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第二章~恋人扱編~

♂039 逃げない確信

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 あれから数刻すうこく立つ間もずっと、私はフェルディナンの巨大なモノを両足の太腿ふとももはさみ込んで、秘所をえずこすり上げられながらベッドの上でつんいにさせられていた。

「あっ、あつ、ぃ……もう、やぁっ」

 フェルディナンのモノが秘所にじかに触れている。あまりにも熱くて巨大な凶器のかたまりにも見えるそれを挿入こそしてはいないものの、フェルディナンは容赦なく私の秘所へとじかに押し当てて突き上げるようにして後ろから激しく腰を動かし続けていた。そして私は私の身体から流れ出る愛液にまみれていくそれを、太腿ふとももの間にくわえ込みながらひたすら鳴き続けていた。

「――良い声で鳴くようになってきたな」
「そんな、の……あっ……いわな、……で……」

 私の腹部はモノから放出された沢山の白い液体によごされている。逃げ出せないように汗ばんだ手で強く腰をつかまれて、フェルディナンの動きに合わせて強く引き寄せられる。あれからずっと腰を動かし続けているフェルディナンの汗と、その欲情を受け止め続けている私の汗が混ざり合って互いの肌をらしていく。じかに密着している肌の心地よさと熱さに酔いながら、私はシーツを握り締めてひたすらフェルディナンの行為に耐えていた。

 フェルディナンのモノは私の中に直接入れられてはいない。確かにフェルディナンは言っていた通り最後まで抱いてはいないけれど、抱かれているも同然のような行為に息が続かない。グチュッと音を立てながら花弁をこすり上げて、そこから流れるように出てきた愛液にモノをらしてすべりをよくさせながら、フェルディナンは後ろから強く突き上げ続けている。その場所から卑猥ひわいな水音を立てる行為を一向いっこうに止めようとしない。

「……はふっ……はっ……あっ」

 フェルディナンから与えられる熱さに悲鳴のようなあえぎ声を上げていると、フェルディナンが背中に唇を落としてきた。私の腰をつかんでいた手を抱きしめるように胸元へと回して、私の胸をその武骨ぶこつな指先で強くみしだきながら体重を掛けられる。その重さに耐え切れなくて私はベッドの上でつんいにさせられていた体を崩してベッドに突っ伏しそうになってしまう。
 そうして崩れ落ちていく私の身体をフェルディナンは自身の方へと強く引き寄せた。フェルディナンのモノを股間の根元にくわえ込んだまま、今度は上半身を起こされて後ろから抱きしめられる形で彼のひざの上に座らせられてしまった。

「フェル、ディナン……?」
「まだ……」

 私の首筋に顔を埋めながら耳元でささやかれる低音に、感じやすくなっていた身体が変に反応してしまいそうになる。そのくすぐったさに目をまばたかせていると、今度は耳を甘噛あまがみされてしまう。

「……っ!」

 私の耳に唇をわせながらフェルディナンは思いもよらないことを口にした。

「まだ最後までは君を抱かない」

 このまま抱かれてしまってもおかしくはない状況で自分自身をいましめるように発せられたフェルディナンの言葉に、私は驚きに大きく目を見開いてフェルディナンを見上げてしまった。

「……えっ?」

 見上げた私と目を合わせてフェルディナンはその紫混じった青い宝石のような瞳を真っ直ぐに向けてくる。彼はずっと抱え込んでいた欲望をこの数刻すうこくの間ずっと私にぶつけ続けていた。だからその分少しだけ正気を取り戻している。何時いつもの口調に今のところは戻っているけれど、それも多分一時いっときの事だろう。
 一連の行為によって体温が高くなっているフェルディナンの熱を背中越しに感じながら、その肌のぬくもりに少しだけ安心して私は彼のたくましい胸元にそっと身を預けた。

「どうして? 私……その、……もう逃げない、よ?」

 い、いまのところはですけど……
 
 これからも逃げない確信があるわけではないのでどうしても歯切れが悪くなる。もうほとんど抱いているも同然の状態でいるのに、どうしてその先に進もうとしないのか不思議で。小休憩といった様子で動きを止めたフェルディナンを見上げながら問いかけた。

「逃げない、か……」
 
 今迄どれだけフェルディナンから逃げ続けていたのかを、フェルディナンの色っぽいつぶやき声からひしひしと感じてしまう。そしてそれのせいでフェルディナンに妙な捕獲癖を付けさせてしまった身としてはこれ以上何も言えなかった。

「今のところは、だろう?」
「……っ!?」

 フェルディナンはくつくつと楽しそうに笑いながらあきれたようにこちらを見ている。何を考えているのかなんて全てお見通しだと言われているような気がして凍り付いてしまう。

 うっ、全部ばれている……

 フェルディナンは私とそういう行為にいたる時はまず完全に逃げ道を断つ。でもそうするようにさせてしまったのは他ならぬ自分自身だった。

「あのね、フェルディナン。その、ですね。何か誤解があるようなのですが……」
「誤解? それはどういう事を言うのかな?」

 くすくすと楽しそうにフェルディナンは笑っている。そして一方の私はというと大柄で強靭きょうじんな肉体にガッチリとつかまれ……包まれていて今も捕獲された状態のまま身動きが取れない。手慣れた様子で私を捕獲しているこの状態からさっするに、どう考えてもフェルディナンが私のことを信用していないのは明らかだった。

「フェルディナン全然私を信用してないですよね……?」
「信用――してほしいのか?」

 そう言いながらフェルディナンは私の太腿をつかんで大きく開かせると、そのままモノを私の秘所に強くこすり合わせながらしごき始めた。

「あ……っ!」 
「君を抱くのは俺が正気の時だ。そうしないと君を壊してしまいそうだからな」

 少しだけ微睡まどろむような表情を含んだ笑みを浮かべながら、フェルディナンは我慢が出来なくなったようで更に強く私の秘所にその巨大なモノをり付けて来る。

「きゃあっ! まっ、……まだまっ……て!」

 突如とつじょ再開された行為に思考が追い付かない。

「君にはこの状態で生殖時期せいしょくじきが終わるまで付き合ってもらうことになるが」
「終わるまで、って、……これから……一週間ずっとっ!?」

 行為の最中さいちゅうなのにそれよりも驚きの方が上回って鮮明な声が出てしまった。

「駄目か?」
「…………」

 フェルディナンにキョトンとした顔で返されて答えに詰まってしまう。普段は大人の表情しかみせてくれないフェルディナンが今はとても幼い子供のような顔をして私の答えを待っている。断られることに慣れていない純粋な反応にこちらの方が戸惑ってしまう。
 
 この人ってどうしてこう、時々反応が子犬みたいに可愛くなるの……

「月瑠?」
「……じゃ……な……」
「今何て言ったんだ?」
「だ……ぃ……」
「聞こえない。月瑠?」
「…………」
 
 フェルディナンが相手ならそういう行為を強要されても少しも嫌じゃなくなってきている。そんな自分の気持ちが恥ずかしくて蚊の鳴くような声で返事を返したけれど、やっぱりフェルディナンには届かない。

「月瑠? どうしたんだ?」

 もうこれ以上言葉にすることが出来なくなって最後には完全に口を閉ざしてしまった私に、フェルディナンは行為を中断して互いに向き合う恰好へと私を抱え直した。もう出会ったばかりの頃とは違う――子供扱いのなぐさめではなく、恋人として私と向き合うフェルディナンのうれいを帯びた瞳が綺麗過ぎて直視出来ない。

「どうして俺を見ない?」
  
 互いに裸のままフェルディナンの部屋のベッドで素肌を触れ合わせていられる位には慣れたはずだったのに。肝心かんじんのところで緊張してしまうのはどうしてだろう。

「フェルディナン……その、お願いしたいことがあるの」
「何だ?」
「私達……もう少しだけ身体を離したりとか、出来ないかな?」
 
 距離を置けば言えるかもしれない。

「……何の冗談だ?」

 そう言ってフェルディナンは互いの局部をり付けるようにして、強く抱きしめながらのぞき込むように視線を合わせてくる。また逃げ出す算段さんだんでも立てているのかと私はフェルディナンに疑われていた。

「……やっ……っ」

 フェルディナンの太くたくましい腕の中で小さく身動みじろぎすると益々ますます強く抱き寄せられてしまう。このまま無言を通しても最後はきっとフェルディナンに顔を向けるように強制させられることになる。でもどうしてもフェルディナンの顔を見ながら返事をすることが出来ないから、私は彼の耳元に唇を近づけてやっとの思いで口を開いた。

「だめじゃ、ない……だから離して……」
 
 これ以上一緒にくっ付いていたら緊張でおかしくなりそうだ。フェルディナンの胸元を押しやって離れようとすると逆に両手をつかまれてベッドの上に押し倒されてしまった。優しく手をつながれて指をからめとられる。
 
「その返事を聞いて離せる男がいるわけがない」

 フェルディナンの重みを全身に感じながら触れ合う肌の心地よさと、彼から与えられる熱に徐々に心を許してしまう。酷く穏やかな表情を浮かべながらゆっくりと優しく再開される行為に私は抵抗することなく身をゆだねた。



******* 



 行為が続いて大分だいぶフェルディナンの正気が戻ってきた四日目の夜、私はフェルディナンの部屋でシーツを身体に巻き付けただけの恰好で、フェルディナンが戻って来るのを待っていた。ふかふかなベッドの上で呑気のんきにゴロゴロ転がっていると扉の開く音がした。ベッドで横になりながら手をうーんと伸ばして扉の方へ顔だけを向ける。

「おかえりなさい――って、またそんな恰好で出歩いてたんですか? 部屋を出た時はちゃんと上に羽織はおってたのに」
「あれはどうにも暑苦しい」
「暑苦しいって……もうっ! だからって途中で脱いじゃったんですか?」

 飲み物を乗せたトレーを片手にすぐ隣までやってきたフェルディナンは、下半身に簡易的な長い布を巻いてはいるけれど上半身は何も着ていなかった。一時期は私が何か羽織はおるなり着るなりしてほしいと言った通りにしてくれていたのだけれど、こういうことをするようになってから最近は大分だいぶ遠慮がなくなってきている気がする。私が少しだけフェルディナンの身体に免疫めんえきがついて来たからだろうか? 

「どうして君はそんなに俺の恰好を気にするんだ?」
「だから! 危ないんです! フェルディナンは綺麗だから何かあったらどうするんですか!」
「……そういう心配をするのは君くらいなものだが」
「じゃあ、どうしてもやめないなら私もこの格好で外を出歩いちゃいますよ?」
「それは駄目だ」
「あの、もちろん屋敷の中だけですけど……?」

 実際にそれを実行する予定は勿論もちろんない。けれど売り言葉に買い言葉で喧嘩腰になってしまう。どんどんエスカレートしていく会話に歯止めがきかなくなってくる。

「俺がそれを許すと思っているのか?」
「どうして私の時は即答なんですか……」
「君には男と女では基本的に身体の構造も、それによって許容されている範囲も違うということを思い出してほしいものだがな」
「それって不公平です!」
 
 変な方向へとズレていく会話にフェルディナンはハァッと溜息を付いた。

「分かった。君の言う通りに今度からは何か羽織はおるようにする。それでいいか?」
「……うん」

 フェルディナンはベッドの横に備え付けられているサイドテーブルに持ってきた飲み物をトレーごと置いて私の隣に座った。フェルディナンは相変わらずれする程の肉体美をしていて、それを前にして私は気恥ずかしさに彼から視線を外した。

 遠目からなら大丈夫なんだけど、冷静な時にその恰好で近くに来られるとやっぱり物凄く恥ずかしいっ!

 思わずフェルディナンから目線を外すと、フェルディナンは小さく笑って私のあごつかんで上向かせた。

「もう見慣れただろう?」

 そう言われて思わずプルプルと首を横に振ってしまった。毛布の中にもぐり込みそうになる私の行動を予期してか、フェルディナンは毛布のはしにトンッと手を置いて逃げ道をふさいだ。

「仕方ないな。どうして君はそう俺に慣れようとしない?」
「だって……」

 その最中さいちゅうは何が何だか分からない位夢中でいろいろと感覚が鈍くなっているし、恥ずかしさが極限きょくげんまできている分そういう感情が有耶無耶うやむやになっている。だから今のように普通の状態の時にフェルディナンの綺麗な上半身き出しの身体を前にするとどう反応したらいいのか分からない。冷静な頭の中に先程まで行われていた行為がはっきりとよみがえって頭の中でぐるぐる回り始めて収拾がつかなくなる。

「君は何時いつまで立ってもこういう事に慣れそうにないな」
「だってそれはっ!」
「それは?」
「フェルディナンが綺麗過ぎるから……フェルディナンはこういう事に慣れてるのは知ってるけど、私はフェルディナンが初めてだし基本的に経験不足というか経験値が違い過ぎるというか……」
「……またそんなことで悩んでいるのか?」

 どうでもいいと言う様な顔をしてフェルディナンは私の腰をつかんで抱き寄せた。

「う~! だって! ……やっぱり私も少しくらいこういう事に慣れておけばよかった」
「そんな必要はない」
「でも少しくらいは慣れておきたいというか、やっぱり誰かに教えてもらおうかな……」

 そう言った瞬間フェルディナンの雰囲気がガラッと変わった。

「――君は、誰にそんなことを教えてもらうつもりだ?」

 私の腰を強くつかんで自身の方へと更に強く引き寄せながら、瞳の鋭さだけで射殺せそうな位の殺気が宿った瞳を向けられて、ひるんで声が少し上擦うわずってしまう。

「えっと、……誰、ですか? まだ誰にするかは考え中だけど少しくらいそう言うことに詳しい人に教えてもらえば私も色々と心強いかなって思って。そう言えばイリヤならそう言うこと詳しそうだしいいかもしれないな、なんて思った……り……」

 話せば話すほど更に怖さが増していくフェルディナンの視線に言葉が続かない。

「一体何を・・するつもりだ」
「何って決まって……」

 私の中ではまでもキスの上達方法とか、相手を喜ばせる心理学的な部分だったりを教えてもらおうということだったのだけれど。フェルディナンとの間に違う意味での誤解が発生していることに私はようやく気が付いた。

「あのっ! 違いますよ!? フェルディナン以外の他の誰かに抱かれたいとかエッチな事がしたいとか、そう言う肉体的な意味じゃなくて、その……私、誰とでもそういうこと……セックスしたいなんて思わないし、するならやっぱりフェルディナンじゃないと嫌、だし……だからその、ですね……」

 自分で言いながらも恥ずかしい単語の数々に段々と頬が熱くなってくる。恥ずかし過ぎてフェルディナンがどんな顔をして聞いているのか見ることも出来ない。それでもどうしても気持ちを伝えたくてうつむきながらたどたどしく私は話を続けることにした。

「やっぱり、フェルディナンだって慣れている人の方が色々と楽かなって思って。だから、そういう知識が豊富な人にやり方を事前に教えてもらえればフェルディナンも私とする時気持ちよくなれるかなって、思ったりして……だからですね、ようするに私は――」
「もういい、分かった」
「えっ? あの、でもまだ話は終わってな……」
「十分だ」

 突然会話を切って顔を横にそむけたフェルディナンの横顔にほんのりと赤みが差しているように見えた。フェルディナンは口元に手を当てて無関心を装っている。それを見て私はその不思議な行動にピンとくるものを感じた。

「もしかしてフェルディナン、照れてる?」

 楽しそうに目を輝かせて反応を待っていると、フェルディナンは口元に当てていた手を退けて口のはしり上げながら挑戦的な目で私を見返してきた。

「それ以上何か言うつもりなら最後まで抱くぞ?」
「ご、ごめんなさい……」
「――君が生涯知る男は俺だけでいい」

 そう言い切ってからフェルディナンは私の首筋に顔を埋めた。フェルディナンのモノだという印の赤いあとがある場所に唇を当てられて強く吸われる。フェルディナンがずっと付け続けているこの印が途切れる日が来るのか。今ではそちらの方が気になる。

「あっ! そう言えば、還元剤かんげんざいって何のためにあるの? だって男に戻っちゃったらその、出来ないでしょ……?」
還元剤かんげんざいは本来、パートナーと生殖時期せいしょくじきが重なった時に使用するものだ。そうしないと今回の俺達のように女同士になった場合――同性同士だと子作り出来ないだろう?」
「……こ、こづくり……」

 顔を真っ赤にしてうつむいているとフェルディナンが優しく私の頬をでながらその手を私の顎に当てて少し顔を上向かせた。フェルディナンの真剣な瞳から逃れられなくなる。

「いずれは君に俺の子供を産んでもらう」
「……っ!」

 あまりにも直接的な事を言われて私は言葉を失ってしまった。ビクッとフェルディナンを恐れるように戸惑いの目を向けてしまう。

「そう怖がるな」

 フェルディナンは優しく私の頬をでながらいとおしいものを見るように紫混じった青い瞳を細めて私を真っ直ぐに見つめてくる。頬に当てられたフェルディナンの手の感触が気持ち良くて思わず警戒をいて頬擦ほおずりしてしまった。フェルディナンの大きな手にくっ付いて離れなくなった私の様子に、今度はフェルディナンの方が戸惑いと困惑に眉をひそめた。 

「怖がるなとは言ったがそこまで安心されると少し複雑な気分だな」
「……やっぱりフェルディナンも子作りとかそういうこと考えたりするんですね」
「大切な人がいて考えない方がどうかしてると思うが……」
 
 フェルディナンの腕の中で頬をでられながらすっかり安心しきった様子で身を任せていると、仕方ないなと言う様にフェルディナンは私を横抱きにして胸元に抱え直した。フェルディナンの胸元に頭を預けながらその力強い心臓の音に耳をかたむける。

「生まれて来る子供が男でも女でも……君を元の世界に帰す気はさらさらないがな」
「フェルディナン……?」
「俺は君を帰さない。それが君にとって残酷なことだとは分かっていても。それでも俺は君を手放すことは出来ない」
「…………」
「やはり君は残してきた家族の元に帰りたいのか?」
「……お姉ちゃんのことやっぱりよく思い出すの。でも今は自分がどうしたいのか分からない」

 私は元の世界に残してきた姉の誄歌るいかの事を思い出しながらフェルディナンの腕にすがるように抱きついた。

「そうか」

 ポンポンとあやすようにフェルディナンが背中をそっと叩いた。それ以上の答えを求めるでもなく。ただそばにいてくれた。
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