息子達を順番に抱き締める。息子達は僕の緊張感を察してか、ふざける人は誰1人といなかった。
僕は既に泣きそうだった。いくら覚悟を決めたといえ、もうこの子達に会えないかもしれないと思うと涙が溢れてくる。その様子に孫達がざわつき、僕は急いで涙を拭うと、皆を見据えて改めて口を開いた。
まず僕という存在について。
僕がヒトであるというのは既に子供達には話していた為、日頃から皆に問われてきた僕が全く姿形が変わらない理由についてを述べる。
昔から子供達を始め、孫達からも聞かれていたその疑問を「…ヒトだからかな?」という理由で僕はずっと答えを濁していた。
しかし、今回は真実を告げる。
勿論、王様についてのアレコレはオブラートに包んで伝えたが、それによって王様の元へ行くことはハッキリと伝えた。
すると真っ先にシダーが「でも、たまになら母様には会えますよね!?」と叫ぶ。しかし、僕は死んでしまうかもしれない運命なら、これからは一生会えないということにした方がいいと、残酷な事実を告げる。
僕の答えに子供達は言葉を失い、孫達は「嫌だー。」「ばぁばに会いたいー!」という言葉が飛んだ。
少し落ち着いたところで僕はこう告げる。
心残りであった下2人の結婚式についてだ。
「ラベン、サラ。ごめんね、2人の結婚式に出たかったけど、王様との約束は守らないと…。」
と僕の困った様子に2人は動揺しながらも口を開く。
「…正直、まだ頭の中で整理しきれてないけど、どうしても行かなきゃダメなんだよね…?」とラベン。
それにコクッと頷くとサラが「嫌だよぉ…母様…何処にも行かないで…。」と泣き出した。サラは末っ子なだけあって1番の甘えただ。僕はサラを抱き締めると「泣かないで、サラ。サラが哀しむと僕まで哀しくなっちゃうから。」と告げる。
僕がサラの背中をポンポンとしているとシダーから「母様…どうしても行くおつもりですか?」と聞かれる。
シダーも僕にとっては心残りだ。
「…本当はこのまま皆と一緒にいたいけど…クローブさんの最期を看取ったら城に戻るように約束したんだ…。その約束は破れない。」
そう僕が静かに告げるとシダーは悔しそうにグッと手を握り締め「…分かりました。母様のそこまでの覚悟を俺たちがとやかく言うことは出来ません…母様、向こうへ行ってもお身体に気をつけて。それと…最後にお願いが…抱き締めても良いですか?」と頼んでくる。
僕は「勿論。」とサラを宥めると立ち上がった。
僕をギュッと抱き締めたシダーは
「母様…母様は俺の初恋でした。母様のような可愛くて綺麗な心の持ち主は他にはいません。俺はこれからもこの家を守っていきます、どうか心配しないで、俺はいつまでも貴方の帰りを待っています。」
と答える。
僕は「ありがとう。」と言いながら頰に口付けた。その後、息子達が次々と僕を抱き締め、それは孫達までに至った。
次の日になると前日に頼んでいた王家の馬車が家の前で止まる。僕は子供達に見送られながらその馬車に乗り込んだ。
すると、なんとそこには王様が悠々と座っていた。
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