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つながり(1)不可解な諍い
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休日のファミリーレストランは、母親と子供、母親グループが多い。
自分と似たような年の子供が、そばのテーブルでお子様ランチを食べていた。
「人参を残して。もう」
「だって、美味しくないもん」
「好き嫌いしたらだめでしょ?カレー、作らないわよ?」
「やだ!今日の晩御飯はカレーの約束でしょ?」
「仕方ないわねえ」
子供はにこにことし、母親は苦笑しながら、子供の口の周りに派手についたケチャップを拭う。
それをシエルは冷めた目で見ながら、カレーにはきっと人参が小さく切って入れてあるか、すりおろして入れてあるのに、と思った。
シエルはフォークを置いて、口の周りを拭った。
「もういいの」
母親役の護衛がそう訊く。
「うん。もういいよ」
グリーンピースを残しているが、何も言わない。ただ大人しく席を立つ。
シエルはイライラとしたものを感じながらそれに続き、思った。ファミリーレストランは、苦手だな、と。
結婚式は、大抵の人にとって一生の思い出に残る大イベントである。
「確かに、一生の思い出になっただろうな」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「本人的には、忘れたいだろうけどねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
突然なぜかケンカになり、酷い場合には殺人事件に発展するという事件が発生していた。
そしてこれも、結婚式の披露宴の最中に、突然新郎新婦がケンカを始めたらしい。
しかし新郎をナイフで刺した新婦が、我に返ってパニックになり、
「私がそんな事するわけがない!」
と叫び、
「憑依されてたに違いないわ!」
と主張。
それ以外にも、子供を虐待をした親、介護虐待をした子供、DVをしたパートナーなど、同様の事件と訴えが相次いでいる。
なので、陰陽課で手分けして調査にかかっているのである。
「ああ。憑かれてたな」
「気の毒にねえ」
やつれた新婦には、何かに憑かれた痕が残っていた。
それを陰陽課として保証すれば罪には問われないが、よりにもよって愛する相手を殺傷してしまったのだ。その心の傷は消えはしない。
「他人を操って何かさせるにしても、とことん卑怯なやり方だな」
「許してはおけないねえ」
「ああ。霊は楽に逝かせてやらないし、させる人間がいるなら、そいつも逃がさないようにしよう、直」
「そうだねえ」
僕と直は、本来なら今頃幸せいっぱいだった筈の新婦の心の傷の回復を祈り、犯人逮捕を誓った。
自分と似たような年の子供が、そばのテーブルでお子様ランチを食べていた。
「人参を残して。もう」
「だって、美味しくないもん」
「好き嫌いしたらだめでしょ?カレー、作らないわよ?」
「やだ!今日の晩御飯はカレーの約束でしょ?」
「仕方ないわねえ」
子供はにこにことし、母親は苦笑しながら、子供の口の周りに派手についたケチャップを拭う。
それをシエルは冷めた目で見ながら、カレーにはきっと人参が小さく切って入れてあるか、すりおろして入れてあるのに、と思った。
シエルはフォークを置いて、口の周りを拭った。
「もういいの」
母親役の護衛がそう訊く。
「うん。もういいよ」
グリーンピースを残しているが、何も言わない。ただ大人しく席を立つ。
シエルはイライラとしたものを感じながらそれに続き、思った。ファミリーレストランは、苦手だな、と。
結婚式は、大抵の人にとって一生の思い出に残る大イベントである。
「確かに、一生の思い出になっただろうな」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「本人的には、忘れたいだろうけどねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
突然なぜかケンカになり、酷い場合には殺人事件に発展するという事件が発生していた。
そしてこれも、結婚式の披露宴の最中に、突然新郎新婦がケンカを始めたらしい。
しかし新郎をナイフで刺した新婦が、我に返ってパニックになり、
「私がそんな事するわけがない!」
と叫び、
「憑依されてたに違いないわ!」
と主張。
それ以外にも、子供を虐待をした親、介護虐待をした子供、DVをしたパートナーなど、同様の事件と訴えが相次いでいる。
なので、陰陽課で手分けして調査にかかっているのである。
「ああ。憑かれてたな」
「気の毒にねえ」
やつれた新婦には、何かに憑かれた痕が残っていた。
それを陰陽課として保証すれば罪には問われないが、よりにもよって愛する相手を殺傷してしまったのだ。その心の傷は消えはしない。
「他人を操って何かさせるにしても、とことん卑怯なやり方だな」
「許してはおけないねえ」
「ああ。霊は楽に逝かせてやらないし、させる人間がいるなら、そいつも逃がさないようにしよう、直」
「そうだねえ」
僕と直は、本来なら今頃幸せいっぱいだった筈の新婦の心の傷の回復を祈り、犯人逮捕を誓った。
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