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爆ぜる魔術士(6)よみがえる魔女
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疲れ果てて席に戻ったところで、分析結果が届いた。
人体の構成物の他には、整髪料と、免疫抑制剤、大量の神経伝達物質が検出された。
それと、2種類のDNA。
「片方は首から下と一致。もう片方は別人。10年前に死亡した「魔女」と一致したらしいわ」
その笙野の言葉に、全員が言葉を失う。
10年前、魔女を自称した犯罪魔術士がいた。その魔女は身体強化と火に優れており、快楽殺人と強盗を繰り返しながらアメリカ、韓国、台湾、日本と暴れる舞台を移していたのだが、最後の日本で逃走中に脳梗塞を起こして死亡。氏名不詳の「魔女」のまま被疑者死亡で幕を下ろしたという事件があった。
「ああ、魔女。ちょうどその頃、俺は高校に入ったばっかりだったなあ」
ヒロムが思い出してポンと手を打った。
「うん。僕の周囲も騒がしかったな」
あまねも言う。
「そうか。お前らはその頃16か。
俺は交番勤務だったからな。どこかですれ違うかもと毎日緊張していたぞ。な」
ブチさんが言うと、マチが口を尖らせた。
「私は18ですよう。ピチピチの女子高生でした!」
「で、その魔女のDNAですか?」
ブチさんが聞こえないふりをした。
「ええ。何か移植でもされたのかしら」
笙野が言うのに、あまねが嫌そうに言う。
「爆ぜた頭部から検出したんですよね。という事は、脳?」
各々考える。
「脳移植?聞いた事ないぜ」
「その魔女が脳梗塞を起こした時、どこに運ばれて遺体はどうしたんですか」
「帝都医大に運ばれて、緊急手術をしたのちに死亡を確認。遺体は火葬されて無縁仏として処理された」
そこで、気付く。
「帝都医大で10年前と言えば、ヒロム」
「あ。深見が在籍してた期間と被るな、あまね」
「ますます怪しいってわけか」
ブチさんが鼻から豪快に息を吐き出した。
あまねとヒロムは、深見のところを訪れた。
「浅井さんの件でまだ何か」
深見は楽しそうに言った。
「魔女」
あまねが言うと、深見はわずかに瞳孔を収縮させた。
「――の手術をし、死亡が確認された後に解剖をしたのは、深見先生だと伺いました」
「はい。よく覚えていますよ」
深見はどこかを見つめながら言った。
「獄炎を操り、大の男も敵わないような力と、軽やかで素早い身のこなしを見せつけた、最高の魔術士。脳は梗塞を起こした下垂体がダメになっていましたが、あとはきれいなものでした。
生きて、魔術を使う時はどうなるのか。それが見たい。
どんなふうに脳が働いて、どう変化するのか。
この脳がどうやってあの炎を生み出したのか。直にそれを見てみたい」
そして、ハッと我に返ったようにあまねを見て、笑った。
「それが何か」
「その脳はどうしましたか」
「火葬されましたからねえ。流石に燃え残ったりはしませんでしたよ」
「そうですか。
脳、ね」
深見はうっとりとしたような目をあまねに向け、囁くように言った。
「この前、直にあなたが魔術を使う所を見て、感激しました。あの短時間で確実に魔式を読み、キャンセルする魔式を組み立て、撃つ。その演算能力は大したものです。そもそもキャンセルなんて魔術は聞いた事もない。一体あなたの脳はどうなっているのかと、あなたの脳を思うと眠れません。
せめて、死んだら献体してくれませんか。あなたの頭を解剖したい。あなたの脳が欲しい」
ヒロムは薄気味悪そうな顔をして深見を凝視し、あまねは平静を装って、
「ただの器用貧乏ですよ」
と言いながら、僅かに座り直して距離を開けた。
「ヒロム!何で助けない!?」
「いやあ、悪い悪い。薄気味悪くてよぉ」
「僕はマジで、脳みそ貸して下さいとか言われるかと思って怖かった!」
庁舎へ戻る車に乗り込んだ途端、あまねはヒロムに噛みついた。
「悪かったって、な。ラーメンおごってやるから!」
「……チャーシューデラックス」
「う。給料前に高いヤツを……わかった!奢る!」
そこにあるとわかっているのに届かない。そんなイライラする気分だった。
人体の構成物の他には、整髪料と、免疫抑制剤、大量の神経伝達物質が検出された。
それと、2種類のDNA。
「片方は首から下と一致。もう片方は別人。10年前に死亡した「魔女」と一致したらしいわ」
その笙野の言葉に、全員が言葉を失う。
10年前、魔女を自称した犯罪魔術士がいた。その魔女は身体強化と火に優れており、快楽殺人と強盗を繰り返しながらアメリカ、韓国、台湾、日本と暴れる舞台を移していたのだが、最後の日本で逃走中に脳梗塞を起こして死亡。氏名不詳の「魔女」のまま被疑者死亡で幕を下ろしたという事件があった。
「ああ、魔女。ちょうどその頃、俺は高校に入ったばっかりだったなあ」
ヒロムが思い出してポンと手を打った。
「うん。僕の周囲も騒がしかったな」
あまねも言う。
「そうか。お前らはその頃16か。
俺は交番勤務だったからな。どこかですれ違うかもと毎日緊張していたぞ。な」
ブチさんが言うと、マチが口を尖らせた。
「私は18ですよう。ピチピチの女子高生でした!」
「で、その魔女のDNAですか?」
ブチさんが聞こえないふりをした。
「ええ。何か移植でもされたのかしら」
笙野が言うのに、あまねが嫌そうに言う。
「爆ぜた頭部から検出したんですよね。という事は、脳?」
各々考える。
「脳移植?聞いた事ないぜ」
「その魔女が脳梗塞を起こした時、どこに運ばれて遺体はどうしたんですか」
「帝都医大に運ばれて、緊急手術をしたのちに死亡を確認。遺体は火葬されて無縁仏として処理された」
そこで、気付く。
「帝都医大で10年前と言えば、ヒロム」
「あ。深見が在籍してた期間と被るな、あまね」
「ますます怪しいってわけか」
ブチさんが鼻から豪快に息を吐き出した。
あまねとヒロムは、深見のところを訪れた。
「浅井さんの件でまだ何か」
深見は楽しそうに言った。
「魔女」
あまねが言うと、深見はわずかに瞳孔を収縮させた。
「――の手術をし、死亡が確認された後に解剖をしたのは、深見先生だと伺いました」
「はい。よく覚えていますよ」
深見はどこかを見つめながら言った。
「獄炎を操り、大の男も敵わないような力と、軽やかで素早い身のこなしを見せつけた、最高の魔術士。脳は梗塞を起こした下垂体がダメになっていましたが、あとはきれいなものでした。
生きて、魔術を使う時はどうなるのか。それが見たい。
どんなふうに脳が働いて、どう変化するのか。
この脳がどうやってあの炎を生み出したのか。直にそれを見てみたい」
そして、ハッと我に返ったようにあまねを見て、笑った。
「それが何か」
「その脳はどうしましたか」
「火葬されましたからねえ。流石に燃え残ったりはしませんでしたよ」
「そうですか。
脳、ね」
深見はうっとりとしたような目をあまねに向け、囁くように言った。
「この前、直にあなたが魔術を使う所を見て、感激しました。あの短時間で確実に魔式を読み、キャンセルする魔式を組み立て、撃つ。その演算能力は大したものです。そもそもキャンセルなんて魔術は聞いた事もない。一体あなたの脳はどうなっているのかと、あなたの脳を思うと眠れません。
せめて、死んだら献体してくれませんか。あなたの頭を解剖したい。あなたの脳が欲しい」
ヒロムは薄気味悪そうな顔をして深見を凝視し、あまねは平静を装って、
「ただの器用貧乏ですよ」
と言いながら、僅かに座り直して距離を開けた。
「ヒロム!何で助けない!?」
「いやあ、悪い悪い。薄気味悪くてよぉ」
「僕はマジで、脳みそ貸して下さいとか言われるかと思って怖かった!」
庁舎へ戻る車に乗り込んだ途端、あまねはヒロムに噛みついた。
「悪かったって、な。ラーメンおごってやるから!」
「……チャーシューデラックス」
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