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うわさ(2)昼下がりのおやつタイム
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敬達は庭で遊んでいた。砂を掘るのが好きな子、ブランコが好きな子、ボール遊びが好きな子。色々いる。
中村美麗は数人と壁沿いの草むらを探索していた。
「あ。鏡」
見付けたのは、小さなかわいい手鏡だった。通行人の誰かが捨てたのだろうか。
「きれーい」
「ママが持ってるのみたい」
仲間が覗き込んで、順に顔を写す。
「いいもの見ぃ付けた」
美麗は手鏡を大事そうにポケットにしまった。
昼過ぎに、親達が迎えに現れる。
「敬」
「お母さん!あのね、今日ね、智也君と一緒に遊んだの!智也君、いっぱい鳥の事知ってるんだよ!」
「そう!友達が増えて良かったわね」
「うん!」
智也の方も、少し向こうで親に報告していたらしく、親子でこちらを見、子供同士手を振り合う。親同士は笑って頭を軽く下げ合った。
中村グループが目に入る。相変わらずの結束だが、なぜか、舞花の母親が離れている。
「舞花ちゃんのお母さん、やっと悪口を言われてるのに気付いたのね」
同じようにそれを見たらしいお母さん達が話していた。
「あんなに仲が良さそうにしてたのに」
「中村さんは、仲のいい人の悪口を陰で言いふらす人だから」
「怖いわねえ」
舞花の母親は強張った顔で、子供の手を引いて、足早に帰って行く。
「舞花ちゃん、バイバーイ」
子供は関係なく手を振り、舞花も振り返りながら手を振る。
冴子は、嫌なものを見たと、どこか気が重くなった。
「帰ろうか。美里ちゃんと千穂ちゃんと優維ちゃんも一緒におやつにしようね」
「うん!」
敬は他の園児と手を振り合いながら、冴子と並んで園を後にした。
優維と敬は、おやつの後、並んで昼寝をしている。敬は全力で遊んで疲れたらしい。
それを、親達は眺めていた。
「でも、PTAも面倒臭いのね」
千穂が溜め息をつく。
町田千穂、交通課の警察官だ。仕事ではミニパトで安全且つ大人しい運転をしなければいけないストレスからなのか、オフでハンドルを握ると別人のようになってしまうスピード狂だったが、執事の運転する車に乗ってから、安全性と滑らかさを追求するようになった、直よりも1つ年上の姉さん女房だ。こちらも7月には第2子が生まれる予定だ。
「あら。どこにいてもいるでしょ、そんな人」
美里が言う。
「まあね。でも、いい大人になってまであるとは思ってなかったもの」
「確かに、大人のすることじゃないわ。子供の頃は世界が狭くてそういう事もあるけど、段々と気の合う子といればいいって知恵がついて来るものね。
私はそれで、大抵変わり者扱いだったけど」
冴子が明るく笑うと、美里も笑う。
「あら。私もよ。友達なんて学生時代にいなかったわ」
「ああ。私は何となく話をする子はいたけど、合わせてただけね。クラブとか趣味の方に友達がいたから、本当に友達と言えるのは学校の外ばかりだったわ。
それより、気になるのはその舞花ちゃんのお母さんね」
「そうなのよ。そういうのが凄く気になるタイプっているでしょ。別の人と話すればいいだけなのに、何か、思いつめた顔になってて」
「ボスグループ、クラスを引っかき回して大変な騒ぎを起こしそう」
冴子は美里の言葉にニヤリと笑った。
「きっと怜君はこう言うわね」
3人ではもる。
「面倒臭い」
そして、おかしそうに笑った。
その頃、僕はくしゃみをしていた。
「風邪かねえ?それともとうとう、花粉症デビューかねえ?」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「花粉症は嫌だな。うん。噂だ。誰かが噂をしてるんだ、きっと」
「何の噂かねえ。報告書は全部出してるし……あ、研修かねえ?霊能師の素質のある警官を探したいとか言ってたし」
「面倒臭い。自覚があれば自分で申告するだろうに」
「隠しておきたいって思う人は、陰陽課に引っ張ってもダメだよねえ」
僕と直は言いながら、陰陽課に入った。
中村美麗は数人と壁沿いの草むらを探索していた。
「あ。鏡」
見付けたのは、小さなかわいい手鏡だった。通行人の誰かが捨てたのだろうか。
「きれーい」
「ママが持ってるのみたい」
仲間が覗き込んで、順に顔を写す。
「いいもの見ぃ付けた」
美麗は手鏡を大事そうにポケットにしまった。
昼過ぎに、親達が迎えに現れる。
「敬」
「お母さん!あのね、今日ね、智也君と一緒に遊んだの!智也君、いっぱい鳥の事知ってるんだよ!」
「そう!友達が増えて良かったわね」
「うん!」
智也の方も、少し向こうで親に報告していたらしく、親子でこちらを見、子供同士手を振り合う。親同士は笑って頭を軽く下げ合った。
中村グループが目に入る。相変わらずの結束だが、なぜか、舞花の母親が離れている。
「舞花ちゃんのお母さん、やっと悪口を言われてるのに気付いたのね」
同じようにそれを見たらしいお母さん達が話していた。
「あんなに仲が良さそうにしてたのに」
「中村さんは、仲のいい人の悪口を陰で言いふらす人だから」
「怖いわねえ」
舞花の母親は強張った顔で、子供の手を引いて、足早に帰って行く。
「舞花ちゃん、バイバーイ」
子供は関係なく手を振り、舞花も振り返りながら手を振る。
冴子は、嫌なものを見たと、どこか気が重くなった。
「帰ろうか。美里ちゃんと千穂ちゃんと優維ちゃんも一緒におやつにしようね」
「うん!」
敬は他の園児と手を振り合いながら、冴子と並んで園を後にした。
優維と敬は、おやつの後、並んで昼寝をしている。敬は全力で遊んで疲れたらしい。
それを、親達は眺めていた。
「でも、PTAも面倒臭いのね」
千穂が溜め息をつく。
町田千穂、交通課の警察官だ。仕事ではミニパトで安全且つ大人しい運転をしなければいけないストレスからなのか、オフでハンドルを握ると別人のようになってしまうスピード狂だったが、執事の運転する車に乗ってから、安全性と滑らかさを追求するようになった、直よりも1つ年上の姉さん女房だ。こちらも7月には第2子が生まれる予定だ。
「あら。どこにいてもいるでしょ、そんな人」
美里が言う。
「まあね。でも、いい大人になってまであるとは思ってなかったもの」
「確かに、大人のすることじゃないわ。子供の頃は世界が狭くてそういう事もあるけど、段々と気の合う子といればいいって知恵がついて来るものね。
私はそれで、大抵変わり者扱いだったけど」
冴子が明るく笑うと、美里も笑う。
「あら。私もよ。友達なんて学生時代にいなかったわ」
「ああ。私は何となく話をする子はいたけど、合わせてただけね。クラブとか趣味の方に友達がいたから、本当に友達と言えるのは学校の外ばかりだったわ。
それより、気になるのはその舞花ちゃんのお母さんね」
「そうなのよ。そういうのが凄く気になるタイプっているでしょ。別の人と話すればいいだけなのに、何か、思いつめた顔になってて」
「ボスグループ、クラスを引っかき回して大変な騒ぎを起こしそう」
冴子は美里の言葉にニヤリと笑った。
「きっと怜君はこう言うわね」
3人ではもる。
「面倒臭い」
そして、おかしそうに笑った。
その頃、僕はくしゃみをしていた。
「風邪かねえ?それともとうとう、花粉症デビューかねえ?」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「花粉症は嫌だな。うん。噂だ。誰かが噂をしてるんだ、きっと」
「何の噂かねえ。報告書は全部出してるし……あ、研修かねえ?霊能師の素質のある警官を探したいとか言ってたし」
「面倒臭い。自覚があれば自分で申告するだろうに」
「隠しておきたいって思う人は、陰陽課に引っ張ってもダメだよねえ」
僕と直は言いながら、陰陽課に入った。
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