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勇者として

旅立ち

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俺は『勇者コウ』として、1人魔王討伐に旅立った。

魔王のいる場所までは遠く、交通機関のない世界の為、移動は徒歩又は馬車しかなかった。
俺は魔王の居るところまで、基本的には徒歩で魔物を倒しながら進んでいった。

魔物は形の決まらないスライム状や、虫型タイプ、人形タイプといて。最初は人形タイプへの攻撃は戸惑っていたけど、慣れって怖いよな?
人形タイプでも、魔物として人間に危害を加えるなら、攻撃出来るようになっていた。

人形タイプは一撃では倒せないけど、スライム状や虫型は一撃で真っ二つに出来る程に強くなっていた。


「勇者コウ様」

旅立ってから、勇者として名もしれ渡ると声をかけられる事もあって、応援されると嬉しくなってくる単純だなとは思うけど。単純だから、強くなれたんだとも思う。

たまに、村から町へと様々な所で休みながらも魔王の元に向かうと同じ方向なのか、たまたまなのかは解らないけど、見た目綺麗な女の人に見える魔法使いの男と、元気で明るい武道家と、筋肉ムキムキの戦士の3人と少しずつ親しくなって話すようになっていた。


1人魔王討伐の旅だったから、たまに会う3人に出会う事が楽しみになっていた。

俺が異世界召喚されて2年がたっていた。
魔王の居るところまでは、まだまだ先は長くて、俺の力量もまだまだだった。

俺は目的地に向けて魔物を倒しながら進んでいった。
旅の途中に村もなく、野宿する事もあって倒した魔物を皮を剥ぎ、肉を食べやすい大きさに切り、火をおこし肉を焼いて食べる事にも慣れていった。

肉が焼ける間、最初は火を起こすのも大変だったなと、肉が焼け空に上がる煙をあおぎ見て召喚されてからの苦労を思いだしていた。

「帰りたいな…」

ポツリと呟いた言葉は誰も聞くことはなかった。

周囲を警戒しつつ、体を休める為に横になり夜を過ごした。

魔物被害のある村から町を救い、魔王の居るところを目指した。

久しぶりに町で、親しくなっていた。3人に出会った。
魔法使いのレオ、武道家のヒカル、戦士のゴウキと一緒に夕飯を食べて知り合いと言える人と過ごせた事が嬉しかった。
3人とは名前で呼びあえる位に親しくはなったけど、どうして俺の行く先々で出会うのか理由を聞くことは出来なかった。
聞いたら、会えなくなるようなきがしてたから。


俺は、旅立った時から比べたら強くなってると思う。
いつからだったか解らないけど、視線を感じるけど特に何もないから気にしないでいたけど、そのうち視線だけしか感じなかったのが、どこから見てるのかも解るようになっていた。

どうして、 見てるのかとか。
いつから、見てたのかとか。
解らないけど、側にいて見守ってくれてるのが嬉しかったんだよな。

着いてきてるのかな?見守ってくれてるのかな?なあ、俺と一緒に行かないかって誘ったら来てくれるかな?

俺が異世界召喚されて3年がたっていた。


俺が勇者?だからって1人で魔王を倒せるのかな?倒せなくても、この世界が平和になるならいいのかもな。

「帰りたいって思うけど、もう帰ってもこの歳だと友達も高校卒業だよな…でも、帰れないんだよな」

俺は野宿にも慣れて、野宿でも眠れる様になっていた。近くに気配がしたら目がさめて剣を構えられる位にはなっていた。

魔王の居るところまでって、本当に最初に言われた目的の場所に魔王はいるのかな?
目的地は目指すけどな。


俺は強くなっていたから油断して、剣を弾かれて背後から襲いかかられて…もう、終わった、って思ったら。
俺の影から現れた黒装束を着て顔も口元を布で覆った人が現れて短剣で流れる様に切り、短剣のはずなのに魔物を細切れにしていた。

辺りに魔物の気配もなくなり、俺は助けてくれた人を目視しようと振り返った。
この気配は、いつも見守って?いた視線の持主だったから。もしかしたら、今後の旅には一緒に行けるかもって。一人旅じゃないって思うと嬉しくなり声をかけた。

「…俺はカゲ。姿は見せないのが基本だ。着いていくのは可能だが、今までと同様に着いていく」

「そっか。でも、ご飯は?それくらいなら一緒に食べるのは?」

黒装束のカゲと名乗った人はしばらく沈黙し考えた後に承諾してくれた。
ご飯だけでも、常に誰かと一緒なのは嬉しかった。

「ありがとな」

俺は嬉しくて、笑顔で礼を告げた。カゲは口元に僅かな笑みを浮かべて定位置へと離れ着いてきてくれた。

異世界召喚してから4年目にして、同行者との旅が嬉しかった。
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