体質が変わったので

JUN

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とおりゃんせ(2)子供達

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 敬達は、ゆらゆらとした景色の中に呑み込まれた――と思ったら、神社の境内に立っていた。
 ただ、何か違う。子供達は違和感にキョロキョロとした。
「新しい子が来たよ」
 声がかけられて振り返る。
 子供には「変わった服」としかわからなかったが、水干を着た子がいた。他には、着物の子や、時代を感じさせる洋服の子もいた。
「……誰?ここ、どこ?」
 敬達の中でも大きい、7歳の子が訊く。中には、泣きべそをかき出している子もいた。
「ここは、天神さん」
「天神山?」
 子供達は一様に首を傾げた。
「7つまでは神のうち。7つ以上生きられなかった子が集まる所だよ」
「死んだの?僕達」
 ギョッとしてその7歳の子が訊き返す。
「新しい子が最近来ないから、呼んじゃった」
 怜が聞いていれば、傍迷惑な、と言うだろう。
「でも、このままここにいれば、死んじゃうんじゃ……?」
 彼らのリーダー格の、水干の子が、曖昧に笑う。
 それで子供達がパニックになりかけたが、敬は落ち着いていた。
「怜がいるから大丈夫だよ」
 ベソをかく子にそう言って笑いかけ、
「それまでなら、遊んでもいいよ!」
と答えた。

 お手玉、貝合わせ、福笑い。けんけん、チャンバラ、蹴鞠。
 皆、遊び出すと、遊びに夢中になった。似てはいるが知らない遊びが多いし、木登りなど、普段は止められている事も、ここでは止める親がいない。ある種、やりたい放題だ。
 貸衣装なので親が見たら卒倒しそうなことも、子供達は気にしない。
 皆で、わいわいと遊んでいた。
「ああ、楽しいなあ」
 水干の子が笑う。
「昔はここによく子供が来ていたのに、だんだんと来なくなって来たんだ。どうしてだろう?」
「うう?知らないよ?」
 敬は首を捻った。
 医療事情や衛生、栄養観念など、子供にはわからない。
「お腹空いたぁ」
 1人が言い出す。
「トイレどこ?」
 キョロキョロする子もいる。
 それで、心細さを思い出した子が出始め、1人、また1人と泣き出した。
「泣くな。怖くないぞ。ここは、何の心配もいらぬ。腹も空かぬし、病もない」
「お父さんとお母さんは?テレビとゲームとお菓子とチロちゃんは?」
「帰るぅ」
 泣くのが伝染して行く。
 元からここにいた子らは、困った顔をしたり、何かを思い出した様な顔をしたりしていた。
「怜、ここだよう。迎えに来てよう」
 敬も、流石に泣きそうになって来た。
 その時、その声が聞こえた。
「はいよ」

 僕は、慎重に跡を辿り、そこに出た。
 色々な時代の子供達がいて、泣き出したり困惑したりしているようだった。
「怜、ここだよう。迎えに来てよう」
 泣く寸前みたいな敬の声がした。
「はいよ」
 それで、パッと弾かれた様に皆がこちらを見て、敬は満面の笑みを浮かべて飛びかかって来た。
「れーんー!」
「はい、お待たせ」
 敬と一緒にここへ引き込まれた子達は、僕の周囲に集まって、それ以外の子達は、固まって僕を不審者を見るように見ていた。
「君がリーダー……ああ、代表者かな」
 水干の子が、1歩前に出る。
「大人がここへ?」
「成程。そういう場所か。
 僕は霊能師。そういう事も可能だと思ってくれていい」
 言うと、彼らは顔を見合わせて言い合い出した。
「霊能師?」
「何だそれは?」
 そうか。知らないな。
「陰陽師の仲間、みたいなもの、かな?」
 適当な説明が難しい。
「とにかく、向こうにこの子達を帰させてもらうよ」
「嫌じゃ。と言っても、そちの力にかないそうにないの。仕方ない。また、他の子を呼ぶとしよう」
 水干の子が言う。
「それも困る」
「どうせよと言うのじゃ」
 困ったように水干の子が言って、溜め息をつく。
「そうだなあ」
「力づくで、そちを倒しさえすればいいとも言えるな。何せ、ここにいれば、ケガも自然に癒えるしのう」
 彼らの目つきが変わり、こちら側の子供達にも緊張が走った。



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