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本編
19 可愛い人(挿絵あり)
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セオドア様と体の関係を持った翌日、早朝。
結局昨日は朝から晩まで、そしてその後も求められて……丸一日、セックスしてしまった……
気絶したらどうしよう……という不安は、けれど、スピアリング卿の言葉通り、掻き消された。
あまりに激しく愛されて、本当にセオドア様は私に気絶する間など与えなかった。というより、する間すら与えてくれなかった。
エッチする前に男の人の裸を見て気絶する。という失態を演じず良かったとホッとする反面、別の意味で恥ずかし過ぎた。綺麗なセオドア様にあんなところを触れられて、あんなことをされるとは……思い出すだけで顔から火が出そうになる。
セオドア様……すごくエッチだった……
初めての共同作業、ケーキ入刀の前にエッチしてしまった……。そもそも既に同居──共同生活してしまっているし、そしてエッチまでして──って、あれ? 花嫁でもないのに共同作業を意識する必要はないような……。でも、セオドア様に恋人って言われて、エッチしているときも子供の話とか……あれ? 私ってセオドア様の何?
酷く混乱して、やはり今すぐにも逃げ出したくなる状況だった。
まあ何を言われたにしても、これは一夜限りの戯れ。恋人でも子供を作るでもなく、当初のお約束通り、私はちゃんとセオドア様の義妹に戻らないと……。
でも困ったわ……はじめは全然平気だって思うことにしていたのに、今は義妹に戻ることが辛い。そう呼ばれることを想像するだけで、どうにも胸が苦しくなる。
そして、何より今回、最重要視されるべき事柄を、私はまだ確認できていない。
エッチ中にセオドア様の記憶が戻ったらと最初はひやひやしていたのに、あまりに激しく愛されてしまい、途中すっかり頭から抜け落ちてしまっていたが、
しかしあのご様子だと、おそらくセオドア様の記憶は結局最後まで戻っていない。そして私はセオドア様に求められるまま受け入れ続け、体を重ね……最後はあまりの激しさに意識を失って、朝を迎えてしまったようなのだ。
そういえば、ベッドではなくここはダイニングの床。寝床とはいえ、簡易的に作ったものだし、朝は肌寒さを覚えてもおかしくないはずなのだ。けれど部屋の中の温度が冬の早朝にしてはとても温かで、過ごしやすい。
パチッと暖炉の薪が爆ぜる音がして見ると、暖炉の火は消えずにちゃんと薪がくべられている。カーテンの引かれた仄暗く温かい室内には、蝋燭の火もちゃんと灯されていて、その上、テーブルには私の朝食と思しきモノまで用意されている。
情事の熱の余韻にぼうっとして、毛布の中でぬくぬくとしていたから気付くのが遅れた。
私がセックスの激しさに根を上げ、ついに気絶してしまってから目を覚まして今に至るまでの間に、セオドア様が全部用意してくれたようだ。
とはいえ、もし、セオドア様の記憶が戻っていたら? そのときは……私の隣で上半身を起こして、何やら書簡を手に黙読しているセオドア様の隣で狸寝入りをしている私は、いったいどう説明をしたらいいのでしょうか……。
それも今の私は、セオドア様に一晩中激しく抱かれた影響で体が怠く、思うように動けないでいる。
寝ぼけ眼に、申し訳程度に毛布を下半身にかけた、私と同じ裸のセオドア様を何度もチラ見する。おそらくセオドア様がかけてくれたであろう毛布の中で「どうしよう……」と、悩んでモゾモゾモゾモゾしていたら、クスリと笑う気配がした。
「君は寝起きも可愛らしいですね」
「!」
狸寝入りはとっくに気付かれていたらしい。恥ずかしさに、毛布を少し頭に被りながら、そのままの格好で毛布の中から挨拶する。
「……おはようございます。セオドア様」
「おはようございます、エリカ」
にっこり挨拶を返されて、ドキッとしてしまう。
ううっ平常心。そう、平常心だ。平常心を保たなければ……
けれど、どうにもそわそわ落ち着かず、辺りを見渡していると……美味しそうなご飯の匂いがした。テーブルの上に置かれている、セオドア様が用意してくれたご飯。それを見て、ようやく私は本来の自分のやるべきことを思い出した。
「あの、セオドア様は休んでいて下さい。家事は私がやりますので」
「君が……?」
何故だかふっと甘い微笑を浮かべたセオドア様が、眩しいくらい美し過ぎて、困る。
「それは暫く難しいでしょう。家事は全て僕が引き受けますよ」
「難しい……あの、それはいったいどういうことなのでしょうか……?」
「…………」
確かに体は重いけれど、何もできないわけじゃない。不思議に思って首を傾げると、セオドア様から探るような眼差しを向けられて、余計に困惑してしまう。私は何かおかしいことを言ったのだろうか?
「セオドア様……?」
「ああ、すみません。分かりにくかったですね。言い直しましょう」
セオドア様が手元に持っていた書簡を、綺麗に元の折れ目にそって折り畳んでから床に置いた。やっぱりセオドア様は所作の一つひとつが品良く丁寧で、素敵な男の人だ。
それからセオドア様は、毛布の中で半ば隠れながら丸くなっている私を、徐に抱き上げ自らの膝上に乗せた。
「あ……っ!」
横抱きに抱えられて、体に掛けていた毛布が床に落ちてしまった。生まれたままの姿で、セオドア様の腕に抱かれてしまう。
もうエッチで散々見られているし、お互いに裸だけれど……でもやっぱり恥ずかしい。しかし、毛布を拾い上げようと伸ばした手を、セオドア様に掴まれてしまった。
「セオドア様、あのっ毛布を……──っ!」
掴まえた手ごと、セオドア様が私を胸元に強く引き寄せた。今度は唇を塞がれて、強く舌を吸われてしまう。
裸のままでいるようにされてしまったけれど、暖炉が付いているお陰で寒くはない。とはいえ、でもやっぱり、私の中の羞恥は消えなかった。
情事の最中とは違う。頭がはっきりしている状態で裸を見られることが気恥ずかしくて、セオドア様から目を逸らそうとしたら、体位を互いの顔が見えるように真正面に変えられてしまった。
すると、互いの局部がクチュッと当たった。「きゃっ」と声を出して、否応なしに行為の続きを連想させられ困惑している私を──セオドア様は胸元に優しく抱き寄せた。互いのおでことおでこをくっつけて、安心させるように瞳を覗き込まれる。
私の不安を掻き消すように、唇を重ねられる。啄むようなキスしながら、ゆっくりと瞬くセオドア様の長い睫毛。そして澄んだ湖を思わせるアイスブルーの瞳の美しさに赤面する。
互いの額をくっつけたまま、やっぱり私が目線を逸らしてしまうと、セオドア様は小さく笑って、私の顎に手をかけクイッと上向かせた。
「ぁっ……ん」
逃がさないとでも言うように、何度も繰り返し、ゆっくりと深く唇が重なって、とても幸せな気持ちになる。そうしてセオドア様を受け入れながら、しかし途中で、私はあることに気が付いて、あれっ? となった。まるで行為中のときの激しさに似た熱を、私に触れているセオドア様の手から感じたのだ。
「セオドア様があったかい……?」
私を抱いた後、私から離れて書簡を読んでらしたから、てっきり冷えていると思っていたのに。セオドア様の手は温かかった。よく見ると、私が眠っていた場所とは反対側の、セオドア様の横の床に、湯気だつお湯の入ったコップが置かれている。
まさかあれで……?
セオドア様は私に触れるとき、なるべく手を温めてから、触れようとしてくれているらしい。
「ふふっ可愛い……」
くすくすと笑いながら、思わず言ってしまう。せめて手だけでも温かくして、私の負担を減らそうと気遣うセオドア様……まさか、こんな可愛らしい行動をして下さる方だとは、夢にも思っていなかった。
「可愛いと言われたのは初めてですが……」
「あっ、あの……笑ったりしてごめんなさい。私が冷えないようにして下さっているのですよね。でも、お陰でとても温かいです。それに……セオドア様、それってやっぱりすごく可愛いです。すごく……私は好きです」
好きとか言ってしまった自分が恥ずかしい。自分で言っておいて、照れてしまったのを笑って誤魔化すが……
「……可愛いのは君の方ですよ」
「え……?」
普段は必ず聞こえる声で話をしてくれるセオドア様らしくない。ボソリと言われて、私を抱いているセオドア様を見上げると、……目を合わせてくれない。顔を横に向けて、こちらを見てくれない。それなのに、私を抱く手は優しいままで……返事はしてくれる。
これってもしかして……セオドア様、拗ねてるの……?
セオドア様がいつもより素直で、少し幼く見えた。甘えてくれているような感覚に、セオドア様がさっきより倍増しして可愛く見える。
え、どういうこと? ……これもセオドア様とエッチしたからかしら……? セオドア様が何だかスゴく……可愛い……。
「……先程言い直すと言った話ですが」
「え? あ、あの私には暫く家事をするのは難しいという話ですね」
すっかり話題がそれてしまっていたけれど、どうして家事をすることが困難になるのだろう?
突然話を戻されて、私が目をパチクリしていると、セオドア様が意趣返しとばかりにすごいことを言った。
「泣きながら僕を呼ぶエリカがあまりに可愛かったので、我を忘れて君を一晩中抱いてしまいました。そのせいで、君の体は立てない状態になっているはずです」
「っ……!」
どうりで腰が動かないと思っていたら……つまり私は、セオドア様に抱き潰されてしまっている状態、ということらしい。
私でもそんなことになるんだ……と、まるで他人事のように思いながら、ビックリ呆然としていたら──
一糸まとわぬ私の腰を、セオドア様が優しく撫でた。今度は目を合わせて、気遣うように見つめられる。反省している子犬のような表情に、私は思わず、言ってはいけないことを呟いてしまった。
「セオドア様、好きな人に触れられたくないなんて、思うことがあるんでしょうか……?」
途端、陰部に当たっているセオドア様のモノが大きくなった。
「ぁっ……」
どうしよう……とこちらが悩むまでもなく、セオドア様が額に手を当てて、何やら思い悩んでいる。こんな表情をするセオドア様を見るのは初めてだった。
*挿絵イラストはこちらの創作を依頼した時期などの関係で、胸元に十字架があって包帯がありませんが、あくまでイメージということで、
松田様の素敵なイラストを見ていただけましたら嬉しいです……!
*挿絵イラストは松田トキ様。無断転載禁止。
結局昨日は朝から晩まで、そしてその後も求められて……丸一日、セックスしてしまった……
気絶したらどうしよう……という不安は、けれど、スピアリング卿の言葉通り、掻き消された。
あまりに激しく愛されて、本当にセオドア様は私に気絶する間など与えなかった。というより、する間すら与えてくれなかった。
エッチする前に男の人の裸を見て気絶する。という失態を演じず良かったとホッとする反面、別の意味で恥ずかし過ぎた。綺麗なセオドア様にあんなところを触れられて、あんなことをされるとは……思い出すだけで顔から火が出そうになる。
セオドア様……すごくエッチだった……
初めての共同作業、ケーキ入刀の前にエッチしてしまった……。そもそも既に同居──共同生活してしまっているし、そしてエッチまでして──って、あれ? 花嫁でもないのに共同作業を意識する必要はないような……。でも、セオドア様に恋人って言われて、エッチしているときも子供の話とか……あれ? 私ってセオドア様の何?
酷く混乱して、やはり今すぐにも逃げ出したくなる状況だった。
まあ何を言われたにしても、これは一夜限りの戯れ。恋人でも子供を作るでもなく、当初のお約束通り、私はちゃんとセオドア様の義妹に戻らないと……。
でも困ったわ……はじめは全然平気だって思うことにしていたのに、今は義妹に戻ることが辛い。そう呼ばれることを想像するだけで、どうにも胸が苦しくなる。
そして、何より今回、最重要視されるべき事柄を、私はまだ確認できていない。
エッチ中にセオドア様の記憶が戻ったらと最初はひやひやしていたのに、あまりに激しく愛されてしまい、途中すっかり頭から抜け落ちてしまっていたが、
しかしあのご様子だと、おそらくセオドア様の記憶は結局最後まで戻っていない。そして私はセオドア様に求められるまま受け入れ続け、体を重ね……最後はあまりの激しさに意識を失って、朝を迎えてしまったようなのだ。
そういえば、ベッドではなくここはダイニングの床。寝床とはいえ、簡易的に作ったものだし、朝は肌寒さを覚えてもおかしくないはずなのだ。けれど部屋の中の温度が冬の早朝にしてはとても温かで、過ごしやすい。
パチッと暖炉の薪が爆ぜる音がして見ると、暖炉の火は消えずにちゃんと薪がくべられている。カーテンの引かれた仄暗く温かい室内には、蝋燭の火もちゃんと灯されていて、その上、テーブルには私の朝食と思しきモノまで用意されている。
情事の熱の余韻にぼうっとして、毛布の中でぬくぬくとしていたから気付くのが遅れた。
私がセックスの激しさに根を上げ、ついに気絶してしまってから目を覚まして今に至るまでの間に、セオドア様が全部用意してくれたようだ。
とはいえ、もし、セオドア様の記憶が戻っていたら? そのときは……私の隣で上半身を起こして、何やら書簡を手に黙読しているセオドア様の隣で狸寝入りをしている私は、いったいどう説明をしたらいいのでしょうか……。
それも今の私は、セオドア様に一晩中激しく抱かれた影響で体が怠く、思うように動けないでいる。
寝ぼけ眼に、申し訳程度に毛布を下半身にかけた、私と同じ裸のセオドア様を何度もチラ見する。おそらくセオドア様がかけてくれたであろう毛布の中で「どうしよう……」と、悩んでモゾモゾモゾモゾしていたら、クスリと笑う気配がした。
「君は寝起きも可愛らしいですね」
「!」
狸寝入りはとっくに気付かれていたらしい。恥ずかしさに、毛布を少し頭に被りながら、そのままの格好で毛布の中から挨拶する。
「……おはようございます。セオドア様」
「おはようございます、エリカ」
にっこり挨拶を返されて、ドキッとしてしまう。
ううっ平常心。そう、平常心だ。平常心を保たなければ……
けれど、どうにもそわそわ落ち着かず、辺りを見渡していると……美味しそうなご飯の匂いがした。テーブルの上に置かれている、セオドア様が用意してくれたご飯。それを見て、ようやく私は本来の自分のやるべきことを思い出した。
「あの、セオドア様は休んでいて下さい。家事は私がやりますので」
「君が……?」
何故だかふっと甘い微笑を浮かべたセオドア様が、眩しいくらい美し過ぎて、困る。
「それは暫く難しいでしょう。家事は全て僕が引き受けますよ」
「難しい……あの、それはいったいどういうことなのでしょうか……?」
「…………」
確かに体は重いけれど、何もできないわけじゃない。不思議に思って首を傾げると、セオドア様から探るような眼差しを向けられて、余計に困惑してしまう。私は何かおかしいことを言ったのだろうか?
「セオドア様……?」
「ああ、すみません。分かりにくかったですね。言い直しましょう」
セオドア様が手元に持っていた書簡を、綺麗に元の折れ目にそって折り畳んでから床に置いた。やっぱりセオドア様は所作の一つひとつが品良く丁寧で、素敵な男の人だ。
それからセオドア様は、毛布の中で半ば隠れながら丸くなっている私を、徐に抱き上げ自らの膝上に乗せた。
「あ……っ!」
横抱きに抱えられて、体に掛けていた毛布が床に落ちてしまった。生まれたままの姿で、セオドア様の腕に抱かれてしまう。
もうエッチで散々見られているし、お互いに裸だけれど……でもやっぱり恥ずかしい。しかし、毛布を拾い上げようと伸ばした手を、セオドア様に掴まれてしまった。
「セオドア様、あのっ毛布を……──っ!」
掴まえた手ごと、セオドア様が私を胸元に強く引き寄せた。今度は唇を塞がれて、強く舌を吸われてしまう。
裸のままでいるようにされてしまったけれど、暖炉が付いているお陰で寒くはない。とはいえ、でもやっぱり、私の中の羞恥は消えなかった。
情事の最中とは違う。頭がはっきりしている状態で裸を見られることが気恥ずかしくて、セオドア様から目を逸らそうとしたら、体位を互いの顔が見えるように真正面に変えられてしまった。
すると、互いの局部がクチュッと当たった。「きゃっ」と声を出して、否応なしに行為の続きを連想させられ困惑している私を──セオドア様は胸元に優しく抱き寄せた。互いのおでことおでこをくっつけて、安心させるように瞳を覗き込まれる。
私の不安を掻き消すように、唇を重ねられる。啄むようなキスしながら、ゆっくりと瞬くセオドア様の長い睫毛。そして澄んだ湖を思わせるアイスブルーの瞳の美しさに赤面する。
互いの額をくっつけたまま、やっぱり私が目線を逸らしてしまうと、セオドア様は小さく笑って、私の顎に手をかけクイッと上向かせた。
「ぁっ……ん」
逃がさないとでも言うように、何度も繰り返し、ゆっくりと深く唇が重なって、とても幸せな気持ちになる。そうしてセオドア様を受け入れながら、しかし途中で、私はあることに気が付いて、あれっ? となった。まるで行為中のときの激しさに似た熱を、私に触れているセオドア様の手から感じたのだ。
「セオドア様があったかい……?」
私を抱いた後、私から離れて書簡を読んでらしたから、てっきり冷えていると思っていたのに。セオドア様の手は温かかった。よく見ると、私が眠っていた場所とは反対側の、セオドア様の横の床に、湯気だつお湯の入ったコップが置かれている。
まさかあれで……?
セオドア様は私に触れるとき、なるべく手を温めてから、触れようとしてくれているらしい。
「ふふっ可愛い……」
くすくすと笑いながら、思わず言ってしまう。せめて手だけでも温かくして、私の負担を減らそうと気遣うセオドア様……まさか、こんな可愛らしい行動をして下さる方だとは、夢にも思っていなかった。
「可愛いと言われたのは初めてですが……」
「あっ、あの……笑ったりしてごめんなさい。私が冷えないようにして下さっているのですよね。でも、お陰でとても温かいです。それに……セオドア様、それってやっぱりすごく可愛いです。すごく……私は好きです」
好きとか言ってしまった自分が恥ずかしい。自分で言っておいて、照れてしまったのを笑って誤魔化すが……
「……可愛いのは君の方ですよ」
「え……?」
普段は必ず聞こえる声で話をしてくれるセオドア様らしくない。ボソリと言われて、私を抱いているセオドア様を見上げると、……目を合わせてくれない。顔を横に向けて、こちらを見てくれない。それなのに、私を抱く手は優しいままで……返事はしてくれる。
これってもしかして……セオドア様、拗ねてるの……?
セオドア様がいつもより素直で、少し幼く見えた。甘えてくれているような感覚に、セオドア様がさっきより倍増しして可愛く見える。
え、どういうこと? ……これもセオドア様とエッチしたからかしら……? セオドア様が何だかスゴく……可愛い……。
「……先程言い直すと言った話ですが」
「え? あ、あの私には暫く家事をするのは難しいという話ですね」
すっかり話題がそれてしまっていたけれど、どうして家事をすることが困難になるのだろう?
突然話を戻されて、私が目をパチクリしていると、セオドア様が意趣返しとばかりにすごいことを言った。
「泣きながら僕を呼ぶエリカがあまりに可愛かったので、我を忘れて君を一晩中抱いてしまいました。そのせいで、君の体は立てない状態になっているはずです」
「っ……!」
どうりで腰が動かないと思っていたら……つまり私は、セオドア様に抱き潰されてしまっている状態、ということらしい。
私でもそんなことになるんだ……と、まるで他人事のように思いながら、ビックリ呆然としていたら──
一糸まとわぬ私の腰を、セオドア様が優しく撫でた。今度は目を合わせて、気遣うように見つめられる。反省している子犬のような表情に、私は思わず、言ってはいけないことを呟いてしまった。
「セオドア様、好きな人に触れられたくないなんて、思うことがあるんでしょうか……?」
途端、陰部に当たっているセオドア様のモノが大きくなった。
「ぁっ……」
どうしよう……とこちらが悩むまでもなく、セオドア様が額に手を当てて、何やら思い悩んでいる。こんな表情をするセオドア様を見るのは初めてだった。
*挿絵イラストはこちらの創作を依頼した時期などの関係で、胸元に十字架があって包帯がありませんが、あくまでイメージということで、
松田様の素敵なイラストを見ていただけましたら嬉しいです……!
*挿絵イラストは松田トキ様。無断転載禁止。
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