23 / 27
邪魔
しおりを挟む
美雪のカツサンドは、美雪の想像以上に上手くいっていた。
「美味しい!東風さん、料理が美味いんだね」
崇範にほめられ、やや内心で焦りながらも、今回はアドバイスを受けながらもほとんど自分で作っただけあって、美雪も嬉しかった。
「まだまだだよ。ありがとう。
不安に勝つように。がんばってね」
「うん。ありがとう。がんばってみるよ」
にこにこしながら仲良く食べ、他愛もない話をしながら、崇範は美雪が本当にありがたいと思った。
「もうすぐ春休みね」
「その前に学年末テストがあるけどね」
「憂鬱だわぁ」
「僕はその前の例のテストがね」
テストはするものの、ほとんど決まったようなものらしい。それでも、あまりにもダイコンだと落ちるに違いないと崇範はヒヤヒヤしていた。
「応援してるから。落ち着いたら大丈夫よ」
「うん。緊張したら東風さんを思い出す事にするよ。頑張れる気がする」
「えへへ」
美雪はくすぐったそうに笑った。
「来年も同じクラスになれたらいいのに」
崇範は、
(今だ!)
と思った。
「東風さん。もしクラスが違っても、その後の進路が違っても、僕は――」
「東風さん」
一世一代の気合を込めた告白の最中に遮られ、崇範は机に突っ伏しそうになった。
美雪も、何か大事な話のようだと集中していた最中に割り込まれ、つい、恨めしそうな目を声の主に向けた。
「……堂上君……」
堂上が、イケメンスマイルで立っていた。
「ちょっといいかな」
ダメだと言われないのを前提とした顔だ。
「深海、ちょっといいか」
担任までもが乱入して来た。
(また今度改めて言おう)
崇範と美雪は、渋々立ち上がって、各々堂上と担任とについて行った。
崇範が連れて来られたのは、職員室だ。
「昨日、襲われたんだって?大丈夫なのか。殴られたのか?」
「はい、大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません」
「今日は朝から、手記がどうのこうのって、校門前にも取材陣が来てなあ。他の生徒や近所の迷惑になるからと帰ってもらったが」
「すみません。色々とお騒がせしてしまって」
「いや、俺はいいよ。深海は俺の生徒だしな。
むしろ、何でも相談しろよ。例えば進路も」
冬休み明けに進路調査票を出したのだが、崇範は就職を希望した。
「就職ってのは、芸能界か?」
「いえ。スタントもスーツアクターもバイトです。どこかの企業に就職しようと思ってますよ」
「でも、俳優でいくとかネットに出てたぞ」
「先生、そんなのも見るんですか」
「まあな」
「ううん。今の騒ぎはきっと一時的なものだと僕は思うんです。まあ、バイトでやりますけど」
「バイトねえ。
進学の意志はないのか。成績的にはそっちを勧めるところだけどなあ。奨学金だって特待生制度のある学校だってあるし、将来を考えれば、進学を勧めるんだがなあ」
「奨学金は、卒業してから返さないといけないから」
「色々だぞ。資料を揃えておくから、春休み中によく考えてみろ。いいな」
「はい」
「それと、何か取材とかをするなら、できれば学校に押しかけて来ないように事務所から言ってもらえないか」
「はい。社長にそう申し入れしてもらいます。
ご迷惑をおかけして、済みませんでした」
崇範は礼をして、職員室を出た。
美雪と堂上は、人気の無い特別棟の廊下にいた。
「この前の話なんだけど」
美雪は一瞬何だったか考え、思い出した。
「ごめんなさい。堂上君とは付き合えないわ」
「何で?」
「堂上君にはそういう感情が持てないから」
「え、いや、付き合ってみて」
「何が何でも誰かと付き合わなきゃいけないわけでもないし、深海君がだめでも、それで別の人となんておかしいもの」
堂上は理解不能という顔をしていた。
美雪は気まずい事もあって、
「ごめんなさい。じゃあ」
と、さっさと踵を返した。
堂上はそれを呆然と見送っていた。
「美味しい!東風さん、料理が美味いんだね」
崇範にほめられ、やや内心で焦りながらも、今回はアドバイスを受けながらもほとんど自分で作っただけあって、美雪も嬉しかった。
「まだまだだよ。ありがとう。
不安に勝つように。がんばってね」
「うん。ありがとう。がんばってみるよ」
にこにこしながら仲良く食べ、他愛もない話をしながら、崇範は美雪が本当にありがたいと思った。
「もうすぐ春休みね」
「その前に学年末テストがあるけどね」
「憂鬱だわぁ」
「僕はその前の例のテストがね」
テストはするものの、ほとんど決まったようなものらしい。それでも、あまりにもダイコンだと落ちるに違いないと崇範はヒヤヒヤしていた。
「応援してるから。落ち着いたら大丈夫よ」
「うん。緊張したら東風さんを思い出す事にするよ。頑張れる気がする」
「えへへ」
美雪はくすぐったそうに笑った。
「来年も同じクラスになれたらいいのに」
崇範は、
(今だ!)
と思った。
「東風さん。もしクラスが違っても、その後の進路が違っても、僕は――」
「東風さん」
一世一代の気合を込めた告白の最中に遮られ、崇範は机に突っ伏しそうになった。
美雪も、何か大事な話のようだと集中していた最中に割り込まれ、つい、恨めしそうな目を声の主に向けた。
「……堂上君……」
堂上が、イケメンスマイルで立っていた。
「ちょっといいかな」
ダメだと言われないのを前提とした顔だ。
「深海、ちょっといいか」
担任までもが乱入して来た。
(また今度改めて言おう)
崇範と美雪は、渋々立ち上がって、各々堂上と担任とについて行った。
崇範が連れて来られたのは、職員室だ。
「昨日、襲われたんだって?大丈夫なのか。殴られたのか?」
「はい、大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません」
「今日は朝から、手記がどうのこうのって、校門前にも取材陣が来てなあ。他の生徒や近所の迷惑になるからと帰ってもらったが」
「すみません。色々とお騒がせしてしまって」
「いや、俺はいいよ。深海は俺の生徒だしな。
むしろ、何でも相談しろよ。例えば進路も」
冬休み明けに進路調査票を出したのだが、崇範は就職を希望した。
「就職ってのは、芸能界か?」
「いえ。スタントもスーツアクターもバイトです。どこかの企業に就職しようと思ってますよ」
「でも、俳優でいくとかネットに出てたぞ」
「先生、そんなのも見るんですか」
「まあな」
「ううん。今の騒ぎはきっと一時的なものだと僕は思うんです。まあ、バイトでやりますけど」
「バイトねえ。
進学の意志はないのか。成績的にはそっちを勧めるところだけどなあ。奨学金だって特待生制度のある学校だってあるし、将来を考えれば、進学を勧めるんだがなあ」
「奨学金は、卒業してから返さないといけないから」
「色々だぞ。資料を揃えておくから、春休み中によく考えてみろ。いいな」
「はい」
「それと、何か取材とかをするなら、できれば学校に押しかけて来ないように事務所から言ってもらえないか」
「はい。社長にそう申し入れしてもらいます。
ご迷惑をおかけして、済みませんでした」
崇範は礼をして、職員室を出た。
美雪と堂上は、人気の無い特別棟の廊下にいた。
「この前の話なんだけど」
美雪は一瞬何だったか考え、思い出した。
「ごめんなさい。堂上君とは付き合えないわ」
「何で?」
「堂上君にはそういう感情が持てないから」
「え、いや、付き合ってみて」
「何が何でも誰かと付き合わなきゃいけないわけでもないし、深海君がだめでも、それで別の人となんておかしいもの」
堂上は理解不能という顔をしていた。
美雪は気まずい事もあって、
「ごめんなさい。じゃあ」
と、さっさと踵を返した。
堂上はそれを呆然と見送っていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】夫もメイドも嘘ばかり
横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。
サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。
そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。
夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる