884 / 1,046
チビッ子編 👻 たんぽぽ捕物帖(2)盗撮魔現る
しおりを挟む
色んな服装の子供達がいる。お姫様、怪獣、魔女、ちょうちょ。
怜は忍者、直は狩人だ。
怜に何の格好がいいか訊くと、最近お気に入りのドラマに登場する御庭番がいいと言ったのだ。衣装は割と簡単にできた。上様とかだったらカツラも用意しなければいけない所だったので、正直助かった。
直は、妹の絵本に出て来る狩人が気に入ったらしい。直の父兄は、「白雪姫とか言い出さなくて良かった」と冗談を言っていた。
ジーンズの司は黒装束の怜と狩人の直を連れて、ルートに従って家をまわっていた。
訪問先の中には歯医者もあり、たくさんの園児が緊張を強いられ、そして、「意外と怖くない」と認識を改めさせられている。そして、歯医者へのハードルを下げようという父兄の魂胆にはまっていた。
怜と直もここをクリアし、おもちゃの吸盤付きの弓とプラスティックの刀を片手に上機嫌で歩いていた。
「兄ちゃんもお菓子一緒に食べようね!」
「ボクのもあげるね!」
「ありがとう。ほら、前を見ないと危ないぞ」
「はあい」
と、その足が止まった。
前方のブロック塀の陰に、怪しい男がいた。
犯罪者が見るからに怪しい訳がないと司は思っていたが、これは怪しい。締まりなく口元を開き、イヤホンを耳に差し込み、モバイルのような何かを両手で持っていた。
幼稚園児ですらも怪しいと思って、手前の曲がり角で身をひそめるくらいだ。
「あれ、何、兄ちゃん」
こそっと怜が訊く。
「何だろうな。
あ、盗撮魔か?この塀の向こうはどこかの会社の女子寮だったな」
「盗撮魔って、お母さんが言ってた。卑劣で悪いやつなんだって」
「卑劣って何?」
「知らないなあ。ううんと、ひれかつの仲間?」
「美味しそうだね」
怜と直がトンチンカンな会話をしているうちに、司は携帯電話を取り出して、警察に知らせようとしていた。
が、幼児の思わぬ行動に先を越された。
「悪者め!言い逃れはできんぞ!」
「へ!?いや、お、俺は、その、あっち行け!」
推定盗撮魔が慌てるが、司も慌てた。
「え!?ちょっと待て!」
「逃がさん!」
ラジコンをあたふたと回収しようとする推定盗撮魔に向かって、直が弓を射た。それは上手く推定盗撮魔の眼鏡に当たって、視界をふさぎ、尻もちをつかせた。
「ぎゃあ!な、何だ!?」
慌てた拍子に、ラジコンのヘリがガツンと窓に当たったらしく、塀の向こうから、
「え、何の音?」
「ヘリコプターのおもちゃ?」
「カメラが付いてる!」
「キャアアアア!!チカンよおおおお!!」
と声が響き、司の携帯電話の向こうからは、
『どうしました?え、チカン?もしもし?』
と、緊急通報センターの警察官の声がする。
そして、怜は期待を込めた目で司を見上げている。
「兄ちゃん!」
「……あ。『成敗』」
司が言うと、怜は嬉しそうにおもちゃの刀を振り上げて、「目が!目がああ!」と混乱している推定盗撮魔に飛び掛かって行き、背中に叩きつけた。
「ウギャアアア!?」
ビクビクしていたところにわけのわからない攻撃を受けたと思い込んでいる盗撮魔は、情けない悲鳴を上げて地面に倒れ込んだ。
司は悠々とうつぶせに倒れてもがく推定盗撮魔に近付き、背中から抑えつけた。
怜は忍者、直は狩人だ。
怜に何の格好がいいか訊くと、最近お気に入りのドラマに登場する御庭番がいいと言ったのだ。衣装は割と簡単にできた。上様とかだったらカツラも用意しなければいけない所だったので、正直助かった。
直は、妹の絵本に出て来る狩人が気に入ったらしい。直の父兄は、「白雪姫とか言い出さなくて良かった」と冗談を言っていた。
ジーンズの司は黒装束の怜と狩人の直を連れて、ルートに従って家をまわっていた。
訪問先の中には歯医者もあり、たくさんの園児が緊張を強いられ、そして、「意外と怖くない」と認識を改めさせられている。そして、歯医者へのハードルを下げようという父兄の魂胆にはまっていた。
怜と直もここをクリアし、おもちゃの吸盤付きの弓とプラスティックの刀を片手に上機嫌で歩いていた。
「兄ちゃんもお菓子一緒に食べようね!」
「ボクのもあげるね!」
「ありがとう。ほら、前を見ないと危ないぞ」
「はあい」
と、その足が止まった。
前方のブロック塀の陰に、怪しい男がいた。
犯罪者が見るからに怪しい訳がないと司は思っていたが、これは怪しい。締まりなく口元を開き、イヤホンを耳に差し込み、モバイルのような何かを両手で持っていた。
幼稚園児ですらも怪しいと思って、手前の曲がり角で身をひそめるくらいだ。
「あれ、何、兄ちゃん」
こそっと怜が訊く。
「何だろうな。
あ、盗撮魔か?この塀の向こうはどこかの会社の女子寮だったな」
「盗撮魔って、お母さんが言ってた。卑劣で悪いやつなんだって」
「卑劣って何?」
「知らないなあ。ううんと、ひれかつの仲間?」
「美味しそうだね」
怜と直がトンチンカンな会話をしているうちに、司は携帯電話を取り出して、警察に知らせようとしていた。
が、幼児の思わぬ行動に先を越された。
「悪者め!言い逃れはできんぞ!」
「へ!?いや、お、俺は、その、あっち行け!」
推定盗撮魔が慌てるが、司も慌てた。
「え!?ちょっと待て!」
「逃がさん!」
ラジコンをあたふたと回収しようとする推定盗撮魔に向かって、直が弓を射た。それは上手く推定盗撮魔の眼鏡に当たって、視界をふさぎ、尻もちをつかせた。
「ぎゃあ!な、何だ!?」
慌てた拍子に、ラジコンのヘリがガツンと窓に当たったらしく、塀の向こうから、
「え、何の音?」
「ヘリコプターのおもちゃ?」
「カメラが付いてる!」
「キャアアアア!!チカンよおおおお!!」
と声が響き、司の携帯電話の向こうからは、
『どうしました?え、チカン?もしもし?』
と、緊急通報センターの警察官の声がする。
そして、怜は期待を込めた目で司を見上げている。
「兄ちゃん!」
「……あ。『成敗』」
司が言うと、怜は嬉しそうにおもちゃの刀を振り上げて、「目が!目がああ!」と混乱している推定盗撮魔に飛び掛かって行き、背中に叩きつけた。
「ウギャアアア!?」
ビクビクしていたところにわけのわからない攻撃を受けたと思い込んでいる盗撮魔は、情けない悲鳴を上げて地面に倒れ込んだ。
司は悠々とうつぶせに倒れてもがく推定盗撮魔に近付き、背中から抑えつけた。
10
お気に入りに追加
198
あなたにおすすめの小説
未亡人クローディアが夫を亡くした理由
臣桜
キャラ文芸
老齢の辺境伯、バフェット伯が亡くなった。
しかしその若き未亡人クローディアは、夫が亡くなったばかりだというのに、喪服とは色ばかりの艶やかな姿をして、毎晩舞踏会でダンスに興じる。
うら若き未亡人はなぜ老齢の辺境伯に嫁いだのか。なぜ彼女は夫が亡くなったばかりだというのに、楽しげに振る舞っているのか。
クローディアには、夫が亡くなった理由を知らなければならない理由があった――。
※ 表紙はニジジャーニーで生成しました
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【R18】やがて犯される病
開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。
女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。
女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。
※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。
内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。
また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。
更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる