体質が変わったので

JUN

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この世の終わり(5)終結と始まり

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 会議から24時間経たず、それは終息した。
 うっかり放出した神威はヨーロッパまで衝撃波のようなものとして感知されたらしいが、残っていた霊を浄化したばかりか、中国の暴走していた霊の集合体も浄化し、半島の人に憑りついていた霊も祓ったようだ。
 ゲリラを送り込んだ国はわかっているし、陣があるので証拠もあるが、認めようとはしなかった。でも、証拠と捕まった犯人という生き証人、穴から次々と霊を返されて霊能者がダウンしたという事実は、当国がシラを切ったが明らかで、国際的な非難は浴びた。
 まあそれでも罠だとか言い張るメンタルは、大したものだ。
 そしてヨルムンガンドは、やはり世界の方々で終末の噂を撒き、広めていた事がわかった。
 ただ、それ以上の事をする前に混乱となったので、傍迷惑な種をばら撒いただけとなったらしい。
 そんな事よりも、僕にとっては、兄達も全員無事で、美里も取り返せた事の方が余程重要だ。
「階級、上がったんですって?」
「うん。来月、警察大学に1ヶ月行く事になるが、警視だって。こういう省庁にまたがって何かする時に、せめて警視くらいでないと、命令とか面子とかがあるみたいだな。面倒臭い」
「また寮でしょ?美里ちゃん。その間、美味しいもの食べにどこか行かない?」
「そうねえ。いいわねえ」
「楽しそうで結構だねえ」
 僕と直は苦笑した。美里も千穂さんも、この分なら心配なさそうだ。優維ちゃんに至っては、昼寝から目も覚まさなかったそうだ。大物になりそうだな。
「御崎さん」
 呼ばれて、診察室へ入る。
「何の影響もありません。母子共に健康ですよ」
「……は?」
「母子?」
 僕と美里は、理解するのに数秒かかった。
「え!?まさか!?」
「あの甘い物ばかり食べたくなったのは!?」
「おめでとうございます」
 僕達は、無言でハイタッチを交わした。
「ああ、でも――」
 医師が笑顔を引っ込めるのに、ドキッとした。
「はい?」
「甘い物ばかり摂っていると栄養的に問題になります。気を付けて下さい」
「……はい」
 僕と美里は、神妙な顔で返事をした。
 次に呼ばれた直達は、出て来ると、笑った。
「2人目だってえ。予定は7月だってさあ」
「あら。うちと同じじゃない」
「まあ!」
「お互い同時期か。よろしく、先輩」
 僕達は笑い合い、おめでとうを言い合い、歩き出した。
 まだ、瓦礫の撤去も終わっていないし、補修の必要な建物や道路もあるし、ケガをした人もいる。でも、どうやら平穏にクリスマスも年越しも迎えられそうだ。
 青い空は、高く澄んでいた。


 

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