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チューニング(4)美女付き月々1万円
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ザ・ザザザザ・・ザ・おま・・・
安岡は、ラジオが気になって、チューニングに取り組んでいた。
「おかしいなあ」
ザザザ・・
どこかで、何か音がし、声がする。しかしそれよりも、ラジオに混じる声の方が気になっていた。
ざざ・ざ・ざざざざ・・・おま・も・ねえ
自分でも何かおかしいと思うが、やめられないのだ。
ざざざ・・ざ・おまえ・ね・・・
「はあ。だめか。もう少しなのにな」
溜め息をついて電源を落とし、振り返って凍り付いた。
シーリングファンの下に、誰か知らない女が立っている。
いや、そうじゃない。シーリングファンから、知らない女が首を吊ってぶら下がっているのだ。
「う、うわ――!」
腰を抜かして、後ずさるように下がると、ラジオに当たって止まった。
女が顔を上げ、安岡を見た。
「ヒイッ!!」
そしてラジオが、音を出す。
「お前も死ね」
声も出ない。振り返ってラジオを見たが、電源は落ちている。
「何で!?」
思い出して、慌てて前を見ると、首にロープを巻いた女はすぐ目の前にいて、ただの黒い穴となった目で瞬きもせずに安岡を見つめ、ゆっくりと両手を安岡の首に掛けた。
ああ、この感触だ。そう安岡は思った。毎晩首が苦しくなる感じと、そっくりだった。
こいつだったのか。
そう思った時、不意に気道に空気が流れ込んで、むせ返った。
「ごほっ、げほっ、げほっ」
「安岡君!!」
涙を流しながら見ると、背中をさすってくれる楓太郎が見えた。
「え、な、げほっ」
「無理しないで、もう大丈夫だから」
楓太郎の肩越しに見やると、見覚えのある数人がいた。あれは確か、
「水無瀬、と、ドS霊能師」
「誰がだ、こら」
ドS霊能師――怜と直がこちらを見た。
「危ないところだったねえ。あと1分遅かったら、死んでたねえ」
「女は祓った。ここで何かあったとか聞いてないのか」
怜が訊くのに、やっと頭が回り始めた安岡が答える。
「いえ、特には。特別だって」
「でも、家賃があり得ないよねえ。それに、契約前に、近所で調べてみないとねえ」
「ああ……そうですよね……」
安岡はガックリと肩を落とし、
「そうかあ。だからこの部屋だけ安かったのかあ」
と呟いた。
後で聞くと、昔、ここに住んでいた住人の恋人が、ここで捨てられた当てつけに自殺したそうだ。シーリングファンにロープを引っかけて、首を吊って。
その後すぐに住人の男性は退去し、次の入居者は何も起こらず、そして、次に入ったのが安岡だった。
ラジオのチューニングは霊とのチューニングに似ているともいわれるが、首を吊る足場にしたアンティークのラジオをチューニングしようとし、できかかっていた安岡だから、女も現れたという事だ。
それから安岡は、元の明るく元気な様子に戻った。
楓太郎が、引っ越したのかと訊くと、
「とんでもない!霊能師が祓ってくれて、何も無いと確実な部屋だぞ?それが1万円。出てたまるかよ」
「……逞しいなあ」
楓太郎は感心して、笑ってしまった。
「ちゃんとお礼しないとなあ。正月に帰省したら、うちの酒、持って来るよ。お前と先輩の分」
「あ、そうか。安岡君の実家、造り酒屋だったね。でも、ぼくまで悪いよ」
「お前が連れて来てくれたからだろ。サンキューな。
まあ、飲んでくれって。自慢のやつ、持って来るから」
安岡はニカッと笑った。
「うん、ありがとう!」
楓太郎も笑い返し、安岡は肩を竦めた。
「ああ。1ヵ月1万円美女付きかあ。確かに『特別』な物件だったわ」
そして、
「ああ、くそ。もう1回鍋し直そうぜ」
と言い出した。
「今度は、男ばっかりでな」
安岡は、ラジオが気になって、チューニングに取り組んでいた。
「おかしいなあ」
ザザザ・・
どこかで、何か音がし、声がする。しかしそれよりも、ラジオに混じる声の方が気になっていた。
ざざ・ざ・ざざざざ・・・おま・も・ねえ
自分でも何かおかしいと思うが、やめられないのだ。
ざざざ・・ざ・おまえ・ね・・・
「はあ。だめか。もう少しなのにな」
溜め息をついて電源を落とし、振り返って凍り付いた。
シーリングファンの下に、誰か知らない女が立っている。
いや、そうじゃない。シーリングファンから、知らない女が首を吊ってぶら下がっているのだ。
「う、うわ――!」
腰を抜かして、後ずさるように下がると、ラジオに当たって止まった。
女が顔を上げ、安岡を見た。
「ヒイッ!!」
そしてラジオが、音を出す。
「お前も死ね」
声も出ない。振り返ってラジオを見たが、電源は落ちている。
「何で!?」
思い出して、慌てて前を見ると、首にロープを巻いた女はすぐ目の前にいて、ただの黒い穴となった目で瞬きもせずに安岡を見つめ、ゆっくりと両手を安岡の首に掛けた。
ああ、この感触だ。そう安岡は思った。毎晩首が苦しくなる感じと、そっくりだった。
こいつだったのか。
そう思った時、不意に気道に空気が流れ込んで、むせ返った。
「ごほっ、げほっ、げほっ」
「安岡君!!」
涙を流しながら見ると、背中をさすってくれる楓太郎が見えた。
「え、な、げほっ」
「無理しないで、もう大丈夫だから」
楓太郎の肩越しに見やると、見覚えのある数人がいた。あれは確か、
「水無瀬、と、ドS霊能師」
「誰がだ、こら」
ドS霊能師――怜と直がこちらを見た。
「危ないところだったねえ。あと1分遅かったら、死んでたねえ」
「女は祓った。ここで何かあったとか聞いてないのか」
怜が訊くのに、やっと頭が回り始めた安岡が答える。
「いえ、特には。特別だって」
「でも、家賃があり得ないよねえ。それに、契約前に、近所で調べてみないとねえ」
「ああ……そうですよね……」
安岡はガックリと肩を落とし、
「そうかあ。だからこの部屋だけ安かったのかあ」
と呟いた。
後で聞くと、昔、ここに住んでいた住人の恋人が、ここで捨てられた当てつけに自殺したそうだ。シーリングファンにロープを引っかけて、首を吊って。
その後すぐに住人の男性は退去し、次の入居者は何も起こらず、そして、次に入ったのが安岡だった。
ラジオのチューニングは霊とのチューニングに似ているともいわれるが、首を吊る足場にしたアンティークのラジオをチューニングしようとし、できかかっていた安岡だから、女も現れたという事だ。
それから安岡は、元の明るく元気な様子に戻った。
楓太郎が、引っ越したのかと訊くと、
「とんでもない!霊能師が祓ってくれて、何も無いと確実な部屋だぞ?それが1万円。出てたまるかよ」
「……逞しいなあ」
楓太郎は感心して、笑ってしまった。
「ちゃんとお礼しないとなあ。正月に帰省したら、うちの酒、持って来るよ。お前と先輩の分」
「あ、そうか。安岡君の実家、造り酒屋だったね。でも、ぼくまで悪いよ」
「お前が連れて来てくれたからだろ。サンキューな。
まあ、飲んでくれって。自慢のやつ、持って来るから」
安岡はニカッと笑った。
「うん、ありがとう!」
楓太郎も笑い返し、安岡は肩を竦めた。
「ああ。1ヵ月1万円美女付きかあ。確かに『特別』な物件だったわ」
そして、
「ああ、くそ。もう1回鍋し直そうぜ」
と言い出した。
「今度は、男ばっかりでな」
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