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本編
28 国取り
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シンフォルースに現在している聖女はアスベラ様を含め、五人。しかし年若いアスベラ様を除き、他の四人は既に引退している。そしていずれもが癒しの力を持つ正統でまっとうな聖女だ。私のように爆発したり、攻撃性の高い力を持つ聖女は一人もいない。
現役で唯一残っているアスベラ様以降、聖女は出現していないが、教会の権威は衰退するどころか増している。それはアスベラ様の力が千年の昔存在した、始まりの聖女リリアーナ様と同等の力、入れ替わりを持っているからだ。
元は人であったシンフォルースの現国王の魂を、聖女の力──入れ替わりにより、悪魔に魂を奪われた双子竜の片割れの遺骸へ移した聖女リリアーナ様。それと同等の力を身に宿したアスベラ様は、シンフォルースでも特別権威のある公爵家の跡取りで私の兄、リアードと恋仲でもあるのだ。
リアードの年齢は二十歳、アスベラ様は二十四歳。ユイリー様とスピアリング卿と同じ、女性の方が年上のカップルなのか……と、聞いた当初は驚きよりも、羨ましさの方が勝ってしまった。その二人が今、目の前にいる。
私はアスベラ様のお姿を奉仕活動のときに、何度が目にしていた。だから彼女が連れている相手が誰なのかも、彼女を見たときに、何となく気付いていた。
しかし思いがけない兄との再会に、懐かしさで目元を潤ませている場合ではないようだ。……何かがおかしい。アスベラ様に支えられているリアードは、半ば意識が無いようにも見えた。
怪我をしている……? 疑念に口を開こうとした瞬間──鈍い地響きが聞こえてきた。
「申し訳ございません! 今すぐ逃げてください!」
アスベラ様が叫んだのと、それが現れたのは殆ど同時だった。
────ズンッ
と響く轟音。
大地が揺れ、彼らの後ろに現れたのは……屋敷を丸ごと覆い尽くすような赤い巨体。この国の王、火竜リュイン・オールドレッド・リナーシェ・ド・シンフォルースの竜となった姿だった。
*
巨竜の軽い羽ばたきだけで爆風が巻き起こり、吹き飛ばされそうになる。
「どうして国王陛下がここに……?」
ユイリー様の呟きに、ハッとする。ユイリー様は身重の体。もう臨月なのに……私がお守りしなくては! と思っていたら……
「──大丈夫よ。絶対にあの人たちが来てくれるわ。あの二人、あんなにしょっちゅうドンぱちしてるけど、あれでなかなか仲いいんだから」
「仲よし?」
「ええ」
にっこり笑うユイリー様。しかしその励ましを嘲笑うように、目前にいる火竜の咆哮が夜闇に覆われた天空を貫き、その重厚な爪が大地を深く抉った。
咆哮に開かれた口腔の更に奥から、チリチリと沸き起こる赤い炎。マグマのように重く、鈍色の輝きをしていたそれが、徐々に熱と光を増して高まっていく。
竜の吐き出す炎は、一瞬で鉄を飴のように溶かす。直撃すれば、人間など跡形もなく消し去るだろう。
ユイリー様と私を守るように、強面のマッチョ執事が前に出た。
その陰にいながら、ふと地面を見ると……
「あ、アヒルちゃんっ!?」
地面でヒーローポーズを決めていたアヒルちゃんが、あろうことか巨竜に向かってせぇーのっ! で突撃しようとしていたので、「ちょっと待って!」と既の所で抱き上げギュッとする。
あ、危なかった……危うく、特別美味しそうな焼き鳥になるところだったわ……
といっても打つ手がない。炎って熱くなると色変わるのね……とか思うしかないとか、間抜けな最後だわ。セオドア様……最後に一目だけでもその美しい顔を見たかったな。
目を瞑り、胸元にモフモフを感じながら、祈るように手を組み合わせる。そうして祝詞を唱えようとしたとき、肩に触れる優しい感触に、私は顔を上げた。
「──エリカ、下がっていなさい」
「セオドア、様…………?」
私を庇って前に出たセオドア様の顔は見えないけれど、腰まである美しい銀髪が風に流れるその優美な姿は見間違えようがない。
本当に、来てくれた……! そして前方には、ユイリー様を抱き上げたスピアリング卿の姿があった。
「アルフレッド! ジェーン! お前たちはアスベラとリアードを頼む!」
「畏まりました!」
「お任せください旦那様!」
スピアリング卿の命令に、アルフレッドと呼ばれた体格の良い強面の執事と、スピアリング卿と同じ褐色の肌をしたメイドの女性、ジェーンが同時に声を上げた。
更には続々と、私たちの周りを囲うように集まる王城の兵士たち。そして──いつの間にか姿が見えなくなっていたシャノワール様が、兵士たちの間からちょこんと出てきた。
どうやらシャノワール様は、母親の危機を察してスピアリング卿を呼びに行ってくれたらしい。悟い子供だ。今はユイリー様を抱き上げたスピアリング卿について、一緒に後方へ下がっている。
「これを! 辛うじてこれだけは持ってこれました」
支えていたリアードをアルフレッドに任せて、アスベラ様が懐から取り出した物をスピアリング卿に差し出した。
乳白色に輝く、占い師が使うオーブのような玉を、スピアリング卿の代わりに胸元に抱えられているユイリー様が受け取った。
「あの、それは……?」
私の漏らした呟きに、スピアリング卿が答える。
「竜玉だ。本来の持ち主である遺骸の主──双竜の力の核となるものだが、亡くなった後も力を秘めている」
竜玉とは、竜の力の源となる竜の命そのもの。それを当然と話すスピアリング卿の、まるで何もかも知っていたかのような口調に、私はピンときた。どうやらまた、この方は裏で何やら画策していたらしい。
「先ほど遺骸とおっしゃっていましたが……では、あれは国王陛下ではないのですか?」
「無論だ。陛下が自国の民を傷付けるような真似をするものか」
悪魔に魂を奪われた双子竜の遺骸に、入れ替わりの力によって魂を移し人間から竜へと転化した、この国の起源となったシンフォルースの現国王、リュイン・オールドレッド・リナーシェ・ド・シンフォルース。
そして残された双子竜の片割れの遺骸は、今も尚、シンフォルースのどこかに眠っていると言われている。それは、シンフォルースに古くから伝わる伝承だった。
「竜玉を竜封じの魔道具として使用するため、王城から魔力のある者たちを呼び寄せた。もうじき到着する。それまでは……」
スピアリング卿が視線を移した。みんなを守るように先頭に立つ、セオドア様のその後ろ姿に、問い掛けるように向けられた視線──次いで、セオドア様が答えるように口を開いた。
「虎の……いえ、竜の威を借る狐と言ったところでしょうか」
再会の喜びに戦慄く唇で、いつものようにセオドア様に話し掛けようとして、気付いた。彼の瞳の色が本来の青から赤へと変わっている。
でもこれって、私が以前見たときと何か違う……
以前見たときの静かな輝きではない。血のように赤い、深紅に染まったセオドア様の瞳の色が、まるで命の炎を燃やしているように強く光輝いている。
本来の力の限界を超えて、力を放出しているような彼の双眸に息を呑む。それからみんなの登場ですっかり意識から抜けていた、前方の巨体に目を向けると──
「あれは……」
炎を吐き出す寸前で、巨竜の動きが止まっている。二つの赤い瞳だけがギョロギョロと動いて──ギロリと睨みつけるように、こちらに向けられた。途端、ゾッと全身に震えが起こった。思わず胸元に抱えているアヒルちゃんごと、セオドア様の腕に縋りつく。
セオドア様が魔眼で何とか巨竜の動きを止めてくれているようだ。
「……逃げなさい」
そう言って彼は──身を寄せていた私の体をそっと他方へと押した。
「セオドア様?」
拒絶、されている……? 驚いてセオドア様を見上げる。
「貴女のお気に入りの……人間のセオドアはもういないのですよ」
「……人間の、セオドア様がもういない……」
「貴女の出る幕ではありませんよ」
「まさか記憶が戻って……」
記憶が戻った本来のセオドア様は、十四年前と同じに私を拒絶した。
*
巨竜を抑え込んでいるセオドア様と王城の兵士たちを正面玄関に残し、私たちは一端屋敷の奥へと引っ込んでいた。
ユイリー様はお子様のシャノワール様と共に、屋敷の中でも一度安全な場所への避難を完了し。スピアリング卿は屋敷に集結しつつある、各地から派遣されてきたシンフォルース中の兵士たちとの連携に奔走している。
アスベラ様に支えられてやってきた兄のリアードは、ひとまず別屋で休んでいる。今、屋敷の大広間にいるのは、扉の外で見張りをしている兵を除き、私とアスベラ様の二人だけだ。
「アスベラ様、いったい何があったのですか?」
ここまで来たらどんな事情があれ、何を聞いても許されるだろう。否、それが兄も関わっていることならば、私は知らなければならないと思った。
改まって聞く私に、アスベラ様は少しの逡巡を見せた後、意を決したように強い目を見せた。そしてゆっくりと話し始めた。
「──始まりは、私の父……ローツェルルツの国王から来た手紙でした」
父王から届けられた突然の書状。その内容はローツェルルツ復興のため、国の権威を取り戻すために、力を貸してほしいと書かれていた。
けれど、徐々に荒れ果てていく故国と強権を振るう父王に見切りをつけて、移民として亡命してきたアスベラ様を、ローツェルルツの王女と知りながら受け入れてくれたシンフォルースの国王を裏切ることはできない。
そうして故国復興を唱える父王の説得に耐えて、アスベラ様は断り続けた。──が、しかしそんなある日、それは起こった。
シンフォルースの右腕と称された重臣、ユイリー様の父親であるフィリスティア卿を殺めた姉のイヴリンを、幽閉されていた牢獄から連れ去り、更には人質として父王自らがアスベラ様の前に現れたのだ。
姉の命を人質にとられてしまったアスベラ様は、やむなく教会の地下に安置されていた双子竜の遺骸へと案内してしまった。
けれど竜の遺骸への魂の入れ替わりを目論む父王の計画は、恋人の不審に勘付いたリアードによってセオドア様へ報告され、国王陛下の知るところとなったのだが、
国王陛下とセオドア様、そしてリアードが教会の地下へ辿り着き、止めに入ったときには既に、魂の入れ替わりは行われた後だった。
竜の遺骸を乗っ取り、荒ぶる父王にイヴリンは殺され、セオドア様は国王陛下を庇い負傷した。惨状に、正気を取り戻したアスベラ様が聖女の力を使って父王の魂を縛っている間に、国王陛下が巨竜の体を教会の地下に封印することに成功したのだが、そのときリアードも一緒に封印に巻き込まれてしまった。
それが、今回セオドア様が孤児院の門戸に倒れていた事の顛末であると、アスベラ様は感情のこもらない声で静かに話し終えた。
おそらく感情を圧し殺しているのだろうアスベラ様の表情は昏い。
「ですので、あの竜の体に入っているのは国王陛下ではありません。ローツェルルツの国王である私の父です」
「それではローツェルルツの国王が逝去したというのは……本当ではないのですか?」
「……はい、けれど竜の体を手に入れてしまった父は、竜の体に残った生前の本能に乗っ取られてしまっている。人語を話す知性も失われて、話し合いによる解決は最早不可能でしょう」
「イヴリン王女が獄中死したという噂を流したのは……」
「それもこれも、全ては私と私の父王がしたこと……お侘びのしようがありません」
言うなり、アスベラ様が床に膝をつき、頭を垂れた。
「アスベラ様……」
彼女の前に私も膝をつき、手を差し出す。少し気力を取り戻したアスベラ様が立ち上がるのを見守る。
「それも国王陛下は今、回復を待って場を離脱していらっしゃいます」
「それって……国王陛下はどこか負傷されたと言うことですか? そのためにシンフォルースを離れたと?」
「はい……」
スピアリング卿が魔力のある者を王城から大勢呼び寄せたのが間に合って、竜玉による抑制と、セオドア様の魔眼で今は何とかもっている。しかしそれも何時までもつか……しかし、頼みの綱の国王陛下が回復しなければ、もう後がないという事だった。
アスベラ様は今まで、封印を守っている陛下に代わり、スピアリング卿へ伝言を届けていたそうだ。しかし全てを話すには、スピアリング卿はローツェルルツと関わりを深く持ちすぎている。私情に走り無茶をやりかねない可能性を懸念し、あえて伏せられていたのだが、
スピアリング卿は、国王陛下からの勅命が全てアスベラ様から介して行われている不審に、何が起こっているのか、薄々勘付いていた。
そこで、全てを知るにはセオドア様の記憶を戻すしかないと、スピアリング卿は考えたようで……。結果、私はセオドア様と体の関係を持つことになったのだが、
実は、セオドア様は私と体の関係を持った後に、記憶を取り戻していたらしく……スピアリング卿との書簡によるやり取り以外でも、アスベラ様にこっそり会って話をしていたそうだ。
だからスピアリング卿がアスベラ様の説明を受けずに今動けるのだと、アスベラ様から説明を頂いた私は……暫く開いた口が塞がらなかった。
オマケに、「貴女には必要最低限の情報しか与えていなかったから混乱させて悪いが、とりあえずアスベラと二人でここで大人しくしていてくれ」等と、スピアリング卿に釘を刺されて、大広間にアスベラ様と置いてけぼりを食らったのは、つい先ほどのこと。
アヒルちゃんもスピアリング卿の後にテケテケついて行っちゃうし……
それにしても、セオドア様は記憶を取り戻していたなら、何故私を受け入れ続けてくれたのだろうか……記憶が戻っていない振りまでして……
セオドア様は、『貴女のお気に入りの……人間のセオドアはもういないのですよ』と言っていた。本当にもう、私たちの関係は、完全に終わってしまったのだろうか……
スピアリング卿はそれまでは教えてくれなかった。どうやら本人に直接聞けと言うことらしい。こちらは混乱と不安ばかりが募っているというのに。
「あの、私はスピアリング卿から国王陛下は国境付近の視察に向かわれたと聞いていたのですが、それはいったい……?」
「国王不在を気付かれないための、陛下のご指示です。そしてローツェルルツの更なる武力による制圧を止めるための、抑止力でもありました。今となってはもう手遅れですが……」
「手遅れ? それに更なる武力による制圧とは……アスベラ様、いったいどういうことなのでしょうか?」
問いかけに、途端、アスベラ様の体が小刻みに震えたのが分かった。緊張に瞬く私に、彼女は心して聞くようにと、私の手を強く握った。
「シンフォルースに亡命して来た移民たちの殆どが、市民ではない。ということです」
「市民ではない? ではいったい、彼らは何だと言うのですか……?」
「ローツェルルツの国王は大量に傭兵を雇い入れたそうです。そして、移民に紛れてシンフォルースの内から侵略を開始すると……」
「内から侵略……でも財政難で破綻したローツェルルツにどうやって傭兵を雇うお金が…………まさか……」
恐ろしい考えに辿り着いてしまった。
ローツェルルツにはない。けれど、その代わりとなるモノなら、確かにあるではないか。今、目の前に。
「どうやら気付かれたようですね」
「……でも、そんなことが現実に有りうるのでしょうか……」
「私もそれを始めに陛下からお聞きしたときは、耳を疑いました。けれど、今それが実際に起こっている」
「アスベラ様……」
ガタガタと体が頽れそうになる。
「ローツェルルツの国王が用意した傭兵への報酬は……シンフォルースへの永住権。そして、シンフォルースの財と民そのものです。暴徒と化したローツェルルツの民を装う傭兵によって、教会の地下は占領され、そのため陛下は封印を維持できなくなりました」
「暴徒…………それでは町の人々は。院長先生たちは……」
「今まさに、シンフォルースは戦場と化しているのです」
戦慄に、全身が雷に打たれたような衝撃を受けた。アスベラ様に掴まれている手にも震えが走る。
「……ローツェルルツの国が崩壊したと、それ自体が嘘だったということなのですか!」
「はい、ローツェルルツは滅びてなどいない。これは……父と民が一丸となって行う国取りです」
「っ!」
シンフォルースそのものを乗っ取るための、移民流出。規模が違いすぎる。ローツェルルツの国王は、シンフォルースそのものを奪い取り、シンフォルースの民を奴隷とし、自らの民と入れ替えるつもりなのだ。シンフォルースの国王として、自らが成り代わるために!
「いわばこれは、国の入れ替わり。しかし姉のイヴリンは、最後まで父を説得しておりました。自国を捨て、そのような行いが許されるはずはないと、……しかし姉は殺されてしまった……」
シンフォルース侵攻を開始した父王へイヴリンが向けた制止を振り切り、彼はイヴリンを殺した。そして、ローツェルルツの民たちの心を怒りに染めるための手段として、その死を利用したのだ。シンフォルースへの揺るぎない復讐心。その楔を打ち込むことで、計画は完成した。
これでようやく合点がいった。セオドア様が何故、私の前に負傷して現れたのか。巨竜の一撃を食らい、ローツェルルツの民に成り済ました傭兵たちの襲撃に更なる傷を負って、それでも私の元へやって来たのは……
「だからセオドア様は……あんなに怪我をされていたのに、私の前に現れたのですね……私がリアードの妹だと敵に知れれば、次に狙われるのは私だと気付いて……」
アスベラ様の恋人であるリアードの妹を手に入れれば、封印を解く絶好の機会を得られるかもしれないと、敵ならばそう思うだろう。
「だからこそ、貴女を守ることはこの国を守る要でした。しかし封印は解かれてしまった」
そして封印が解かれたことで、巨竜と一緒にリアードも解放されたが消耗が激しく、また国王陛下に至っては……暴徒化した傭兵により手傷を負い、封印のために力を半ば使い果たしてしまっているそうだ。
「……そんな相手にセオドア様は……いったいあと、どのくらいもつのでしょうか……?」
「国王陛下の回復までの時間が稼げればいいのですが……竜玉の力と合わせても、セオドア様の力はもって数時間と言ったところでしょう」
「そんなっ!」
「国王陛下が回復されなければ、シンフォルースは伝説の巨竜に滅ぼされることになります」
それは、国の終わりを意味していた。
「私では父を止めることができなかった……」
姉を失い、父王を狂わせた巨竜。そのどちらを思ってなのか、アスベラ様の震える声が、寂しく大広間に響いた。
現役で唯一残っているアスベラ様以降、聖女は出現していないが、教会の権威は衰退するどころか増している。それはアスベラ様の力が千年の昔存在した、始まりの聖女リリアーナ様と同等の力、入れ替わりを持っているからだ。
元は人であったシンフォルースの現国王の魂を、聖女の力──入れ替わりにより、悪魔に魂を奪われた双子竜の片割れの遺骸へ移した聖女リリアーナ様。それと同等の力を身に宿したアスベラ様は、シンフォルースでも特別権威のある公爵家の跡取りで私の兄、リアードと恋仲でもあるのだ。
リアードの年齢は二十歳、アスベラ様は二十四歳。ユイリー様とスピアリング卿と同じ、女性の方が年上のカップルなのか……と、聞いた当初は驚きよりも、羨ましさの方が勝ってしまった。その二人が今、目の前にいる。
私はアスベラ様のお姿を奉仕活動のときに、何度が目にしていた。だから彼女が連れている相手が誰なのかも、彼女を見たときに、何となく気付いていた。
しかし思いがけない兄との再会に、懐かしさで目元を潤ませている場合ではないようだ。……何かがおかしい。アスベラ様に支えられているリアードは、半ば意識が無いようにも見えた。
怪我をしている……? 疑念に口を開こうとした瞬間──鈍い地響きが聞こえてきた。
「申し訳ございません! 今すぐ逃げてください!」
アスベラ様が叫んだのと、それが現れたのは殆ど同時だった。
────ズンッ
と響く轟音。
大地が揺れ、彼らの後ろに現れたのは……屋敷を丸ごと覆い尽くすような赤い巨体。この国の王、火竜リュイン・オールドレッド・リナーシェ・ド・シンフォルースの竜となった姿だった。
*
巨竜の軽い羽ばたきだけで爆風が巻き起こり、吹き飛ばされそうになる。
「どうして国王陛下がここに……?」
ユイリー様の呟きに、ハッとする。ユイリー様は身重の体。もう臨月なのに……私がお守りしなくては! と思っていたら……
「──大丈夫よ。絶対にあの人たちが来てくれるわ。あの二人、あんなにしょっちゅうドンぱちしてるけど、あれでなかなか仲いいんだから」
「仲よし?」
「ええ」
にっこり笑うユイリー様。しかしその励ましを嘲笑うように、目前にいる火竜の咆哮が夜闇に覆われた天空を貫き、その重厚な爪が大地を深く抉った。
咆哮に開かれた口腔の更に奥から、チリチリと沸き起こる赤い炎。マグマのように重く、鈍色の輝きをしていたそれが、徐々に熱と光を増して高まっていく。
竜の吐き出す炎は、一瞬で鉄を飴のように溶かす。直撃すれば、人間など跡形もなく消し去るだろう。
ユイリー様と私を守るように、強面のマッチョ執事が前に出た。
その陰にいながら、ふと地面を見ると……
「あ、アヒルちゃんっ!?」
地面でヒーローポーズを決めていたアヒルちゃんが、あろうことか巨竜に向かってせぇーのっ! で突撃しようとしていたので、「ちょっと待って!」と既の所で抱き上げギュッとする。
あ、危なかった……危うく、特別美味しそうな焼き鳥になるところだったわ……
といっても打つ手がない。炎って熱くなると色変わるのね……とか思うしかないとか、間抜けな最後だわ。セオドア様……最後に一目だけでもその美しい顔を見たかったな。
目を瞑り、胸元にモフモフを感じながら、祈るように手を組み合わせる。そうして祝詞を唱えようとしたとき、肩に触れる優しい感触に、私は顔を上げた。
「──エリカ、下がっていなさい」
「セオドア、様…………?」
私を庇って前に出たセオドア様の顔は見えないけれど、腰まである美しい銀髪が風に流れるその優美な姿は見間違えようがない。
本当に、来てくれた……! そして前方には、ユイリー様を抱き上げたスピアリング卿の姿があった。
「アルフレッド! ジェーン! お前たちはアスベラとリアードを頼む!」
「畏まりました!」
「お任せください旦那様!」
スピアリング卿の命令に、アルフレッドと呼ばれた体格の良い強面の執事と、スピアリング卿と同じ褐色の肌をしたメイドの女性、ジェーンが同時に声を上げた。
更には続々と、私たちの周りを囲うように集まる王城の兵士たち。そして──いつの間にか姿が見えなくなっていたシャノワール様が、兵士たちの間からちょこんと出てきた。
どうやらシャノワール様は、母親の危機を察してスピアリング卿を呼びに行ってくれたらしい。悟い子供だ。今はユイリー様を抱き上げたスピアリング卿について、一緒に後方へ下がっている。
「これを! 辛うじてこれだけは持ってこれました」
支えていたリアードをアルフレッドに任せて、アスベラ様が懐から取り出した物をスピアリング卿に差し出した。
乳白色に輝く、占い師が使うオーブのような玉を、スピアリング卿の代わりに胸元に抱えられているユイリー様が受け取った。
「あの、それは……?」
私の漏らした呟きに、スピアリング卿が答える。
「竜玉だ。本来の持ち主である遺骸の主──双竜の力の核となるものだが、亡くなった後も力を秘めている」
竜玉とは、竜の力の源となる竜の命そのもの。それを当然と話すスピアリング卿の、まるで何もかも知っていたかのような口調に、私はピンときた。どうやらまた、この方は裏で何やら画策していたらしい。
「先ほど遺骸とおっしゃっていましたが……では、あれは国王陛下ではないのですか?」
「無論だ。陛下が自国の民を傷付けるような真似をするものか」
悪魔に魂を奪われた双子竜の遺骸に、入れ替わりの力によって魂を移し人間から竜へと転化した、この国の起源となったシンフォルースの現国王、リュイン・オールドレッド・リナーシェ・ド・シンフォルース。
そして残された双子竜の片割れの遺骸は、今も尚、シンフォルースのどこかに眠っていると言われている。それは、シンフォルースに古くから伝わる伝承だった。
「竜玉を竜封じの魔道具として使用するため、王城から魔力のある者たちを呼び寄せた。もうじき到着する。それまでは……」
スピアリング卿が視線を移した。みんなを守るように先頭に立つ、セオドア様のその後ろ姿に、問い掛けるように向けられた視線──次いで、セオドア様が答えるように口を開いた。
「虎の……いえ、竜の威を借る狐と言ったところでしょうか」
再会の喜びに戦慄く唇で、いつものようにセオドア様に話し掛けようとして、気付いた。彼の瞳の色が本来の青から赤へと変わっている。
でもこれって、私が以前見たときと何か違う……
以前見たときの静かな輝きではない。血のように赤い、深紅に染まったセオドア様の瞳の色が、まるで命の炎を燃やしているように強く光輝いている。
本来の力の限界を超えて、力を放出しているような彼の双眸に息を呑む。それからみんなの登場ですっかり意識から抜けていた、前方の巨体に目を向けると──
「あれは……」
炎を吐き出す寸前で、巨竜の動きが止まっている。二つの赤い瞳だけがギョロギョロと動いて──ギロリと睨みつけるように、こちらに向けられた。途端、ゾッと全身に震えが起こった。思わず胸元に抱えているアヒルちゃんごと、セオドア様の腕に縋りつく。
セオドア様が魔眼で何とか巨竜の動きを止めてくれているようだ。
「……逃げなさい」
そう言って彼は──身を寄せていた私の体をそっと他方へと押した。
「セオドア様?」
拒絶、されている……? 驚いてセオドア様を見上げる。
「貴女のお気に入りの……人間のセオドアはもういないのですよ」
「……人間の、セオドア様がもういない……」
「貴女の出る幕ではありませんよ」
「まさか記憶が戻って……」
記憶が戻った本来のセオドア様は、十四年前と同じに私を拒絶した。
*
巨竜を抑え込んでいるセオドア様と王城の兵士たちを正面玄関に残し、私たちは一端屋敷の奥へと引っ込んでいた。
ユイリー様はお子様のシャノワール様と共に、屋敷の中でも一度安全な場所への避難を完了し。スピアリング卿は屋敷に集結しつつある、各地から派遣されてきたシンフォルース中の兵士たちとの連携に奔走している。
アスベラ様に支えられてやってきた兄のリアードは、ひとまず別屋で休んでいる。今、屋敷の大広間にいるのは、扉の外で見張りをしている兵を除き、私とアスベラ様の二人だけだ。
「アスベラ様、いったい何があったのですか?」
ここまで来たらどんな事情があれ、何を聞いても許されるだろう。否、それが兄も関わっていることならば、私は知らなければならないと思った。
改まって聞く私に、アスベラ様は少しの逡巡を見せた後、意を決したように強い目を見せた。そしてゆっくりと話し始めた。
「──始まりは、私の父……ローツェルルツの国王から来た手紙でした」
父王から届けられた突然の書状。その内容はローツェルルツ復興のため、国の権威を取り戻すために、力を貸してほしいと書かれていた。
けれど、徐々に荒れ果てていく故国と強権を振るう父王に見切りをつけて、移民として亡命してきたアスベラ様を、ローツェルルツの王女と知りながら受け入れてくれたシンフォルースの国王を裏切ることはできない。
そうして故国復興を唱える父王の説得に耐えて、アスベラ様は断り続けた。──が、しかしそんなある日、それは起こった。
シンフォルースの右腕と称された重臣、ユイリー様の父親であるフィリスティア卿を殺めた姉のイヴリンを、幽閉されていた牢獄から連れ去り、更には人質として父王自らがアスベラ様の前に現れたのだ。
姉の命を人質にとられてしまったアスベラ様は、やむなく教会の地下に安置されていた双子竜の遺骸へと案内してしまった。
けれど竜の遺骸への魂の入れ替わりを目論む父王の計画は、恋人の不審に勘付いたリアードによってセオドア様へ報告され、国王陛下の知るところとなったのだが、
国王陛下とセオドア様、そしてリアードが教会の地下へ辿り着き、止めに入ったときには既に、魂の入れ替わりは行われた後だった。
竜の遺骸を乗っ取り、荒ぶる父王にイヴリンは殺され、セオドア様は国王陛下を庇い負傷した。惨状に、正気を取り戻したアスベラ様が聖女の力を使って父王の魂を縛っている間に、国王陛下が巨竜の体を教会の地下に封印することに成功したのだが、そのときリアードも一緒に封印に巻き込まれてしまった。
それが、今回セオドア様が孤児院の門戸に倒れていた事の顛末であると、アスベラ様は感情のこもらない声で静かに話し終えた。
おそらく感情を圧し殺しているのだろうアスベラ様の表情は昏い。
「ですので、あの竜の体に入っているのは国王陛下ではありません。ローツェルルツの国王である私の父です」
「それではローツェルルツの国王が逝去したというのは……本当ではないのですか?」
「……はい、けれど竜の体を手に入れてしまった父は、竜の体に残った生前の本能に乗っ取られてしまっている。人語を話す知性も失われて、話し合いによる解決は最早不可能でしょう」
「イヴリン王女が獄中死したという噂を流したのは……」
「それもこれも、全ては私と私の父王がしたこと……お侘びのしようがありません」
言うなり、アスベラ様が床に膝をつき、頭を垂れた。
「アスベラ様……」
彼女の前に私も膝をつき、手を差し出す。少し気力を取り戻したアスベラ様が立ち上がるのを見守る。
「それも国王陛下は今、回復を待って場を離脱していらっしゃいます」
「それって……国王陛下はどこか負傷されたと言うことですか? そのためにシンフォルースを離れたと?」
「はい……」
スピアリング卿が魔力のある者を王城から大勢呼び寄せたのが間に合って、竜玉による抑制と、セオドア様の魔眼で今は何とかもっている。しかしそれも何時までもつか……しかし、頼みの綱の国王陛下が回復しなければ、もう後がないという事だった。
アスベラ様は今まで、封印を守っている陛下に代わり、スピアリング卿へ伝言を届けていたそうだ。しかし全てを話すには、スピアリング卿はローツェルルツと関わりを深く持ちすぎている。私情に走り無茶をやりかねない可能性を懸念し、あえて伏せられていたのだが、
スピアリング卿は、国王陛下からの勅命が全てアスベラ様から介して行われている不審に、何が起こっているのか、薄々勘付いていた。
そこで、全てを知るにはセオドア様の記憶を戻すしかないと、スピアリング卿は考えたようで……。結果、私はセオドア様と体の関係を持つことになったのだが、
実は、セオドア様は私と体の関係を持った後に、記憶を取り戻していたらしく……スピアリング卿との書簡によるやり取り以外でも、アスベラ様にこっそり会って話をしていたそうだ。
だからスピアリング卿がアスベラ様の説明を受けずに今動けるのだと、アスベラ様から説明を頂いた私は……暫く開いた口が塞がらなかった。
オマケに、「貴女には必要最低限の情報しか与えていなかったから混乱させて悪いが、とりあえずアスベラと二人でここで大人しくしていてくれ」等と、スピアリング卿に釘を刺されて、大広間にアスベラ様と置いてけぼりを食らったのは、つい先ほどのこと。
アヒルちゃんもスピアリング卿の後にテケテケついて行っちゃうし……
それにしても、セオドア様は記憶を取り戻していたなら、何故私を受け入れ続けてくれたのだろうか……記憶が戻っていない振りまでして……
セオドア様は、『貴女のお気に入りの……人間のセオドアはもういないのですよ』と言っていた。本当にもう、私たちの関係は、完全に終わってしまったのだろうか……
スピアリング卿はそれまでは教えてくれなかった。どうやら本人に直接聞けと言うことらしい。こちらは混乱と不安ばかりが募っているというのに。
「あの、私はスピアリング卿から国王陛下は国境付近の視察に向かわれたと聞いていたのですが、それはいったい……?」
「国王不在を気付かれないための、陛下のご指示です。そしてローツェルルツの更なる武力による制圧を止めるための、抑止力でもありました。今となってはもう手遅れですが……」
「手遅れ? それに更なる武力による制圧とは……アスベラ様、いったいどういうことなのでしょうか?」
問いかけに、途端、アスベラ様の体が小刻みに震えたのが分かった。緊張に瞬く私に、彼女は心して聞くようにと、私の手を強く握った。
「シンフォルースに亡命して来た移民たちの殆どが、市民ではない。ということです」
「市民ではない? ではいったい、彼らは何だと言うのですか……?」
「ローツェルルツの国王は大量に傭兵を雇い入れたそうです。そして、移民に紛れてシンフォルースの内から侵略を開始すると……」
「内から侵略……でも財政難で破綻したローツェルルツにどうやって傭兵を雇うお金が…………まさか……」
恐ろしい考えに辿り着いてしまった。
ローツェルルツにはない。けれど、その代わりとなるモノなら、確かにあるではないか。今、目の前に。
「どうやら気付かれたようですね」
「……でも、そんなことが現実に有りうるのでしょうか……」
「私もそれを始めに陛下からお聞きしたときは、耳を疑いました。けれど、今それが実際に起こっている」
「アスベラ様……」
ガタガタと体が頽れそうになる。
「ローツェルルツの国王が用意した傭兵への報酬は……シンフォルースへの永住権。そして、シンフォルースの財と民そのものです。暴徒と化したローツェルルツの民を装う傭兵によって、教会の地下は占領され、そのため陛下は封印を維持できなくなりました」
「暴徒…………それでは町の人々は。院長先生たちは……」
「今まさに、シンフォルースは戦場と化しているのです」
戦慄に、全身が雷に打たれたような衝撃を受けた。アスベラ様に掴まれている手にも震えが走る。
「……ローツェルルツの国が崩壊したと、それ自体が嘘だったということなのですか!」
「はい、ローツェルルツは滅びてなどいない。これは……父と民が一丸となって行う国取りです」
「っ!」
シンフォルースそのものを乗っ取るための、移民流出。規模が違いすぎる。ローツェルルツの国王は、シンフォルースそのものを奪い取り、シンフォルースの民を奴隷とし、自らの民と入れ替えるつもりなのだ。シンフォルースの国王として、自らが成り代わるために!
「いわばこれは、国の入れ替わり。しかし姉のイヴリンは、最後まで父を説得しておりました。自国を捨て、そのような行いが許されるはずはないと、……しかし姉は殺されてしまった……」
シンフォルース侵攻を開始した父王へイヴリンが向けた制止を振り切り、彼はイヴリンを殺した。そして、ローツェルルツの民たちの心を怒りに染めるための手段として、その死を利用したのだ。シンフォルースへの揺るぎない復讐心。その楔を打ち込むことで、計画は完成した。
これでようやく合点がいった。セオドア様が何故、私の前に負傷して現れたのか。巨竜の一撃を食らい、ローツェルルツの民に成り済ました傭兵たちの襲撃に更なる傷を負って、それでも私の元へやって来たのは……
「だからセオドア様は……あんなに怪我をされていたのに、私の前に現れたのですね……私がリアードの妹だと敵に知れれば、次に狙われるのは私だと気付いて……」
アスベラ様の恋人であるリアードの妹を手に入れれば、封印を解く絶好の機会を得られるかもしれないと、敵ならばそう思うだろう。
「だからこそ、貴女を守ることはこの国を守る要でした。しかし封印は解かれてしまった」
そして封印が解かれたことで、巨竜と一緒にリアードも解放されたが消耗が激しく、また国王陛下に至っては……暴徒化した傭兵により手傷を負い、封印のために力を半ば使い果たしてしまっているそうだ。
「……そんな相手にセオドア様は……いったいあと、どのくらいもつのでしょうか……?」
「国王陛下の回復までの時間が稼げればいいのですが……竜玉の力と合わせても、セオドア様の力はもって数時間と言ったところでしょう」
「そんなっ!」
「国王陛下が回復されなければ、シンフォルースは伝説の巨竜に滅ぼされることになります」
それは、国の終わりを意味していた。
「私では父を止めることができなかった……」
姉を失い、父王を狂わせた巨竜。そのどちらを思ってなのか、アスベラ様の震える声が、寂しく大広間に響いた。
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