上 下
56 / 58
番外編

⑧ウサちゃん!-Ⅴ

しおりを挟む
 まさか、セックスが物足りないと言われるとは思わなかった。エルフリーデがずっと口をつぐんで言いづらそうにしていたのも納得がいく。
 そうして茫然ぼうぜんと言葉を失っているジュードの様子を見て流石さすがに悪いと思ったのか。エルフリーデはいじいじと頭に付けたウサ耳を触りながら、何とかフォローしようと試みた。が、完全に失敗した。

「あっ! ちっ違うのよ? エッチが下手とかそういうことを言っているんじゃないの! 他の人としたことないから比べようがないんだけど、ジュードとエッチしてるときはいつも気持ち良過ぎて困るくらいだし。多分すごく上手だと思うの。でも、その、ね? ……ちょっと優し過ぎて刺激が足りないというか。──ってあのぉ~ジュード? ど、どうしてそんな目で見るのよぅっ!?」

 当たり前だ。他の人間とそんなことされてたまるか。ましてや比べられる何て冗談じゃない。ジュードの中にそれまで眠っていた闇の感情がひょっこりと顔を出す。天使の顔に悪魔のようなドス黒い感情が上塗うわぬりされて。まるで魔王と対峙たいじしているかのような迫力にエルフリーデは半泣き状態で自身の身体を自分で抱き締めている。
 圧倒的な何かがジュードの身体をおおい始めていることをエルフリーデは敏感に感じとっていた。

「リー、以前僕に壁際で抱かれたとき、怖がって泣いてたよね?」
「あ、あのときはその……激しくてビックリしたけど怖かったんじゃなくて、気持ち良すぎて身体も頭の中も全部おかしくなりそうでどうしたらいいのか分からなくて……でも、その……ジュードはすごく沢山欲しがって抱いてくれたからそれが嬉しくて色々と考えてたら泣いちゃって……」
「……リーは泣き虫だもんね」
「あっあのね? わたしあのときみたいに抱いて欲しいなって時々思ってて……」

 それでジュードがエルフリーデを気遣って優しくしていたセックスに刺激が足りないから、こうしてバニーガールの格好で自ら誘ってしまったと言われては男としての立場がない。ジュードの下に組み敷かれて身動きが取れない状態のエルフリーデは、まるで捕らわれた小動物のようにおどおどした目をこちらに向けてくる。そのおびえた視線にすら怒りを覚えてジュードは妻の細腰に回した手にグッと力を入れた。
 前々から気になっていたことがある。エルフリーデはジュードのことを綺麗だとか可愛いだとか、男として見ていないような発言と雰囲気を小さい頃から時折ときおり見せることがあった。優しくエルフリーデに接していたことでジュードを安全圏と勘違いして結果、男として認識していないような部分があるとは思っていたのだが……

 男としてのプライドをことごとく打ち砕くエルフリーデの無自覚で無慈悲な所業しょぎょうにジュードはにっこり作り笑いを浮かべながら、ゆっくりと呼吸を整えて息を吐き出した。

「じゅ、ジュードぉ……?」

 ジュードは一見天使のような微笑みをエルフリーデに向けているが内心全く笑っていなかった。
 エルフリーデが泣きそうな顔で頭に付けたウサ耳を両手で引っ張って気をまぎらわしている。その怖がっている姿すら愛しく感じるくらいジュードはエルフリーデを愛していた。

 ──なるほど、どうやらこれが彼女にとって最大限の行為へのお誘い手段だったらしい。

 バニーガールの格好をしてジュードを誘っていたエルフリーデが、実は前にもその格好をしてジュードのところへ行こうとしていたことをジュードは知らなかった。その事実を知っているのはエルフリーデ付きのメイド、マリアだけだ。
 エルフリーデにとってバニーガールの格好は本当に可愛くて大好きな、思い入れのある衣装だったからその姿でジュードを誘惑したいと思った。正直で嘘のない真っ直ぐにジュードをしたう気持ちからの行動だったのに。あまりにも一般的なお誘い手段とそれは異なっていたから、ジュードはその純粋な思いに気付けなかった。

 ──可愛いな……でも、どうしても今回ばかりは許せない。

 それが何に対しての怒りなのか、半ば八つ当たりにも似た感情のままにジュードは動いた。

「……そっか、分かったよ」
「な、なにが分かったの?」
「これからちゃんと抱いてあげるってことかな?」
「えと、な、なに? ちゃんとって……」

 どういうこと? と不思議そうにジュードの下で首をかしげているエルフリーデを眺めながら、ベッドの上でビクビクとおびえたようにこちらの様子をうかがっているエルフリーデの衣服をジュードは脱がせ始めた。

「ひゃんっ!」

 エルフリーデの衣服を脱がせるジュードの熱い指先が身体中を刺激して思わず身体を小さく丸めてちぢこまるエルフリーデの身体をジュードは丹念に愛撫を繰り返しながら溶かしていく。
 愛しい妻の身体は始めのうちは何時いつも緊張して強張こわばるのをジュードはよく分かっている。そうして慣れた手付きで身体を開いていく夫にエルフリーデはビクビクしながら徐々に心と身体を預けていく。
 そうしている間にもバニーガールの衣装はあっという間に脱がされて、残っているのは頭に付けたウサ耳のカチューシャだけになった。

「リー、おいで」

 完全に主導権を握られて言われるがままにエルフリーデがそろそろとその引き締まった背中に手を回すと、両足の太股をつかまれて大きく左右へ開かされた。そして次の瞬間、ジュードの熱い肉棒が愛撫によって蜜を流し溶けた花弁を押し開いて一気に入って来た。

「きゃぁっ」

 早すぎる展開にジュードの背中に回した手に力を入れて必死にしがみつきながら、エルフリーデは泣きながら嫌々と首を横へ振った。けれどジュードは容赦無くエルフリーデを貫いて最深部まで到達してしまう。

「きゃんっ! ふぁっ……ぁっ……やっ……」

 ぐじゅっと膣内で動き出した太く熱い肉棒に可愛く悲鳴を上げるエルフリーデを満足した表情で見つめながら、ジュードは自身の背中に回されているエルフリーデの両腕をつかみ取ってその指と指をからめるとキュッと両の手を繋ぎ合わせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

腹黒伯爵の甘く淫らな策謀

茂栖 もす
恋愛
私、アスティア・オースティンは夢を見た。 幼い頃過ごした男の子───レイディックと過ごした在りし日の甘い出来事を。 けれど夢から覚めた私の眼前には、見知らぬ男性が居て───そのまま私は、純潔を奪われてしまった。 それからすぐ、私はレイディックと再会する。 美しい青年に成長したレイディックは、もう病弱だった薄幸の少年ではなかった。 『アスティア、大丈夫、僕が全部上書きしてあげる』   そう言って強姦された私に、レイディックは手を伸ばす。甘く優しいその声は、まるで媚薬のようで、私は抗うことができず…………。  ※R−18部分には、♪が付きます。 ※他サイトにも重複投稿しています。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

【完結】R18 狂惑者の殉愛

ユリーカ
恋愛
7/21追記:  ご覧いただいてありがとうございます!HOTランクイン嬉しいです!  二部完結しました。全話公開予約済み。完結に伴いタグを修正しています。よろしければ二部もお付き合いください。二部は視点が変わります。  殉愛とは、ひたむきな愛を守るために命を賭すことです。 ============  エルーシア(エルシャ)は幼い頃に両親を亡くした侯爵令嬢だった。唯一の肉親である侯爵家当主でエルーシアを溺愛する異母兄ラルドに軟禁されるように屋敷の中で暮らしていた。  そんな中で優しく接してくれる馬丁のエデルと恋仲になる。妹を盲愛する義兄の目を盗み密会を重ねる二人だったが‥‥  第一部は義兄と家人、二人の男性から愛され求められ翻弄されるヒロインのお話です。なぜ翻弄され流されるのかはのちにわかります。  兄妹×三角関係×取り合い系を書いてみたくて今までとちょっと違うものを目指してみました。妹をドロドロにガチ愛する兄(シスコンではないやつ)がダメでしたら撤退でお願いします。  さて、狂っていたのは一体誰だったんでしょうかね。  本作品はR18です。第一部で無理やり表現があります。ご注意ください。ムーンライトノベルズでも掲載予定ですがアルファポリス先行です。  第13話より7時20時で毎日更新していきます。完結予定です。  タイトルの※ はR18を想定しています。※以外でもR18未満のベタベタ(キスハグ)はあります。 ※ 世界観は19世紀初頭ヨーロッパもどき、科学等の文明なし。魔法スキルなし物理のみ。バトル要素はありません。 ※ 二部構成です。二部にて全力で伏線回収します。一部は色々とっ散らかっております。黒幕を予想しつつ二部まで堪えてください。

[R18]引きこもりの男爵令嬢〜美貌公爵様の溺愛っぷりについていけません〜

くみ
恋愛
R18作品です。 18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。 男爵家の令嬢エリーナ・ネーディブは身体が弱くほとんどを屋敷の中で過ごす引きこもり令嬢だ。 そのせいか極度の人見知り。 ある時父からいきなりカール・フォード公爵が婚姻をご所望だと聞かされる。 あっという間に婚約話が進み、フォード家へ嫁ぐことに。 内気で初心な令嬢は、美貌の公爵に甘く激しく愛されてー?

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

処理中です...