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9. 逃走
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それから4日経った。
僕がロータスさんにお世話になって6日目。明日は約束の7日目だ。
明日には僕はロータスさんに連れられて王家に行かなければならない。実をいうと僕はそうなるギリギリまで待っていた。何故ならロータスさんは買い物の時に必要な材料が書かれたメモと少し余分にお金をくれる。余った分はお小遣いとして自由に使っていいと言われているので、僕は逃走資金としてそれを貯めていた。
僕は買い終えた材料をキッチンのテーブルに置くと部屋に戻り、麻袋にTシャツとローブ、タオル、水筒と少量の食料を入れ部屋を後にする。
玄関のノブに手を掛けた時、短期間だがお世話になったロータスさんの顔が浮かび申し訳なく思ったが自分の自由の為には仕方ないと思うようにかぶりを振った。
そして先程まで居た街まで歩き出す。
現在の時刻はだいたい15時くらい。本当は今日の夜にでも逃げようかと思ったが、流石に夜中の森を通る勇気がない。なのでロータスさんが仕事から帰ってくるまでに少しでも遠くに行けたらいいか、という計画でこの時間だ。このまま街の娼館にでも行こうかと思ったが、流石にこんなに近ければロータスさんにバレてしまうと思った僕はせめて隣町までどうにかして行こうと決めた。
そして運良く通りがかった農家のおじさんに声をかけ、一緒に馬車に乗せてもらうことができた。
荷台には家畜用の豚が5匹積まれており、草や果物を食べながらプヒプヒと言っている。それを尻目に僕はおじさんに質問をした。
「あの…変なことを聞きますが、僕、何歳に見えますか?」
「えぇ?」
とおじさんは惚けた顔をする。
「そうだなぁ…20歳から22歳くらいか?」
それを聞いてガッカリした。
「やっぱりそうなんだ…僕、かなり若く見えるんですね。実は僕、40歳なんですよ?」
と言うとほんわかしていたおじさんの顔が驚愕の表情となり「おい、それは言い過ぎだろう…!そんなすぐバレる嘘はつかんほうがいい。」と言ってきた。
「いや、本当なんですって!それに僕…今から行く街で娼夫として働こうと思ってるのに…。」
としおらしく言ってみた。
するとおじさんも
「えぇ…そうなのか…?そう言うってことは本当なんだろうが、どう見たって成人を越えてるとは思えないぞ?」
と真面目な顔して言ってくる。
「…う~ん、それでもなんとか交渉してみます。あの…おじさん!おじさんは娼館を利用したことはありますか!?」
「えぇ!?また思い切ったことを聞いてくるな…まぁそりゃあ、人並みにはな…。」
と照れ臭そうに言う。
「じゃあ娼館でランクの中盤くらいの娼館を教えてほしいんですが…。」
「ああ…それは別に構わないが高級娼館じゃなくていいのか?アンタみたいな小綺麗な感じなら高級娼館でも雇ってもらえそうなのに。」
「はい、高級娼館じゃなくていいんです!僕、そこまで見た目がいいと思ってないんで。」
僕がそう言うとおじさんは「いや…そんなことないが…。」と言いながら娼館について考えてくれた。
僕が何故、高級娼館を選ばなかったのか。
それはそんなところで働き出したら貴族の人が客として来るからだ。そうなると僕の素性がバレた時に直ぐにでも王家に連れて行かれるだろう。それはなんとしても避けたいので高級娼館は始めから選択肢から外した。そして低ランクの娼館は住み込みで働けるかわからないし、何をさせられるかわからない。せめて、それなりの雰囲気の店で働きたいのが僕の願望である。
おじさんは少し考えると
「じゃあ"ウィンターグリーン"という店はどうだ?その店ならランクで言うと5番目だ。俺も1度しか利用したことはないが、全体的に白を基調とした建物と内装で、娼夫も礼儀正しい印象だった。」
「へぇ~そういうお店があるんですね、じゃあ街に着いたら早速訪ねてみます。ありがとうございました。」
「いや、いいが…本当に娼館で働くのか?」
「はい。えっと…僕じゃ難しいでしょうか?」
「いや、そういうわけじゃない。しかし、娼館がどんな仕事をするか分かってるのか?」
「それは勿論。僕、40歳って言ったじゃないですか、経験もそれなりです。」
と笑顔で答える。
「…なら反対はしないが、しんどくなったら辞めるんだぞ。もし行く宛が無かったら俺のとこに来たっていい。」
おじさんはまたもや真剣な顔で言ってくる。その親切が嬉しい。
「フフッ、おじさん、お気遣いありがとうございます。きっと大丈夫です。僕、頑張りますから。」
とお礼を言い、僕がそこで働き出したらいつか来て下さいね!とお誘いも忘れず告げた。
僕がロータスさんにお世話になって6日目。明日は約束の7日目だ。
明日には僕はロータスさんに連れられて王家に行かなければならない。実をいうと僕はそうなるギリギリまで待っていた。何故ならロータスさんは買い物の時に必要な材料が書かれたメモと少し余分にお金をくれる。余った分はお小遣いとして自由に使っていいと言われているので、僕は逃走資金としてそれを貯めていた。
僕は買い終えた材料をキッチンのテーブルに置くと部屋に戻り、麻袋にTシャツとローブ、タオル、水筒と少量の食料を入れ部屋を後にする。
玄関のノブに手を掛けた時、短期間だがお世話になったロータスさんの顔が浮かび申し訳なく思ったが自分の自由の為には仕方ないと思うようにかぶりを振った。
そして先程まで居た街まで歩き出す。
現在の時刻はだいたい15時くらい。本当は今日の夜にでも逃げようかと思ったが、流石に夜中の森を通る勇気がない。なのでロータスさんが仕事から帰ってくるまでに少しでも遠くに行けたらいいか、という計画でこの時間だ。このまま街の娼館にでも行こうかと思ったが、流石にこんなに近ければロータスさんにバレてしまうと思った僕はせめて隣町までどうにかして行こうと決めた。
そして運良く通りがかった農家のおじさんに声をかけ、一緒に馬車に乗せてもらうことができた。
荷台には家畜用の豚が5匹積まれており、草や果物を食べながらプヒプヒと言っている。それを尻目に僕はおじさんに質問をした。
「あの…変なことを聞きますが、僕、何歳に見えますか?」
「えぇ?」
とおじさんは惚けた顔をする。
「そうだなぁ…20歳から22歳くらいか?」
それを聞いてガッカリした。
「やっぱりそうなんだ…僕、かなり若く見えるんですね。実は僕、40歳なんですよ?」
と言うとほんわかしていたおじさんの顔が驚愕の表情となり「おい、それは言い過ぎだろう…!そんなすぐバレる嘘はつかんほうがいい。」と言ってきた。
「いや、本当なんですって!それに僕…今から行く街で娼夫として働こうと思ってるのに…。」
としおらしく言ってみた。
するとおじさんも
「えぇ…そうなのか…?そう言うってことは本当なんだろうが、どう見たって成人を越えてるとは思えないぞ?」
と真面目な顔して言ってくる。
「…う~ん、それでもなんとか交渉してみます。あの…おじさん!おじさんは娼館を利用したことはありますか!?」
「えぇ!?また思い切ったことを聞いてくるな…まぁそりゃあ、人並みにはな…。」
と照れ臭そうに言う。
「じゃあ娼館でランクの中盤くらいの娼館を教えてほしいんですが…。」
「ああ…それは別に構わないが高級娼館じゃなくていいのか?アンタみたいな小綺麗な感じなら高級娼館でも雇ってもらえそうなのに。」
「はい、高級娼館じゃなくていいんです!僕、そこまで見た目がいいと思ってないんで。」
僕がそう言うとおじさんは「いや…そんなことないが…。」と言いながら娼館について考えてくれた。
僕が何故、高級娼館を選ばなかったのか。
それはそんなところで働き出したら貴族の人が客として来るからだ。そうなると僕の素性がバレた時に直ぐにでも王家に連れて行かれるだろう。それはなんとしても避けたいので高級娼館は始めから選択肢から外した。そして低ランクの娼館は住み込みで働けるかわからないし、何をさせられるかわからない。せめて、それなりの雰囲気の店で働きたいのが僕の願望である。
おじさんは少し考えると
「じゃあ"ウィンターグリーン"という店はどうだ?その店ならランクで言うと5番目だ。俺も1度しか利用したことはないが、全体的に白を基調とした建物と内装で、娼夫も礼儀正しい印象だった。」
「へぇ~そういうお店があるんですね、じゃあ街に着いたら早速訪ねてみます。ありがとうございました。」
「いや、いいが…本当に娼館で働くのか?」
「はい。えっと…僕じゃ難しいでしょうか?」
「いや、そういうわけじゃない。しかし、娼館がどんな仕事をするか分かってるのか?」
「それは勿論。僕、40歳って言ったじゃないですか、経験もそれなりです。」
と笑顔で答える。
「…なら反対はしないが、しんどくなったら辞めるんだぞ。もし行く宛が無かったら俺のとこに来たっていい。」
おじさんはまたもや真剣な顔で言ってくる。その親切が嬉しい。
「フフッ、おじさん、お気遣いありがとうございます。きっと大丈夫です。僕、頑張りますから。」
とお礼を言い、僕がそこで働き出したらいつか来て下さいね!とお誘いも忘れず告げた。
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