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復讐の炎(2)子供
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アナウンサーが淡々とニュースを読み上げる。
『全焼した元食堂からは焼死体が2体見つかり、神崎さん夫婦と見られています。
火元は店舗部分で、灯りとして使用していたろうそくの火が、残っていた油に燃え移ったのではないかと考えられています。
長男の令音君は軽い火傷を負っていますが軽症で、首を吊ろうとしていたら火が燃え広がっていたと言っています』
テレビを聞き流していたあまねは、チラリと相棒のヒロムを見た。
ヒロムは食い入るようにテレビを見ていたが、目を吊り上げ、唇を噛んで、机に拳をドンと叩きつけた。
「心中しようとしてたって事か?首を吊ろうとしてたところが、火事で焼死した?」
乾いた笑みを浮かべ、もう一度、拳を叩きつける。
「子供を勝手に巻き込んで殺すんじゃねえ――!」
「落ち着け、ヒロム。な?幸い子供は無事だったんだし」
「それでも!心に傷は残るんだよ。親に殺されかけた恐怖と、自分だけ助かったっていううしろめたさが」
血を吐くような言葉に、易々とかけられる言葉を思い付けない。
「ヒロム」
「ああ……すまん。ちょっと感傷的になっちまった」
「いや。
そうそう。望が電話を寄こしたんだ。冬休みは当然そっちへ行っていいのよね。もう終業式なんだけどって」
あまねが言うと、ヒロムが笑う。
「何だ、それ」
「知らん。何でかわからないけど、うちに来る気でいるんだよ。どうしよう。俺1人だし、小学生とは言え女の子と2人ってまずくないか?」
「ははは!まずいかもなあ!」
「笑い事じゃないって。なあ、ヒロムも来いよ、冬休みの間」
「オレ?」
「だって、係長に預かってくれって言ったら嫌がるし、マチは寮だから無理だって言うし、本人が俺のところに来るって言うし!」
「わはははは!モテていいじゃん!」
「小学生にもてたって仕方ないだろ!通報されるわ!」
「わかった、わかった!わかったから!」
ヒロムはゲラゲラと笑い、ニュースを忘れたかのように見えた。
そして、笙野が、
「流石に夜までは可愛そうだし、迎えに行って来なさい」
と言うので、あまねとヒロムは希を迎えに行った。
魔術士の才能が出た子を集め、制御を学ばせながら普通の授業も行う特殊な学校だ。
行くと、制御に問題はないので、能力的には一般家庭に戻ってもいい。保護者なりを決めて、出所を考えてもらいたい、と職員が言う。
「保護者、ですか」
「はい。親御さんはいないと伺っていますが……悠月さんはどういう御関係でしょう。本人は、悠月さんのところに行きたいと希望していますが」
あまねとヒロムは、
(嵌めやがったな、希)
と思った。
「ええっと、事件を担当しただけの――」
「希、いい子にするから。ダメ?」
無表情のクセに、こういう時には涙を浮かべて悲しそうにしてみせる。
「女って、子供の時から女なんだな、あまね」
「……勝てる気がしないよ」
2人は揃って嘆息し、
「まあ、これについては、ちょっと今すぐには決められないので、冬休み明けにでも」
と言って、這う這うの体で施設を逃げ出したのだった。
後部座席で鼻歌を歌う希に、ヒロムが苦笑した。
「大したやつだぜ、全く」
「女優と言って頂戴」
澄まして言う希に思わずあまねは吹き出しながら、普通の子供らしくなって来たな、と少し安心した。
そして、ニュースに出て来た生き残った子供を思い出すと、その子の今後を祈らずにはいられなかった。
が、関係することはないと思っていたその子と接点を持つ事になるとは、この時にはまだ、知らされてはいなかったのだった。
『全焼した元食堂からは焼死体が2体見つかり、神崎さん夫婦と見られています。
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長男の令音君は軽い火傷を負っていますが軽症で、首を吊ろうとしていたら火が燃え広がっていたと言っています』
テレビを聞き流していたあまねは、チラリと相棒のヒロムを見た。
ヒロムは食い入るようにテレビを見ていたが、目を吊り上げ、唇を噛んで、机に拳をドンと叩きつけた。
「心中しようとしてたって事か?首を吊ろうとしてたところが、火事で焼死した?」
乾いた笑みを浮かべ、もう一度、拳を叩きつける。
「子供を勝手に巻き込んで殺すんじゃねえ――!」
「落ち着け、ヒロム。な?幸い子供は無事だったんだし」
「それでも!心に傷は残るんだよ。親に殺されかけた恐怖と、自分だけ助かったっていううしろめたさが」
血を吐くような言葉に、易々とかけられる言葉を思い付けない。
「ヒロム」
「ああ……すまん。ちょっと感傷的になっちまった」
「いや。
そうそう。望が電話を寄こしたんだ。冬休みは当然そっちへ行っていいのよね。もう終業式なんだけどって」
あまねが言うと、ヒロムが笑う。
「何だ、それ」
「知らん。何でかわからないけど、うちに来る気でいるんだよ。どうしよう。俺1人だし、小学生とは言え女の子と2人ってまずくないか?」
「ははは!まずいかもなあ!」
「笑い事じゃないって。なあ、ヒロムも来いよ、冬休みの間」
「オレ?」
「だって、係長に預かってくれって言ったら嫌がるし、マチは寮だから無理だって言うし、本人が俺のところに来るって言うし!」
「わはははは!モテていいじゃん!」
「小学生にもてたって仕方ないだろ!通報されるわ!」
「わかった、わかった!わかったから!」
ヒロムはゲラゲラと笑い、ニュースを忘れたかのように見えた。
そして、笙野が、
「流石に夜までは可愛そうだし、迎えに行って来なさい」
と言うので、あまねとヒロムは希を迎えに行った。
魔術士の才能が出た子を集め、制御を学ばせながら普通の授業も行う特殊な学校だ。
行くと、制御に問題はないので、能力的には一般家庭に戻ってもいい。保護者なりを決めて、出所を考えてもらいたい、と職員が言う。
「保護者、ですか」
「はい。親御さんはいないと伺っていますが……悠月さんはどういう御関係でしょう。本人は、悠月さんのところに行きたいと希望していますが」
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(嵌めやがったな、希)
と思った。
「ええっと、事件を担当しただけの――」
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「……勝てる気がしないよ」
2人は揃って嘆息し、
「まあ、これについては、ちょっと今すぐには決められないので、冬休み明けにでも」
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「大したやつだぜ、全く」
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そして、ニュースに出て来た生き残った子供を思い出すと、その子の今後を祈らずにはいられなかった。
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