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百万両の夜景(2)浮世離れしたお嬢さん
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美里と千穂は、少しウインドウショッピングをしてから、混みあう雑踏を歩いていた。
と、前方で、人波が乱れる所があるようだった。立ち止まるか何かしている人がいるらしい。
「あの女の子ね」
「個性的な恰好ね」
10代終わりくらいだろうか。辺りを物珍しそうに眺めまわす女の子がいた。大きなリボンをつけ、クラシックな感じのワンピースを着ていた。
と、どこかの田舎から出て来た子と思ったのか、大学生くらいの下品な下心丸出しのグループが、チラチラと彼女に視線を送って何か相談しているのが見えた。
美里と千穂は彼女に近付き、当たり前の顔をして話しかけた。
「待たせたかしら」
「行きましょう。もう、警部もお待ちですから」
言い、両側から彼女を挟んでその場を離れた。
そして、人混みから外れたところで、足を止めた。
「あのぉ」
「大丈夫。ついて来てはいないみたい」
千穂が言い、2人は彼女と向き合った。
「あんまり良くない人に目を付けられていたみたいだったから」
「まあ。ありがとうございました。全然気づきませんでしたわ。こんなにたくさんの人が歩いているのも、大きな建物も、初めてなものでしたので、珍しくて、見とれてしまいましたの」
2人は顔を見合わせた。
どこのド田舎でも、テレビでならこんな風景は見慣れているだろうに。
「私は、霜月美里です」
「初めまして。私は成城院初音と申します」
そう言いながら、頭を丁寧に下げた。
美里と千穂は、コソコソと話し合った。
「美里ちゃんの名前を知らないって、現代日本人?」
「まあ、初めて会った時、怜も私を知らなかったけど」
「怜君は特殊よ。その頃は特に、お兄さんと直君以外に興味が無かったから」
「どこかで閉じこもって生きて来たのかしら」
にこにことしている、どこか浮世離れした初音は、辺りを見廻して、
「わあ、ガス燈がいっぱいだわ」
などと言っている。
「ガス燈?」
千穂が首を捻る。
「随分古風ね」
とてもではないが、このまま放り出すのは心配だ。
「成城院さん」
「あの、できれば、初音と呼んでいただけませんか。成城院の名は、今は忘れていたいので」
「わかったわ。初音さん。この後どこかへ行くつもりだったのかしら。私達はぶらぶらとしていただけだから、もし良かったら、案内するわよ」
「まあ!ご親切に、ありがとうございます!
大して予定があったわけではございませんの。ただ、あまり世間を知らないものですから、見てみたいと」
恥ずかしそうに答える。
「わかったわ。美里ちゃん、パンケーキはどうかしら」
「いいわね」
「まずはおやつにしましょ、ね」
「はい!」
女子3人は連れ立って、歩き始めた。
僕と直は、何かひっかかりは無いかと探していた。
と、SNSをチェックしていた直が、眉を寄せた。
「んん?詰襟のハンサムな20代の男の幽霊?」
「幽霊のコスプレか?前に魔法少女のコスプレをした20代の女もいたしな」
「どうだろうねえ。でも、表情は真剣で、2.26の頃の青年将校っぽかったって」
「……抜け出た霊の1体か?」
「聞いた話では、巫女と執事だけどねえ」
「執事って、あれだろ。『お嬢様の目は節穴でございますか』とか言って罵倒するか『わたくし、執事でございますから』でなんでもこなすスーパーマンか」
「何か、偏ってるねえ。でも、それは最近の執事だねえ。昔は、セバスチャン?」
「まあどっちにしろ、青年将校に見える格好はしてないと思うぞ」
「確かに。じゃあ、別口?影響が出始めたのかねえ」
「軍人か。追った方がいいかもな。暴れられたら、まずい気がする」
僕と直は、青年将校の行方も追い始めた。
と、前方で、人波が乱れる所があるようだった。立ち止まるか何かしている人がいるらしい。
「あの女の子ね」
「個性的な恰好ね」
10代終わりくらいだろうか。辺りを物珍しそうに眺めまわす女の子がいた。大きなリボンをつけ、クラシックな感じのワンピースを着ていた。
と、どこかの田舎から出て来た子と思ったのか、大学生くらいの下品な下心丸出しのグループが、チラチラと彼女に視線を送って何か相談しているのが見えた。
美里と千穂は彼女に近付き、当たり前の顔をして話しかけた。
「待たせたかしら」
「行きましょう。もう、警部もお待ちですから」
言い、両側から彼女を挟んでその場を離れた。
そして、人混みから外れたところで、足を止めた。
「あのぉ」
「大丈夫。ついて来てはいないみたい」
千穂が言い、2人は彼女と向き合った。
「あんまり良くない人に目を付けられていたみたいだったから」
「まあ。ありがとうございました。全然気づきませんでしたわ。こんなにたくさんの人が歩いているのも、大きな建物も、初めてなものでしたので、珍しくて、見とれてしまいましたの」
2人は顔を見合わせた。
どこのド田舎でも、テレビでならこんな風景は見慣れているだろうに。
「私は、霜月美里です」
「初めまして。私は成城院初音と申します」
そう言いながら、頭を丁寧に下げた。
美里と千穂は、コソコソと話し合った。
「美里ちゃんの名前を知らないって、現代日本人?」
「まあ、初めて会った時、怜も私を知らなかったけど」
「怜君は特殊よ。その頃は特に、お兄さんと直君以外に興味が無かったから」
「どこかで閉じこもって生きて来たのかしら」
にこにことしている、どこか浮世離れした初音は、辺りを見廻して、
「わあ、ガス燈がいっぱいだわ」
などと言っている。
「ガス燈?」
千穂が首を捻る。
「随分古風ね」
とてもではないが、このまま放り出すのは心配だ。
「成城院さん」
「あの、できれば、初音と呼んでいただけませんか。成城院の名は、今は忘れていたいので」
「わかったわ。初音さん。この後どこかへ行くつもりだったのかしら。私達はぶらぶらとしていただけだから、もし良かったら、案内するわよ」
「まあ!ご親切に、ありがとうございます!
大して予定があったわけではございませんの。ただ、あまり世間を知らないものですから、見てみたいと」
恥ずかしそうに答える。
「わかったわ。美里ちゃん、パンケーキはどうかしら」
「いいわね」
「まずはおやつにしましょ、ね」
「はい!」
女子3人は連れ立って、歩き始めた。
僕と直は、何かひっかかりは無いかと探していた。
と、SNSをチェックしていた直が、眉を寄せた。
「んん?詰襟のハンサムな20代の男の幽霊?」
「幽霊のコスプレか?前に魔法少女のコスプレをした20代の女もいたしな」
「どうだろうねえ。でも、表情は真剣で、2.26の頃の青年将校っぽかったって」
「……抜け出た霊の1体か?」
「聞いた話では、巫女と執事だけどねえ」
「執事って、あれだろ。『お嬢様の目は節穴でございますか』とか言って罵倒するか『わたくし、執事でございますから』でなんでもこなすスーパーマンか」
「何か、偏ってるねえ。でも、それは最近の執事だねえ。昔は、セバスチャン?」
「まあどっちにしろ、青年将校に見える格好はしてないと思うぞ」
「確かに。じゃあ、別口?影響が出始めたのかねえ」
「軍人か。追った方がいいかもな。暴れられたら、まずい気がする」
僕と直は、青年将校の行方も追い始めた。
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