同居人

JUN

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お茶会

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「好きな子に言えんで写真を持つとかはわからんでもないけど、勝手に恋人みたいに写真立てに収めたり、キーホルダーを拾ったんかもしれんけど、返さんと持つのもアカンなあ」
 言うと、榊原さんは真面目な顔で続けた。
「まあ、それだけならまだ、気弱な男のいじらしい恋心と言ってもいいとしても、これ、早瀬さんの執着心がかなり染みついて、そんな甘酸っぱいもんじゃなくなってますよ」
 キーホルダーを指先でつまんで睨み付けるようにして言う。
 嶋田さんも気持ち悪いと呟いて、距離を取った。
「それに、いうなれば取り憑いてるんですか」
「そうだね。これが未練の中心みたいになってますね。何か、これも写真も、液体が付いた跡があるな。唾液かな。
 これをお焚き上げして成仏させないと」
 毎日写真とキーホルダーを眺め、舐め、出かける時などには天井裏にこっそりと隠していたのを想像すると、いじましいというより、気持ち悪い。
 榊原さんは嫌そうにそれをビニール袋に入れて、かばんに入れた。
「あ。お茶でもどうぞ。ケーキも」
 俺はそう言ってふたりを座らせ、いそいそと紅茶を淹れ始めた。ティーバッグをぽちゃぽちゃするだけだが。それと、冷蔵庫からケーキを出す。
 それらをテーブルに持って行くと、三人でそれを囲んだ。
「いただきます。
 はあ、美味しい」
「これ、駅前のでしょう。あそこ人気だそうですね。女性社員が言ってましたよ」
「いやあ、よくわからなかったんですけど、美味そうに見えたんで」
 榊原さんが、軽くニヤリとした。張り込んだな、と目で言われている気がした。一個六百八十円のケーキなんて、俺だけ、もしくは俺と榊原さんだけなら、絶対に買わない。
「こほん。それで、お焚き上げというのは」
 俺がケーキが倒れそうになって四苦八苦しているのをよそに、きれいにスマートにケーキを食べている榊原さんに訊くと、榊原さんはこれまた優雅に紅茶のカップを傾けて口を開いた。
「伯父に頼みましょう。
 その前に何か妨害してくるかもしれないので、できればこのまま三人で行きたいのですが」
「ああ、それもそうですね。依り代的なものを持ち出されたら、絶対にわかるでしょうしね」
「私もそれで構いません。行きます」
 俺たちは一緒に出かけることにして、紅茶とケーキを片付けた。
「それにしても、きれいにしてらっしゃるんですね」
 嶋田さんが、ようやく余裕ができたという感じでそう言う。
「いやあ、それほどでも」
 照れたように言って、俺は実家の部屋でなくてよかったと心から思った。向こうには色々なものがごちゃごちゃと置いてあって、こんなに片付いてはいない。
 しかし、客用のカップが無かったのを思い出して、会社の客用のものを借りてきたのは内緒だ。こっそりと返しておかなければ……。そして、その内に俺も用意しておこう。
 俺は密かに、買い物リスト追加した。







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