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くりかえす(4)考察の時間
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凜と累が、報告してくれる。
「父さん、うさぎがいっぱいいた!」
「今日のご飯はもういいんだって」
「もう、畑中さん頼まれてあげたもの」
「あんな草のどこが美味しいのかしら。臭いのに」
フミちゃんとチヨちゃんも、一緒に報告してくれた。
「へえ、臭い草なんだ」
「そうよ。臭いの。変な臭いなの」
「トゲトゲなの。花は白くてかわいいのに」
2人は言って眉をひそめ、凜と累に向き直る。
「次は何をして遊ぶ?」
「ダンスの練習をしましょうよ。教えてあげるわ」
「ダンス?」
「やる!」
たぶん、凜と累の考えるダンスは、優維ちゃんが運動会で披露したアニメの曲に合わせて踊るダンスだと思う。だが、たぶんフミちゃんとチヨちゃんのいうダンスは、社交ダンスだろう。
しかし、これもいい経験だ。やるといい。
凜と累がフミちゃんとチヨちゃんに手をつながれてマンツーマンでレッスンを始めると、敬と優維ちゃんも手をつないでそれを真似、康介はマツさんに手を取られて、こころなしかデレデレしながら練習を始めた。
それを大人達は微笑ましく、あるいは何となく見ているのを横目に、僕は畑中さんを見張るべくキッチンへ、直と兄は料理にすっと混ぜられるようなところに毒物が隠されていていないかを調べに、各々散開した。
結果的に、僕達は怪しい物を見付けられずに夕食の時間を迎えようとしていた。
「毒物があるとすれば、身に着けているとしか考えられない」
「身体検査をするわけにもいかないしなあ。
こっちは、料理の最中に何かを混入する様子はなかったよ」
「今から停電になるとかかねえ?
でも、真っ暗の中で全員の皿に毒物を垂らして回るのも、難しそうだよねえ」
僕達3人は、額を寄せ集めてこそこそと相談していた。
畑中さんの料理中はずっと見学していたが、不審なものはなかった。
コンソメは丁寧にアクを取って透き通った黄金色に。サラダは洗って彩りよく盛りつけ、うさぎのローストは焼き加減も丁度いい具合に仕上げられている。パンはバターの香りもよくふんわりと焼き上がり、フルーツは美しくカットされている。朝から用意していたというハーブ入りの水が入った水差しには濃いピンクの花が見え、ワインは冷やされて開栓を待つばかりだ。
盛り付けをする畑中さんを見ながら、僕達はこそこそと話し、考え込んだ。
あとは持って行くだけだが、畑中さんと村雨さんで運んで行くので、全員に毒を盛るチャンスはないだろう。
「もしかして、俺達が来た事で、事件が今日は起こらないとかいうんじゃないだろうな」
兄が言い、その可能性について考えてみる。
「それじゃあ、検討のしようがないな」
そこへ、マツさんが近付いて来た。
「どうでしょうか」
それで、これまでの全てを話すと、マツさんは言った。
「それはありません。これまでにも、第三者が来合せた時、探偵役をお願いしました。毎回、事件は起こったのです」
「という事は、今回も起こるし、もう、タネは仕掛けられている、か」
盛り付けを終え、畑中さんがさっとチェックして頷く。
「できました。
おや、お嬢様」
「ああ、その、美味しそうね。さあ、テーブルに行きましょうか」
そこで、僕はピンときた。
「待った」
皿をワゴンに乗せかけていた畑中さんと村雨さんは手を止め、ほかの皆は足を止めた。
「怜?」
「わかったぞ。どうやってどこに毒物を仕掛けたか」
兄の目がキュッと鋭くなった。
「どういう事です?」
村雨さんも目を細めて訊く。
「説明します。
でも、子供達は客室へ行かせた方がいいな。冴子姉達に頼もう。ここにいた人達だけで食堂へ行きましょう。事件当日のように」
マツは表情を引き締め、
「承知いたしましたわ」
と言うなり、踵を返した。
「さあ。推理の時間と行こうか」
「父さん、うさぎがいっぱいいた!」
「今日のご飯はもういいんだって」
「もう、畑中さん頼まれてあげたもの」
「あんな草のどこが美味しいのかしら。臭いのに」
フミちゃんとチヨちゃんも、一緒に報告してくれた。
「へえ、臭い草なんだ」
「そうよ。臭いの。変な臭いなの」
「トゲトゲなの。花は白くてかわいいのに」
2人は言って眉をひそめ、凜と累に向き直る。
「次は何をして遊ぶ?」
「ダンスの練習をしましょうよ。教えてあげるわ」
「ダンス?」
「やる!」
たぶん、凜と累の考えるダンスは、優維ちゃんが運動会で披露したアニメの曲に合わせて踊るダンスだと思う。だが、たぶんフミちゃんとチヨちゃんのいうダンスは、社交ダンスだろう。
しかし、これもいい経験だ。やるといい。
凜と累がフミちゃんとチヨちゃんに手をつながれてマンツーマンでレッスンを始めると、敬と優維ちゃんも手をつないでそれを真似、康介はマツさんに手を取られて、こころなしかデレデレしながら練習を始めた。
それを大人達は微笑ましく、あるいは何となく見ているのを横目に、僕は畑中さんを見張るべくキッチンへ、直と兄は料理にすっと混ぜられるようなところに毒物が隠されていていないかを調べに、各々散開した。
結果的に、僕達は怪しい物を見付けられずに夕食の時間を迎えようとしていた。
「毒物があるとすれば、身に着けているとしか考えられない」
「身体検査をするわけにもいかないしなあ。
こっちは、料理の最中に何かを混入する様子はなかったよ」
「今から停電になるとかかねえ?
でも、真っ暗の中で全員の皿に毒物を垂らして回るのも、難しそうだよねえ」
僕達3人は、額を寄せ集めてこそこそと相談していた。
畑中さんの料理中はずっと見学していたが、不審なものはなかった。
コンソメは丁寧にアクを取って透き通った黄金色に。サラダは洗って彩りよく盛りつけ、うさぎのローストは焼き加減も丁度いい具合に仕上げられている。パンはバターの香りもよくふんわりと焼き上がり、フルーツは美しくカットされている。朝から用意していたというハーブ入りの水が入った水差しには濃いピンクの花が見え、ワインは冷やされて開栓を待つばかりだ。
盛り付けをする畑中さんを見ながら、僕達はこそこそと話し、考え込んだ。
あとは持って行くだけだが、畑中さんと村雨さんで運んで行くので、全員に毒を盛るチャンスはないだろう。
「もしかして、俺達が来た事で、事件が今日は起こらないとかいうんじゃないだろうな」
兄が言い、その可能性について考えてみる。
「それじゃあ、検討のしようがないな」
そこへ、マツさんが近付いて来た。
「どうでしょうか」
それで、これまでの全てを話すと、マツさんは言った。
「それはありません。これまでにも、第三者が来合せた時、探偵役をお願いしました。毎回、事件は起こったのです」
「という事は、今回も起こるし、もう、タネは仕掛けられている、か」
盛り付けを終え、畑中さんがさっとチェックして頷く。
「できました。
おや、お嬢様」
「ああ、その、美味しそうね。さあ、テーブルに行きましょうか」
そこで、僕はピンときた。
「待った」
皿をワゴンに乗せかけていた畑中さんと村雨さんは手を止め、ほかの皆は足を止めた。
「怜?」
「わかったぞ。どうやってどこに毒物を仕掛けたか」
兄の目がキュッと鋭くなった。
「どういう事です?」
村雨さんも目を細めて訊く。
「説明します。
でも、子供達は客室へ行かせた方がいいな。冴子姉達に頼もう。ここにいた人達だけで食堂へ行きましょう。事件当日のように」
マツは表情を引き締め、
「承知いたしましたわ」
と言うなり、踵を返した。
「さあ。推理の時間と行こうか」
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