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氷姫(3)吹雪、止まず
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朝が来た。徹夜明けで皆は、僕以外、目が赤い。
「おい、大丈夫か」
風邪気味だった白井さんは、喋る元気も無く、震えていた。
天候は回復せず、吹雪で先も見えない。
でも、少し向こうに、白い影がチラチラとしているのは見える。
「このまま待った方がいいのかしら」
桃山さんが言い出した。
「この吹雪だぞ。どうするんだ」
「いっそ、旅館の方を目指すとか」
「どうやって目指すんだよ。ここがどこかもわからないし、視界も無いに等しいんだぞ」
「でも、白井君の熱が上がって来たし」
「だからって、無理なものは無理だろ。完全に遭難するよ」
「何でこんな所にきたのかしら。赤井君達が、人影を追いかけて行くから」
「他人のせいにするなよな。嫌なんて言ってなかっただろ」
大学生たちは、もめ始めた。
「こういう時はこういう風にもめるものなのかな」
「じゃあ次は、こっちに矛先が向くのか」
コソコソと、村園と守尾が言う。
「おい、お前らはどう思う」
うわあ、本当に矛先がこっちに向いた。
「この中を歩くのは危険だと思います」
「崖に気付かずまっしぐら、って事にもなりかねないしねえ」
「吹雪の中だと、上ってるのか下ってるのかもわからなくなるって、講習会で聞いたし……なあ」
僕達は、留まる派だ。
と、桃山さんが外を指さした。
「あの白い影に案内してもらえばいいじゃない」
全員、まず黙り込んだ。
「あれを、信用するって事か?」
「そうよ」
「そのあれが、ここに俺たちを連れて来たんだぞ」
「事情が変わったって言えばいいじゃない」
「聞いてくれるのか?というか、誰が?」
「プロがいるじゃないの」
うわあ。
「桃山、いい加減にしろ。例え案内してもらえたとしても、移動中の体温低下とかはどう考えてるんだよ」
「その時こういう場所があるとは限らないだろ」
ウンザリしたように赤井さんと緑川さんが嘆息し、桃山さんはそっぽを向いた。
ああ、面倒臭い事になった。
外はとにかく雪と風で、そんなに本格的な防寒対策をしているでもないので、寒い。
白い影に近寄って行くと、影はフラフラと揺れ、フッと消えた。対話の意思は無いという事か?
お堂に戻りながら考えてみる。
あれは、何がしたい?
人助けか?
それとも、ここはあいつの巣穴の中で、今僕達は、喰われるのを待っているだけなのか?
あれから悪いものは感じられないというのは、読み違いか、あいつの欺瞞か?
わからない。
お堂に入ると、ホッとした。
「ダメだな。対話する気は、少なくとも今はないらしい」
「シャイなのかなあ」
直と軽く笑いあう。
すると保科が、寄って来た。
「なあ。あれって、氷姫伝説の氷姫なのか?」
「氷姫伝説は、雪女譚の変形したやつだ。しかし雪女と違って、初めから悪意しかない。
それと比べると、今のところ、あれからは悪意をほぼ感じない。氷姫とは別物の霊かな」
「取り敢えずは、安心していいのかな」
保科は気弱な笑みを浮かべた。
とは言え、白井の発熱に水に食料に気温。救助隊に早く来てもらいたいのは間違いない。
ビョオオオッという音と共にガタガタとお堂を揺する風に、特に桃山さんの精神的衰弱が酷い。
「で、どうだった。行ってみたんだろ」
「バレてたか。ダメだ。近付いたら、逃げる」
「天気はいつ回復するんだろうねえ」
外へ目を向け、重い息を吐く。
外では、また白い影が現れて、こちらを窺っていた。
「おい、大丈夫か」
風邪気味だった白井さんは、喋る元気も無く、震えていた。
天候は回復せず、吹雪で先も見えない。
でも、少し向こうに、白い影がチラチラとしているのは見える。
「このまま待った方がいいのかしら」
桃山さんが言い出した。
「この吹雪だぞ。どうするんだ」
「いっそ、旅館の方を目指すとか」
「どうやって目指すんだよ。ここがどこかもわからないし、視界も無いに等しいんだぞ」
「でも、白井君の熱が上がって来たし」
「だからって、無理なものは無理だろ。完全に遭難するよ」
「何でこんな所にきたのかしら。赤井君達が、人影を追いかけて行くから」
「他人のせいにするなよな。嫌なんて言ってなかっただろ」
大学生たちは、もめ始めた。
「こういう時はこういう風にもめるものなのかな」
「じゃあ次は、こっちに矛先が向くのか」
コソコソと、村園と守尾が言う。
「おい、お前らはどう思う」
うわあ、本当に矛先がこっちに向いた。
「この中を歩くのは危険だと思います」
「崖に気付かずまっしぐら、って事にもなりかねないしねえ」
「吹雪の中だと、上ってるのか下ってるのかもわからなくなるって、講習会で聞いたし……なあ」
僕達は、留まる派だ。
と、桃山さんが外を指さした。
「あの白い影に案内してもらえばいいじゃない」
全員、まず黙り込んだ。
「あれを、信用するって事か?」
「そうよ」
「そのあれが、ここに俺たちを連れて来たんだぞ」
「事情が変わったって言えばいいじゃない」
「聞いてくれるのか?というか、誰が?」
「プロがいるじゃないの」
うわあ。
「桃山、いい加減にしろ。例え案内してもらえたとしても、移動中の体温低下とかはどう考えてるんだよ」
「その時こういう場所があるとは限らないだろ」
ウンザリしたように赤井さんと緑川さんが嘆息し、桃山さんはそっぽを向いた。
ああ、面倒臭い事になった。
外はとにかく雪と風で、そんなに本格的な防寒対策をしているでもないので、寒い。
白い影に近寄って行くと、影はフラフラと揺れ、フッと消えた。対話の意思は無いという事か?
お堂に戻りながら考えてみる。
あれは、何がしたい?
人助けか?
それとも、ここはあいつの巣穴の中で、今僕達は、喰われるのを待っているだけなのか?
あれから悪いものは感じられないというのは、読み違いか、あいつの欺瞞か?
わからない。
お堂に入ると、ホッとした。
「ダメだな。対話する気は、少なくとも今はないらしい」
「シャイなのかなあ」
直と軽く笑いあう。
すると保科が、寄って来た。
「なあ。あれって、氷姫伝説の氷姫なのか?」
「氷姫伝説は、雪女譚の変形したやつだ。しかし雪女と違って、初めから悪意しかない。
それと比べると、今のところ、あれからは悪意をほぼ感じない。氷姫とは別物の霊かな」
「取り敢えずは、安心していいのかな」
保科は気弱な笑みを浮かべた。
とは言え、白井の発熱に水に食料に気温。救助隊に早く来てもらいたいのは間違いない。
ビョオオオッという音と共にガタガタとお堂を揺する風に、特に桃山さんの精神的衰弱が酷い。
「で、どうだった。行ってみたんだろ」
「バレてたか。ダメだ。近付いたら、逃げる」
「天気はいつ回復するんだろうねえ」
外へ目を向け、重い息を吐く。
外では、また白い影が現れて、こちらを窺っていた。
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