上 下
35 / 60
異世界再び

重なる面影

しおりを挟む
カゲとは、あれからずっと行動を共にしていた。カゲは勇者から目を離さずにずっと見守って助けていた。

たまに、勇者を見守るカゲの眼差しが透さんと重なって勇者が羨ましく思った。

俺は、カゲの為に食料調達の為の食材を購入の為に近くの村に買い物に来ていた。


「あら、イチだったわね?元気にしているようで安心したわ」

レオが声をかけてきた、各村へ人族との和解を伝える為に村を訪ね回っていると話された。俺はカゲの側にいるとは伝えずに移動しながら旅をしていると話した。

「そうなの。それじゃあ、また会えるかもしれないわね?…じゃあ、今度会ったらゆっくり話しましょう。今日はワタシの予定がつかないから次会えたら時間作るわ。イチの事は一人旅立つって聞いて気になっていたから」

レオにそう言われて、俺は転生しても仲良く話してくれるレオの優しさに嬉しくなって笑顔で頷いた。

「ホント可愛いわね」

レオは俺の頭を撫でて立ち去った。


勇者コウとして召喚された時よりもレオは優しい気がした。


俺はカゲの為に勇者に気づかれないように、匂いがしなくても美味しい食べ物を作り持っていった。


勇者が寝ると結界を張り、カゲは俺と話してくれた。ほとんど一方的に話していた気もするけどカゲは俺の話に相槌を打ったりしながら答えてくれていた。


「食事は助かるが、いつまで着いてくるつもりだ?」

カゲは食べ終えると尋ねてきた。


「邪魔ですか?……邪魔なら姿見せずに見守るだけです」

「立ち去らないんだな?邪魔じゃない、食事は助かってるし、美味いから。それにお前に姿消されたら探せないからやめろ。隠密スキル凄いんだから」

カゲに側にいてもいいと言われ、褒められ嬉しくなった。

「……お前、俺を好きだと言いながらも、たまに俺じゃない奴を見てるよな?」

俺は答えに困りつつも、問い返した。

「……カゲだって、勇者の事を愛しげに見てるだろ?魔王様が執着してるから諦めてるって事か?……何でだよ!好きな人いるなら他の人に優しくなんてするなよ!」

俺は思わず、転生前の口調で光一じゃない人の隣にいた事を思い出して泣きそうになるのを堪えて言っていた。


「……イチ?落ち着け。俺は勇者コウには恋慕していない、……似てはいるが違うから。二度と会えない人だ」

「………その人はカゲの真名は知ってるんですか?」

真名は生涯の伴侶と両親しか知らせない物だと言っていたから、声を震わせ尋ねた。


「知らないな、俺の真名は……。気にするな、昔の話だ」

ん?どういう意味だ?って?俺は疑問に思いながら、真っ直ぐ問い返しても答えてくれないなと思い質問の内容を変えた。


「勇者コウの真名は知ってるんですか?」

「そうだな。魔王様と四天王は知っている」

魔王と四天王だから、勇者の情報として勇者コウ橋本光一を知ってるのか?それ以上は聞けなかった。

カゲも転生していて透さんならって思ったけど……。それだと勇者コウの事は過去?……違うか、勇者コウの後に出会ったから未来?
うん……混乱してきたから、考えるのはやめよう。

今は、側にいてもいいって言ってくれるカゲの側にいる。
それが俺の望みだった。


面影を重ねてるだけかもしれないけど、カゲとしての優しさも好きだったんだよな。……本当に、ずっと見守ってくれてたんだな。
勇者が羨ましく思う、過去の俺なのに……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

青い炎

瑞原唯子
BL
今日、僕は同時にふたつの失恋をした——。 もともと叶うことのない想いだった。 にもかかわらず、胸の内で静かな激情の炎を燃やし続けてきた。 これからもこの想いを燻らせていくのだろう。 仲睦まじい二人を誰よりも近くで見守りながら。

その先の景色を僕は知らない

マン太
BL
 高校二年生になった拓人は、いつしか不登校に。いじめられた訳でもなければ、授業について行かれなくなった訳でもない。  ただ、当たり前の日常に疑問を持つようになって。  そんな拓人に声をかけて来たのは、兄の友人千尋。パッと見、ヤンキー少年に見えたが?  短目のお話しです。以前、冒頭だけ書いてお蔵入りしていたものを最後まで書いて見ました。  二人が仲良くなって行く過程のお話しです。   ※作中に出て来る事象はすべてフィクションであり、都合よく変更、解釈してある箇所が多々あります。ご了承いただければ幸いです。 ※エブリスタ、小説家になろうにも掲載しております。

あんなに堅物だった俺を、解してくれたお前の腕が

いちごみるく
BL
小学二年生の頃からずっと一緒の幼馴染。 気づけば、こんなに好きな気持ちが大きくなっていた…。 普段は冷静でしっかり者、文武両道で完璧なイメージの主人公・冷泉優。 しかし、優が恋した相手は、幼馴染かつ同じ中学で同じ部活に所属する天然小悪魔系イケメンの醍醐隼。 優は隼の無意識な色気に翻弄されるばかりの毎日だったが、ある夜、ついに気持ちを固めて隼に告白! すると、隼が出したまさかの答えは……? ※なお、『その男、人の人生を狂わせるので注意が必要』は主人公・隼がメインのストーリーです。優との絡みは薄めですが、是非こちらも見て頂けたら嬉しいです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

魔物好感度MAX勇者は魔王のストーカー!?

ミクリ21
BL
異世界で勇者召喚された七海 凛太郎は、チート能力を活かして魔王ラージュのストーカーをする!

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

赤髪騎士と同僚侍女のほのぼの婚約話(番外編あり)

しろねこ。
恋愛
赤髪の騎士ルドは久々の休日に母孝行として実家を訪れていた。 良い年頃なのに浮いた話だし一つ持ってこない息子に母は心配が止まらない。 人当たりも良く、ルックスも良く、給料も悪くないはずなのに、えっ?何で彼女出来ないわけ? 時として母心は息子を追い詰めるものなのは、どの世でも変わらない。 ルドの想い人は主君の屋敷で一緒に働いているお喋り侍女。 気が強く、お話大好き、時には乱暴な一面すら好ましく思う程惚れている。 一緒にいる時間が長いと好意も生まれやすいよね、というところからの職場内恋愛のお話です。 他作品で出ているサブキャラのお話。 こんな関係性があったのね、くらいのゆるい気持ちでお読み下さい。 このお話だけでも読めますが、他の作品も読むともっと楽しいかも(*´ω`*)? 完全自己満、ハピエン、ご都合主義の作者による作品です。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます!

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

処理中です...