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連続放火事件(4)憧れの王子様
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春菜は目の前に若宮が現れた時、ドキッとした。
カッコいいばかりか成績もよく、生徒会長として頼りになり、魔術士だという若宮は、ほとんどの女子の憧れの王子様と言ってもいいし、男子にもファンは多い。
かく言う春菜も、キャアキャア騒ぐひとりだった。
「新山さん。ちょっといいかな、放課後」
春菜が図書当番のために人気の無い図書室にいると、若宮が来たのだ。
「え」
春菜は緊張に体を固くした。
「学校じゃ人が多くて落ち着かないから。放課後一緒に帰ろう。それで話すよ」
「あの」
「皆には内緒にね」
そう言われ、春菜は誰にも言えなくなった。
そして放課後になると、下校して駅に向かう群れの中に混じり、偶然のように若宮と近くを歩いていた。そのまま角を曲がったりするうちに、いつの間にか、春菜と若宮だけになっていたのだった。
ドキドキと心臓が脈打ち、手の先が冷たくなって来る。
どうしたらいいのかわからないまま歩いていると、若宮が春菜に笑顔を向けた。
「新山さん。やっと落ち着いたね」
「そ、そうね。あの、話って」
「うん。ぼく、新山さんの事が気になって。色々知りたいんだ。好きなものとか、どんな本を読むのかとか。あと、家はどこなのかとか」
春菜は焦った。
家を知られたらまずい、と思った。
「2中の校区」
「……ふうん。どの辺かな。公民館の近く?公園の方?郵便局の方かな」
何と答えようかと焦っていると、背後から声がかかった。
「あれえ。春菜。今からバイト?」
同じバイト仲間だった。
「あ。デート中だった?」
「ううん」
春菜は内心でほっとした。
「あの、若宮君。私これからバイトだから。その」
若宮は笑って言った。
「そう。残念だけど、また明日だね」
それで春菜は、バイト仲間の子の腕を掴んで、そそくさとその場を後にする。それを若宮は見送った。
目だけは笑わない笑顔で。
仕事に没頭する事で、春菜は気を紛らわせていた。
(話って何?まさか、付き合おうとか?でも……。
相談してみようかしら)
そしてバイトが終わると、まずは、若宮には興味が無いと言っている友人に相談してみようかと思った。彼女なら、「自慢のつもり?」などと言い出す事は無いだろうからだ。
「お疲れ様でした」
言って、春菜はコンビニを出た。
今日もパトロールである。
同じ地区を見回るのはどうかとも思うが、どうにも気になって、あまねとヒロムは、最後の事件現場やコンビニ、春菜のいた所を重点的に回る事にした。
マチはいい顔をしなかったが、笙野とブチさんが言うと渋々受け入れ、あまねが
「目撃者と思われて狙われるかも」
と言うと、血相を変えて賛成したのだ。
「なあ、ヒロム。ヒロムはどう思ってるんだ?」
訊くと、ヒロムはううんと考えてから、笑ってあまねを見た。
「オレは春菜ちゃんを守る!」
「若宮はどうだろう」
「ううん。犯人にしてはどうかなあ」
「でも、犯人が目撃されたと思って襲うかもっていうのは本当だよ」
「え。マジでそう言ったのか?」
「当然だろ。彼女が犯人でないなら、あそこで犯人とぶつかったっていうのは本当なんだから」
「やべえ。彼女、どこだろう」
ヒロムが慌て出した。
春菜が家に帰ると、人影がそっと現れた。
そして玄関の前と窓の下に灯油を撒き、懐から杖を取り出した。
そして、魔術を発動しようとする。
「はい、そこまでな」
背後からのヒロムの声に、ビクッとその人影が振り返る。
「火をつけるなよ。罪が一気に重くなるぞ、若宮」
懐中電灯に照らし出されたのは、若宮の思いつめたような顔だった。
カッコいいばかりか成績もよく、生徒会長として頼りになり、魔術士だという若宮は、ほとんどの女子の憧れの王子様と言ってもいいし、男子にもファンは多い。
かく言う春菜も、キャアキャア騒ぐひとりだった。
「新山さん。ちょっといいかな、放課後」
春菜が図書当番のために人気の無い図書室にいると、若宮が来たのだ。
「え」
春菜は緊張に体を固くした。
「学校じゃ人が多くて落ち着かないから。放課後一緒に帰ろう。それで話すよ」
「あの」
「皆には内緒にね」
そう言われ、春菜は誰にも言えなくなった。
そして放課後になると、下校して駅に向かう群れの中に混じり、偶然のように若宮と近くを歩いていた。そのまま角を曲がったりするうちに、いつの間にか、春菜と若宮だけになっていたのだった。
ドキドキと心臓が脈打ち、手の先が冷たくなって来る。
どうしたらいいのかわからないまま歩いていると、若宮が春菜に笑顔を向けた。
「新山さん。やっと落ち着いたね」
「そ、そうね。あの、話って」
「うん。ぼく、新山さんの事が気になって。色々知りたいんだ。好きなものとか、どんな本を読むのかとか。あと、家はどこなのかとか」
春菜は焦った。
家を知られたらまずい、と思った。
「2中の校区」
「……ふうん。どの辺かな。公民館の近く?公園の方?郵便局の方かな」
何と答えようかと焦っていると、背後から声がかかった。
「あれえ。春菜。今からバイト?」
同じバイト仲間だった。
「あ。デート中だった?」
「ううん」
春菜は内心でほっとした。
「あの、若宮君。私これからバイトだから。その」
若宮は笑って言った。
「そう。残念だけど、また明日だね」
それで春菜は、バイト仲間の子の腕を掴んで、そそくさとその場を後にする。それを若宮は見送った。
目だけは笑わない笑顔で。
仕事に没頭する事で、春菜は気を紛らわせていた。
(話って何?まさか、付き合おうとか?でも……。
相談してみようかしら)
そしてバイトが終わると、まずは、若宮には興味が無いと言っている友人に相談してみようかと思った。彼女なら、「自慢のつもり?」などと言い出す事は無いだろうからだ。
「お疲れ様でした」
言って、春菜はコンビニを出た。
今日もパトロールである。
同じ地区を見回るのはどうかとも思うが、どうにも気になって、あまねとヒロムは、最後の事件現場やコンビニ、春菜のいた所を重点的に回る事にした。
マチはいい顔をしなかったが、笙野とブチさんが言うと渋々受け入れ、あまねが
「目撃者と思われて狙われるかも」
と言うと、血相を変えて賛成したのだ。
「なあ、ヒロム。ヒロムはどう思ってるんだ?」
訊くと、ヒロムはううんと考えてから、笑ってあまねを見た。
「オレは春菜ちゃんを守る!」
「若宮はどうだろう」
「ううん。犯人にしてはどうかなあ」
「でも、犯人が目撃されたと思って襲うかもっていうのは本当だよ」
「え。マジでそう言ったのか?」
「当然だろ。彼女が犯人でないなら、あそこで犯人とぶつかったっていうのは本当なんだから」
「やべえ。彼女、どこだろう」
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そして玄関の前と窓の下に灯油を撒き、懐から杖を取り出した。
そして、魔術を発動しようとする。
「はい、そこまでな」
背後からのヒロムの声に、ビクッとその人影が振り返る。
「火をつけるなよ。罪が一気に重くなるぞ、若宮」
懐中電灯に照らし出されたのは、若宮の思いつめたような顔だった。
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