589 / 1,046
トラック(2)路上駐車
しおりを挟む
工場が立ち並んだその道路沿いに行くと、路上駐車のトラックがズラリと並んで、4車線が2車線になっていた。
「昼間もよく止まってはいるみたいだけど、朝方は特に多いらしいねえ」
直がそう言う。
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「いつも?」
「らしいよ。千穂ちゃん情報だと、ここは実質一車線みたいなものだから、知ってるドライバーは、そこの角から向こうの信号までは、最初から右車線に入るんだって言ってたねえ。左を走り出しても、駐車トラックが出て来るからその度に車線変更しないといけなくて、面倒なんだって」
「確かに面倒だよな」
言いながら、まだ明け方の暗い中を、取り敢えず歩き出す。
工場が立ち並んでいるとはいえ、奥は住宅街で、所々に細い道がある。真ん中あたりに点滅信号が1つついているだけだった。
「ここ、絶対に不法横断が多いな」
「間違いないねえ」
言っているそばから、駅に向かうサラリーマンらしき中年が住宅街の方からやって来て、トラックの横まで車道に出て来ると、キョロキョロと左右を見て、走って渡って行った。
危ない。これがもう少し後になると交通量も増えるだろうしな。
「この辺りか」
手形の付けられたトラックが止まっていたという辺りへ来た。車用点滅信号と押しボタン式歩行者用信号機のある所とこの通りの端との真ん中付近だ。
「ここに何か気配が残っているわけでもないのか」
「交通事故の地縛霊でも無いのかねえ。とは言え、ドライバーにもトラックにも憑いてはなかったしねえ」
「後は、運送会社か?」
言いながら辺りを探っていると、気配がした。
「向こうか」
「うわあ、遠いねえ」
遠い方の端近くのようだ。仕方なく、僕と直は、朝からダッシュする羽目になった。
しかし。
「クッ。自転車でも用意するか?」
辿り着いた時には、親子は消えていたのだった。
翌日は、角と点滅式信号機の間、信号機と点滅式信号機の間の2カ所に分かれて待った。
なのに、
「向こう側ーっ!?」
作戦は失敗した。
その次は土曜日で、トラックは少なかった。
茜屋チームの手が空いたので、道の両側に分かれて3カ所で待ってみた。
しかし、親子は土日休みなのか、現れなかった。
「週休2日制かねえ」
「何か、納得できない」
月曜日ならまた出るだろうと、3カ所体制、自転車付きで待った。
これでだめなら、次はどうしようか。そんな心配をしていたら、気配がした。向こう側、直の向かい側らしい。今日こそはと自転車をこいで急ぐと、札で足止めされた霊2体がいた。
「やっと会えた」
僕達はホッとしながら、警戒する2人に近寄って行った。
「昼間もよく止まってはいるみたいだけど、朝方は特に多いらしいねえ」
直がそう言う。
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「いつも?」
「らしいよ。千穂ちゃん情報だと、ここは実質一車線みたいなものだから、知ってるドライバーは、そこの角から向こうの信号までは、最初から右車線に入るんだって言ってたねえ。左を走り出しても、駐車トラックが出て来るからその度に車線変更しないといけなくて、面倒なんだって」
「確かに面倒だよな」
言いながら、まだ明け方の暗い中を、取り敢えず歩き出す。
工場が立ち並んでいるとはいえ、奥は住宅街で、所々に細い道がある。真ん中あたりに点滅信号が1つついているだけだった。
「ここ、絶対に不法横断が多いな」
「間違いないねえ」
言っているそばから、駅に向かうサラリーマンらしき中年が住宅街の方からやって来て、トラックの横まで車道に出て来ると、キョロキョロと左右を見て、走って渡って行った。
危ない。これがもう少し後になると交通量も増えるだろうしな。
「この辺りか」
手形の付けられたトラックが止まっていたという辺りへ来た。車用点滅信号と押しボタン式歩行者用信号機のある所とこの通りの端との真ん中付近だ。
「ここに何か気配が残っているわけでもないのか」
「交通事故の地縛霊でも無いのかねえ。とは言え、ドライバーにもトラックにも憑いてはなかったしねえ」
「後は、運送会社か?」
言いながら辺りを探っていると、気配がした。
「向こうか」
「うわあ、遠いねえ」
遠い方の端近くのようだ。仕方なく、僕と直は、朝からダッシュする羽目になった。
しかし。
「クッ。自転車でも用意するか?」
辿り着いた時には、親子は消えていたのだった。
翌日は、角と点滅式信号機の間、信号機と点滅式信号機の間の2カ所に分かれて待った。
なのに、
「向こう側ーっ!?」
作戦は失敗した。
その次は土曜日で、トラックは少なかった。
茜屋チームの手が空いたので、道の両側に分かれて3カ所で待ってみた。
しかし、親子は土日休みなのか、現れなかった。
「週休2日制かねえ」
「何か、納得できない」
月曜日ならまた出るだろうと、3カ所体制、自転車付きで待った。
これでだめなら、次はどうしようか。そんな心配をしていたら、気配がした。向こう側、直の向かい側らしい。今日こそはと自転車をこいで急ぐと、札で足止めされた霊2体がいた。
「やっと会えた」
僕達はホッとしながら、警戒する2人に近寄って行った。
10
お気に入りに追加
198
あなたにおすすめの小説
未亡人クローディアが夫を亡くした理由
臣桜
キャラ文芸
老齢の辺境伯、バフェット伯が亡くなった。
しかしその若き未亡人クローディアは、夫が亡くなったばかりだというのに、喪服とは色ばかりの艶やかな姿をして、毎晩舞踏会でダンスに興じる。
うら若き未亡人はなぜ老齢の辺境伯に嫁いだのか。なぜ彼女は夫が亡くなったばかりだというのに、楽しげに振る舞っているのか。
クローディアには、夫が亡くなった理由を知らなければならない理由があった――。
※ 表紙はニジジャーニーで生成しました
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【R18】やがて犯される病
開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。
女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。
女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。
※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。
内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。
また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。
更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる