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異世界再び

記憶よりも優しい人

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勇者に気づかれないように見守るカゲの側にいるようになって、勇者が旅立ってから1年程たっていた。

勇者は成長しているとはいえ、まだ未熟でカゲにも俺にも気づかなかった。

……気づいたら、カゲは俺じゃなくて勇者と飯を食うようになるんだよな。勇者がカゲに気づいてもカゲの側にいれるのかって不安に思いながらも俺はカゲの側に居続けた。


いつものように、食料調達の為に近くの村に行くとレオに出会った。

レオはこの村の後は用事もないからと話さないかと誘われた。

勇者の起きている間はカゲとは話も出来ないから俺は承諾した。

レオは木陰に羽織っていたローブを脱ぐと地面に広げ座るように言ってきた。

「ないよりはマシかと思うから座ってちょうだいね」

勇者として会った時よりもレオは気づかってくれて優しかった。
そういえば、この頃はレオのとは親しくなかったな。

「レオ様は優しいんですね。ありがとうございます」

俺が礼を言うとレオは頭を撫でてくれた。

「気にしないでいいのよ。ねぇ、イチはずっと1人で旅を続けるのかしら?ワタシも今は用事があるからあちこち回ってるけど、落ち着いたらワタシと一緒に暮らさない?」

「えっと…?私は1人旅でも大丈夫ですよ、そんなに弱くないので」

「貴女が弱いって思ってないわ。ワタシが可愛い貴女と一緒にいたいのよ。守り守られって関係もいいと思うけど……どうかしら?」

つまりは、村から1人だけ旅立った俺を気づかってくれているのかと考えた。

「優しい気づかいありがとうございます。私は大丈夫です」

「誰にでもこんな優しくしないわ。ねぇ、ワタシは真名を名乗ってもいいくらいに思ってるのよ?」


ん?真名を名乗るって……確か、カゲが両親以外は生涯の伴侶だけって言ってたよな?どういう事だ?レオは意味わかってるんだよな?

「そんなに困惑されるんだね。……そうね、じゃあコレあげるわ。貴女の綺麗な長髪を結ぶのに似合うと思うのよ?」

レオは俺の色素のない光に当たると光る銀髪に金色のリボンを渡してくれた。

「受け取ってくれてありがとう。結んであげるわ」

レオは俺の髪を器用に結い結んでくれた。


それから、レオとたわいの無い話をして俺は食事を作りカゲの側に戻る時間帯になりレオと別れた。


いつものように匂いの無い食事を作りカゲの元に戻ると、カゲは結われた俺の髪のリボンを見ていた。いつもなら戻っても勇者が寝るまでは勇者から視線を外さないのに?何かあったのかな?

「……俺から離れたいなら、好きに離れていいんだからな」

「離れないよ、私はカゲの側にいます」

カゲは不信気に俺をというよりも、俺の髪のリボンを見ていた。

「……まさか、真名の事もだが。金のリボンの意味も知らないのか?」

何だそれ?金のリボンに意味なんてあるのか??俺は首を傾げた。


「……その顔は知らないんだな?今日は勇者も村の宿に泊まるみたいだから、説明してやる」

いつもよりも早い時間帯にカゲと話せる事に俺は嬉しくて笑顔で頷いた。

「……理由知らないんだよな?金のリボンが嬉しいって事じゃないんだよな…」

カゲは俺の顔を見ながらも言うからカゲに見られ照れると、カゲは溜息吐きながらも教えてくれた。


金のリボンは真名を教えてもいいって思うほどの恋人に渡すものだと伝えられた。

つまりは、前世での結婚が真名を教えるって感じで?金のリボンは婚約指輪的な感じなのかな?
俺は何となく理解した。

「でも、これくれた人とはそんな関係じゃないです。会ったのも数回程度ですから、村を旅立つ時から私の事心配してくれてるだけですから」

「……同じ村の奴か?…数回会った程度なら違うか。知らないなら無闇に物を受け取るな、わかったか?」

「はい。あのこれって常識なんですか?」

結んでいた金のリボンの事を問いかけた。

「常識だな。真名の方が契約的な効力は強いが」

「そうなんですね?着飾って楽しみたいって理由じゃなかったんですね…?返した方がいいですか?」

「……返さなくてもいい、でも外した方がいいな」

カゲは俺の髪から金のリボンを外し金のリボンを手に取り何かを考え込んでいた。

「……誰から貰ったのかは知ってるのか?」

「えっ?はい、レオ様です。四天王レオ様だからカゲも知ってますよね?」

「…………やっぱりアイツか。今後アイツからは物は貰うな!」

カゲは手の中の金のリボンを火魔法で灰にした。

その後、俺は勇者が宿から出てくる朝までカゲの側で安心して過ごした。
楽しい一時だった。
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