体質が変わったので

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おぶさる(1)突然の発表

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 今日は僕も直も仕事が休みなので、優維ちゃんも累も直の両親の所へは行かない。なのでうちの凜と3人仲良く公園で遊んでいたところだった。
「やっぱり嬉しそうだねえ、3人共」
 町田 直まちだ なお、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「本当に仲がいいよな。特に凜と累」
 御崎 怜みさき れん。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
 僕の息子の凛と直の息子の累は、ほぼ同時に生まれたからなのか、それから毎日顔を合わせていたからか、親同士が仲が良いせいか、とにかく仲がいい。
 優維ちゃんは、僕の甥の敬を兄と思っているのか、敬がいると機嫌がいい。
「康介、敬、優維、累と凜。まとめて兄弟みたいなもんだねえ」
「ああ。昔の子供はこんな感じだったのかな」
「かもねえ。親としてはありがたいよねえ、近所にお兄ちゃん代わりに面倒見てくれる子がいるのは」
「確かにな」
 僕と直は、砂遊びをする3人を見ながら、地域の子供の育成や問題家庭の子供について話していた。
 と、声がかかった。
「あれ?お兄ちゃん。と怜君」
 声の方を振り返ると、カップルが足を止めてこちらを見ていた。
「晴ちゃんじゃないか。おはよう。久しぶり」
 カップルの女性の方がそれで笑う。
「おはよう。凜君も累君も優維ちゃんもおはよう。
 あ、紹介するね。結婚しようと思ってる彼氏」
「初めまして、三田村快みたむらかいです。お二方の事は、テレビでよく」
 男性の方が、そう言って愛想良く笑った。
「えええ!?結婚!?晴にそんな相手がいたとは驚いたねえ!」
 直が驚いた。
「言ってないもん」
「2人合わせたら快晴コンビだな」
 僕が言うと、
「そうなんですよね、あはははは!」
と晴ちゃんと快君も言い、思わず3人で笑い出した。
「いやあ、てっきり晴は腐趣味のせいで、結婚はしないのかと思ってたからねえ」
 直が言うと、晴ちゃんは、
「趣味は趣味よ。まあ、親に趣味の事は言わないけどね。お兄ちゃんも言わないでね」
と目の笑ってない笑顔で言った。晴ちゃんは昔から、腐女子というやつらしい。
「今から家へ連れて行こうと思って」
「へえ、そうかあ」
「直、だったら直も行くか?優維ちゃんと累は家で見ておくから」
「そうだねえ。お袋がテンパって何かしでかしそうだしねえ」
 直が言うと、晴ちゃんも深く頷いた。

 もう少し遊んでから、子供達を連れて家に戻り、昼食の準備にかかる。美里は今の所、僕の休みの日に合わせて仕事を入れている。今日はドラマにほんの数カット出るとかで、その撮影に出ている。
 さて。今日の昼はランチプレートにしよう。
 小さな小さなおにぎり、魚のすり身の磯辺焼き、ひじき入り豆腐ハンバーグ、ウサギのりんご、じゃがいもとニラの味噌汁。優維ちゃんはもう少し食べられるので、おにぎりを若干大きく、ハンバーグももう少し大きく。
 あとはおやつにチーズスコーンと牛乳なので、チーズスコーンの準備もしておく。
 仕切りの付いたお皿にそれらを盛りつけて、食べやすい温度になった頃、リビングに運んだ。
「ご飯できたぞー」
 バッと顔をこちらに向けるや、走って来る。それを、1人ずつエプロンを付けさせて座らせ、手を拭かせると、手を合わせて
「いただきます」
をする。
 3人共好き嫌いは今の所無さそうだ。
 優維ちゃんはスプーンやフォークで上手に食べられるようになってきたが、凜と累は、夢中になると手で掴みに行く。なのでこの時期は、手づかみできるものを意識している。
 ああ、少しずつスプーンや箸も覚えさせないとなあ。
 子供達はいつでも何事にも全力で、ご飯も夢中だ。それを見ながらこっちも同じメニューのご飯を食べていると、直が帰って来た。
「早いな」
「うん。それがねえ、打ち解けて宴会に突入しそうになった時に田舎から電話が入ってねえ。じいちゃんが転んで腕を折ったらしいんだよねえ」
「ええ!?」
 昼がまだだという直にも同じものを用意していると、そんな事を言った。
「大丈夫か、おじいさん。確か80歳くらいだったよな」
「ありがとう。うわあ、美味しそうだねえ。いただきます。
 そう、82だよう。
 あ、これすり身だあ。ビールに合いそうだねえ」
「次の宴会で出そうかな。
 じゃあ、入院か?」
「いや、自宅に帰るそうだよう。それで親父とお袋が、今から田舎にしばらく行くって」
「そうか。きれいに治ったらいいんだけどな」
「だよねえ。
 それで、明日から優維も累も預けられなくなっちゃってねえ」
「うちで預かるぞ。冴子姉にも一緒にいてもらえばより困らないしな。何より子供達が喜ぶ」
「保育園を探すまででも、頼めるかねえ」
「ああ。
 それで快君の方は?」
 訊くと、直は嬉しそうにおにぎりを頬張っていたが、ゴックンと飲み込んだ。
「何でも、マッサージ師らしいよう。今は雇われらしいけど、いずれは自分で開院したいって。それまでは2人で資金をためるとか」
「へえ。マッサージ師かあ。この頃多いよなあ」
 などと言っていると、インターフォンが鳴った。
 出てみると晴ちゃんと快君だ。
「あれ?直に用事?ここにいるよ」
 鍵を開けてしばらく待つと、2人が上がって来た。
 そして、神妙な顔付きで言った。
「お兄ちゃんと怜君に相談があって。快君の仕事先に、憑りつかれたんじゃないかって人が来るらしいの」
 僕と直は玄関先で2人からそう言われ、顔を見合わせた。



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