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復讐の風(3)痛みと恐れと悲しみと
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体を固定しておかないと、ゴロゴロと転がってどこかに激突した挙句、波に持ち上げられたと思ったら叩き落されて、無重力からいきなり床に墜落だ。
作戦はこれしかない。ないけど、かなり辛かった。
吐き気もするが、うっかり吐いたら、この揺れのせいで途中で舌を噛み切って死にかねない。
そんな中でも、周りの自衛官は誰も弱音を吐かない。
暴風に近付くと波と風が物凄く、船体が変な音を立てる。
「所定位置に着きました!」
怒鳴るように報告がなされる。
「行ってきます」
よろめきそうになるのを、根性と見栄だけで踏ん張って、甲板に出る。
暴風。子供の頃など、台風が来るとなぜかソワソワしたものだったが、あれは、何もわかっていなかったからだとよくわかる。
『直、どうだ』
『準備はOKだねえ』
直につないだパスを通じて、準備ができた事を知ると、
「んじゃ、行くか」
と、暴風の中に躍り出る。すぐ後に、結界が発動した。
中央付近まで手漕ぎボートで行くとか、無茶な事はせずに済んだ。直接手を貸すのはだめらしいが、波を立てるのは勝手だし、それで漂流物が流れるのは自然だし、何より十二神将は神ではないからグレーゾーンだと言い張って、十二神将が運んでくれる事になった。
なかなか、口が達者で、頭が回るようだ。
足元は固い方がいいからと、ボートですらない。板だ。これには皆が絶句したが、立ち回りを考えると、丈夫な板がいい。
しかし、十二神将の助けがなかったら、本当に漂流だ。
「くそう。我らの鼻先で面白くない」
「こやつ、人間が事態を収めた後で、きっと俺達も報復してやる」
「物騒だなあ」
何やらイライラと怒っている十二神将に、ちょっと心配をしつつも、人間みたいで微笑ましくも思ってしまう。そんな場合ではないとはわかってはいるのだが。
荒れ狂う暴風を突き進んで、本体の近くまで行く。
「やあ」
まずは挨拶からと、声をかけてみる。
台風の中心は目になっていて無風状態だが、これは違う。中心には強い力の塊があって、こちらに敵意を向けて来た。
神に近いが、少し違う。何だろう。
だが、考えている暇などは無さそうだ。ヒュンヒュンと見えない刃が飛んで来る。真空の刃、かまいたちだ。これをひょいと避けて、本体を包む力が伸ばして来る風の手を斬る。そして、何歩分ほどか進む。
するとまた攻撃が来て、波も押し寄せ、板を押し戻す。
この繰り返しだ。
しかし、進んでいないわけではない。風を避け、斬り、前へ進む。こちらも傷は負っているが、傷の治りの早い体質のおかげもあって、大したことはない。
そして、どうにか本体に手が届く位置にまで近付いた。
ここで浄力を叩きつけてみるが、効かない。やはり、神が怒っているというような状態なんだろうか。だからと言って、甘んじて怒りを受け入れるというわけにはいかない。
浄力でだめなら、一度取り込むしかなさそうだ。
そう思って手を伸ばしたら、突風が叩きつけられて体が浮く。
と、今度は別の方向からの風が、体の向きを変える。
「うわわわわっ」
悲鳴も風に飛ばされる。
風でいいように翻弄されているうちに、何かのはずみのように本体に接近し、接触した。
そして、千載一遇のチャンスとばかりに、僕はそれを取り込んだ。
作戦はこれしかない。ないけど、かなり辛かった。
吐き気もするが、うっかり吐いたら、この揺れのせいで途中で舌を噛み切って死にかねない。
そんな中でも、周りの自衛官は誰も弱音を吐かない。
暴風に近付くと波と風が物凄く、船体が変な音を立てる。
「所定位置に着きました!」
怒鳴るように報告がなされる。
「行ってきます」
よろめきそうになるのを、根性と見栄だけで踏ん張って、甲板に出る。
暴風。子供の頃など、台風が来るとなぜかソワソワしたものだったが、あれは、何もわかっていなかったからだとよくわかる。
『直、どうだ』
『準備はOKだねえ』
直につないだパスを通じて、準備ができた事を知ると、
「んじゃ、行くか」
と、暴風の中に躍り出る。すぐ後に、結界が発動した。
中央付近まで手漕ぎボートで行くとか、無茶な事はせずに済んだ。直接手を貸すのはだめらしいが、波を立てるのは勝手だし、それで漂流物が流れるのは自然だし、何より十二神将は神ではないからグレーゾーンだと言い張って、十二神将が運んでくれる事になった。
なかなか、口が達者で、頭が回るようだ。
足元は固い方がいいからと、ボートですらない。板だ。これには皆が絶句したが、立ち回りを考えると、丈夫な板がいい。
しかし、十二神将の助けがなかったら、本当に漂流だ。
「くそう。我らの鼻先で面白くない」
「こやつ、人間が事態を収めた後で、きっと俺達も報復してやる」
「物騒だなあ」
何やらイライラと怒っている十二神将に、ちょっと心配をしつつも、人間みたいで微笑ましくも思ってしまう。そんな場合ではないとはわかってはいるのだが。
荒れ狂う暴風を突き進んで、本体の近くまで行く。
「やあ」
まずは挨拶からと、声をかけてみる。
台風の中心は目になっていて無風状態だが、これは違う。中心には強い力の塊があって、こちらに敵意を向けて来た。
神に近いが、少し違う。何だろう。
だが、考えている暇などは無さそうだ。ヒュンヒュンと見えない刃が飛んで来る。真空の刃、かまいたちだ。これをひょいと避けて、本体を包む力が伸ばして来る風の手を斬る。そして、何歩分ほどか進む。
するとまた攻撃が来て、波も押し寄せ、板を押し戻す。
この繰り返しだ。
しかし、進んでいないわけではない。風を避け、斬り、前へ進む。こちらも傷は負っているが、傷の治りの早い体質のおかげもあって、大したことはない。
そして、どうにか本体に手が届く位置にまで近付いた。
ここで浄力を叩きつけてみるが、効かない。やはり、神が怒っているというような状態なんだろうか。だからと言って、甘んじて怒りを受け入れるというわけにはいかない。
浄力でだめなら、一度取り込むしかなさそうだ。
そう思って手を伸ばしたら、突風が叩きつけられて体が浮く。
と、今度は別の方向からの風が、体の向きを変える。
「うわわわわっ」
悲鳴も風に飛ばされる。
風でいいように翻弄されているうちに、何かのはずみのように本体に接近し、接触した。
そして、千載一遇のチャンスとばかりに、僕はそれを取り込んだ。
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