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ドライブ
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廊下に出ると、マンションの敷地の端に、霊田さん改め早瀬さんと犬がこちらを見上げて立っているのが見えた。
榊原さんが乗ってきたという車で行くことになっており、近くのコインパーキングへ向かう。
それを、近づけない早瀬さんが恨めしそうな目を向けながら、一定の距離を置いて着いてくる。
車はもしかしたら外車なんじゃないかと思ったが、一応国産だった。ただし高級車には違いなく、エンジンは静かでシートの座り心地はいい。営業車はもちろん、実家の父親の車とは訳が違う。
「じゃあ出発しますよ」
榊原さんは後部座席に並んだ俺と嶋田さんにそう言って、静かに、滑らかに車を発進させた。
道路はほどほどに混んでいた。平日の方が混むのだ。
しかし交差点にさしかかった時、横から車が突っ込んできた。
「わっ!」
俺は事故を覚悟したが、榊原さんはそれを華麗に避け、事故を回避した。
「危ないなあ」
「信号無視でしたね」
俺と嶋田さんが言うのに、榊原さんがポツリと言う。
「早瀬さんの妨害が始まったようですね」
それで、車内に緊張感が満ちた。
「シートベルトをしておいてください」
榊原さんが言うのに、俺と嶋田さんは急いでそれに従った。
前を走るトラックの荷物が崩れて積み荷が散乱する。
横を走るバイクが突然スリップして倒れたのは二回。
横道から自転車が飛び出して来たのは四回。
玉突き事故に巻き込まれそうになる。
横合いから追突されそうになったのは三回。
事故ってこんなにあるんだな、と改めて考えていたら、フロントガラスにカラスが突っ込んできたし、緊急工事や事故がやたらとあって回り道ばかり指示されている。
「妨害って、凄いんやなあ」
思わず感心してしまう。
「まあ、向こうも必死だね。成仏させられるんだから」
「確かにそうですねえ」
俺たちは三人とも、呆れるやら感心するやらだった。
普通に行けば車で一時間もかかるかどうかという距離だそうだが、既に、二時間半は走っている。
「あの山の中腹にあるんですよ」
やっと榊原さんがそう言ったので安心した直後、落石で危うく岩が車に直撃するところだった。
疲れ果て、神経をすり減らし、どうにかこうにかそこに着いた時には、三人とも心から安堵していた。
「伯父さん」
榊原さんがそう声をかけながら玄関のガラス戸を開けると、お香の上品ないい香りの中、上品そうな壮年の男性がそこに立っていた。車の音が聞こえたのだろうか。
「いらっしゃい。
まあ、挨拶は後で。とにかく先に、それを出しなさい」
言われて、榊原さんが写真立てとキーホルダーを出して男性に渡した。
部屋で見た時より、写真は黄ばみ、キーホルダーからは何か粘液がしたたっているように見えた。
榊原さんが乗ってきたという車で行くことになっており、近くのコインパーキングへ向かう。
それを、近づけない早瀬さんが恨めしそうな目を向けながら、一定の距離を置いて着いてくる。
車はもしかしたら外車なんじゃないかと思ったが、一応国産だった。ただし高級車には違いなく、エンジンは静かでシートの座り心地はいい。営業車はもちろん、実家の父親の車とは訳が違う。
「じゃあ出発しますよ」
榊原さんは後部座席に並んだ俺と嶋田さんにそう言って、静かに、滑らかに車を発進させた。
道路はほどほどに混んでいた。平日の方が混むのだ。
しかし交差点にさしかかった時、横から車が突っ込んできた。
「わっ!」
俺は事故を覚悟したが、榊原さんはそれを華麗に避け、事故を回避した。
「危ないなあ」
「信号無視でしたね」
俺と嶋田さんが言うのに、榊原さんがポツリと言う。
「早瀬さんの妨害が始まったようですね」
それで、車内に緊張感が満ちた。
「シートベルトをしておいてください」
榊原さんが言うのに、俺と嶋田さんは急いでそれに従った。
前を走るトラックの荷物が崩れて積み荷が散乱する。
横を走るバイクが突然スリップして倒れたのは二回。
横道から自転車が飛び出して来たのは四回。
玉突き事故に巻き込まれそうになる。
横合いから追突されそうになったのは三回。
事故ってこんなにあるんだな、と改めて考えていたら、フロントガラスにカラスが突っ込んできたし、緊急工事や事故がやたらとあって回り道ばかり指示されている。
「妨害って、凄いんやなあ」
思わず感心してしまう。
「まあ、向こうも必死だね。成仏させられるんだから」
「確かにそうですねえ」
俺たちは三人とも、呆れるやら感心するやらだった。
普通に行けば車で一時間もかかるかどうかという距離だそうだが、既に、二時間半は走っている。
「あの山の中腹にあるんですよ」
やっと榊原さんがそう言ったので安心した直後、落石で危うく岩が車に直撃するところだった。
疲れ果て、神経をすり減らし、どうにかこうにかそこに着いた時には、三人とも心から安堵していた。
「伯父さん」
榊原さんがそう声をかけながら玄関のガラス戸を開けると、お香の上品ないい香りの中、上品そうな壮年の男性がそこに立っていた。車の音が聞こえたのだろうか。
「いらっしゃい。
まあ、挨拶は後で。とにかく先に、それを出しなさい」
言われて、榊原さんが写真立てとキーホルダーを出して男性に渡した。
部屋で見た時より、写真は黄ばみ、キーホルダーからは何か粘液がしたたっているように見えた。
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