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爆ぜる魔術士(3)魔術士研究
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顔を洗い、笙野が「モデル代」として差し入れたコーヒーとベーグルで朝食にし、あまねとヒロムは捜査会議に出た。
昨夜のDV男こと浅井康太の遺体は内側から圧力がかかったように頭部が弾け飛んでおり、その原因はまだ不明だった。
それと、魔術を使えなかった人間が何らかの方法で魔術を使えるようになったらしいとの事なので、そちらの調査をしなくてはいけない。
遺体や飛び散った残留物を検査している最中で、詳しい事は大してわかっていない。
現在ではこの程度だった。
「じゃあ、さっそく始めてちょうだい」
笙野がキリッとして言い、それに、あまね、ヒロム、ブチさん、マチが返事をして、動き出す。
あまねとヒロムは、浅井の立ち回り先からだ。
「この浅井ってやつ、一応大会社に勤めてたんだな」
そこは、誰もが知る大手の製薬会社だった。就職試験の倍率も高いが給料も高い。浅井はここで、営業をしていたらしい。
担当しているのは大学病院が主だったが、中に、研究室があった。
「深見魔術研究室?」
そこだけが、毛色が変わって見えた。
「魔術研究か」
「あ。何か知ってるかもだぜ。人を魔術士にする方法」
「よし、ここから行くか」
あまねとヒロムは、そこから行く事にした。
深見嘉之。40になったばかりだが、魔術研究者としては日本の第一人者である。スマートで、理知的だった。魔術士ではあるが、見たものを完全に記憶できるというものだった。
「浅井さんですか。ええ。うちに薬品を色々と入れてくれていますよ」
深見はあまねとヒロムにコーヒーを勧めながら答えた。
「どういう人だと思われましたか」
あまねが訊くと、深見はううんと少し考えてから口を開いた。
「プライドは高かったですね。それと、私に対する時と秘書の子に対する時とでは、態度も声音も違っていたようで。自分よりも下だと思う人間には、冷たかったというか」
「魔術や魔術士について何か言っていたという事は」
「当たり障りのない事しか……まあ、魔術が使える人間が羨ましいとは言っていましたが。どの程度本気かは知りませんよ。何せ、ここは魔術士を研究する研究室ですからね」
そう言って深見は少し笑った。
「あの、魔術士の研究とは?」
ヒロムが訊くと、深見は機嫌よく教えた。
「魔素を取り込んで任意に放出するのが魔術ですよね。
では、どこから取り込んで、どこで固有の魔式を乗せ、どこから放出するのでしょう。それ専門の器官などは見つかっていませんよ。
さらに、人によって使える魔術の系統が違うのはなぜでしょう。
遺伝では何も説明がつかないのは御存知でしょうが、それならなぜなのか。ますますわかりません。
私は魔術そのものよりも、そういった魔術士についてに興味を引かれましてね」
「確かに、『使えるから魔術士だ』。それ以上の説明は現在の所されていませんね。もしわかれば、魔術士を辞めたい人にも、魔術士になりたい人にも朗報でしょうか」
口元で笑いながらあまねが言うと、深見も口許で笑いながら頷いた。
「ええ。そうでしょうね」
「それで、研究はどの程度進んでいらっしゃるんですか」
「秘密、です」
深見はニッコリと笑った。
建物から出て、部屋の窓を見上げながらヒロムがブツブツと言う。
「何か気に入らねえ。胡散臭いぜ」
「何らかの成果が出ていて、被検体として浅井を魔術士に変えたという仮説は成り立つ。けど、何も証拠がないしなあ」
「ちょっと、深見の野郎を探ってみようぜ」
「そうだな」
あまねとヒロムはそう決めて、駐車場に向かった。
それを窓から見送った深見は、薄い唇を引き上げ、呟いた。
「昨日、浅井の魔術をキャンセルしたのは、あっちの魔術士だな。興味深い。欲しいな、あの脳が」
昨夜のDV男こと浅井康太の遺体は内側から圧力がかかったように頭部が弾け飛んでおり、その原因はまだ不明だった。
それと、魔術を使えなかった人間が何らかの方法で魔術を使えるようになったらしいとの事なので、そちらの調査をしなくてはいけない。
遺体や飛び散った残留物を検査している最中で、詳しい事は大してわかっていない。
現在ではこの程度だった。
「じゃあ、さっそく始めてちょうだい」
笙野がキリッとして言い、それに、あまね、ヒロム、ブチさん、マチが返事をして、動き出す。
あまねとヒロムは、浅井の立ち回り先からだ。
「この浅井ってやつ、一応大会社に勤めてたんだな」
そこは、誰もが知る大手の製薬会社だった。就職試験の倍率も高いが給料も高い。浅井はここで、営業をしていたらしい。
担当しているのは大学病院が主だったが、中に、研究室があった。
「深見魔術研究室?」
そこだけが、毛色が変わって見えた。
「魔術研究か」
「あ。何か知ってるかもだぜ。人を魔術士にする方法」
「よし、ここから行くか」
あまねとヒロムは、そこから行く事にした。
深見嘉之。40になったばかりだが、魔術研究者としては日本の第一人者である。スマートで、理知的だった。魔術士ではあるが、見たものを完全に記憶できるというものだった。
「浅井さんですか。ええ。うちに薬品を色々と入れてくれていますよ」
深見はあまねとヒロムにコーヒーを勧めながら答えた。
「どういう人だと思われましたか」
あまねが訊くと、深見はううんと少し考えてから口を開いた。
「プライドは高かったですね。それと、私に対する時と秘書の子に対する時とでは、態度も声音も違っていたようで。自分よりも下だと思う人間には、冷たかったというか」
「魔術や魔術士について何か言っていたという事は」
「当たり障りのない事しか……まあ、魔術が使える人間が羨ましいとは言っていましたが。どの程度本気かは知りませんよ。何せ、ここは魔術士を研究する研究室ですからね」
そう言って深見は少し笑った。
「あの、魔術士の研究とは?」
ヒロムが訊くと、深見は機嫌よく教えた。
「魔素を取り込んで任意に放出するのが魔術ですよね。
では、どこから取り込んで、どこで固有の魔式を乗せ、どこから放出するのでしょう。それ専門の器官などは見つかっていませんよ。
さらに、人によって使える魔術の系統が違うのはなぜでしょう。
遺伝では何も説明がつかないのは御存知でしょうが、それならなぜなのか。ますますわかりません。
私は魔術そのものよりも、そういった魔術士についてに興味を引かれましてね」
「確かに、『使えるから魔術士だ』。それ以上の説明は現在の所されていませんね。もしわかれば、魔術士を辞めたい人にも、魔術士になりたい人にも朗報でしょうか」
口元で笑いながらあまねが言うと、深見も口許で笑いながら頷いた。
「ええ。そうでしょうね」
「それで、研究はどの程度進んでいらっしゃるんですか」
「秘密、です」
深見はニッコリと笑った。
建物から出て、部屋の窓を見上げながらヒロムがブツブツと言う。
「何か気に入らねえ。胡散臭いぜ」
「何らかの成果が出ていて、被検体として浅井を魔術士に変えたという仮説は成り立つ。けど、何も証拠がないしなあ」
「ちょっと、深見の野郎を探ってみようぜ」
「そうだな」
あまねとヒロムはそう決めて、駐車場に向かった。
それを窓から見送った深見は、薄い唇を引き上げ、呟いた。
「昨日、浅井の魔術をキャンセルしたのは、あっちの魔術士だな。興味深い。欲しいな、あの脳が」
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