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負けられない戦い
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それからすぐに防音室へ行き、一谷たちが持っていた楽譜を見ながらまずは彼らだけの演奏を聴くことになった。ドラムは抜きだが。
何はともあれ、狭い。しかし、仕方がない。
どこかで聞いたことのあるメロディだと思っていたら、人気グループの曲だった。
しかし本物を聞いて知っている分、迫力が足りないとか、スピードがどうとか、比べてマイナス点をつけてしまう。
それにやっぱり、楽器がエレキギターだったり電子ピアノだったりするだけで、あんまりロックという感じがしない。
考え込んでいたら、親父がピアノの前に座った。
「いいか」
そう言って、チューリップを弾きだす。童謡のあれだ。
そして最後まで行くと、今度は弾き方を変えた。
「うおお、ロックなチューリップだ!」
「チューリップが首を縦に振るのが見えるでござる!」
一谷たちが感動しているのをよそに、俺は考えていた。ロックたらんとする要素を。
それで今度は、エレキバイオリンを構えると、皆がこの前聞いた『カルメン変奏曲』を弾きだした。
「おおお!カルメンがロックフェスでござる!」
「この前と同じ曲なのに違う!」
「勝てるんじゃねえ!?」
それに勇実が言う。
「練習あるのみだぜ!まずは選曲からやり直した方がいいんじゃねえか。あんまり有名すぎるグループのコピーだとアラも目立つし、アンチやファンが点数を辛くするかもしれねえ」
何かものすごく勇実もやる気だ。
「でも、皆が知ってる曲の方が親しみもわくよ」
春弥が言うのに、前川が提案する。
「じゃあ、アニメとかクラシックとか?」
なんでもいいが、どうしてやらないお前らがやる気に満ちあふれてるんだ。
「アニメだとどういうのがいいんだ?ターゲットの年代はバラバラだし、アニメを見ない人もいるだろ。全員が知ってそうな番組といえば……」
親父はそれ以上口を挟まず、いつの間にか部屋を出て行った。
曲を絞り込む中で誰もが知るクラシックとして『カノン』を叶が推したのだが、これは俺が反対票を投じた。
わがままではあるが、カノンは先に友田部長と一緒に弾くと約束したので、どうしても引っかかったのだ。その代わり、精一杯協力することにした。
それから毎日、クラブのない日は放課後ずっと、クラブの日は終わってから、練習をした。
もう、たゆたんが誰でもいい。練習そのものが楽しくなっていた。
そして気付けば、百山も面白そうと言って参加することになり、ミキサーを担当してくれることになった。
こうして俺たちは毎日休み時間もああでもないこうでもないと相談しており、小田先輩のような輩を自然とシャットアウトすることになっていたと気付いたのは、終わってからのことになる。
「楽しみだね!写真いっぱい撮るね!」
春弥がにこにこして言えば、勇実は、
「写真、写真に撮らせてくれよな!絶対に!」
と言う。
そうして、ゴールデンウィークが近づいてきた。
何はともあれ、狭い。しかし、仕方がない。
どこかで聞いたことのあるメロディだと思っていたら、人気グループの曲だった。
しかし本物を聞いて知っている分、迫力が足りないとか、スピードがどうとか、比べてマイナス点をつけてしまう。
それにやっぱり、楽器がエレキギターだったり電子ピアノだったりするだけで、あんまりロックという感じがしない。
考え込んでいたら、親父がピアノの前に座った。
「いいか」
そう言って、チューリップを弾きだす。童謡のあれだ。
そして最後まで行くと、今度は弾き方を変えた。
「うおお、ロックなチューリップだ!」
「チューリップが首を縦に振るのが見えるでござる!」
一谷たちが感動しているのをよそに、俺は考えていた。ロックたらんとする要素を。
それで今度は、エレキバイオリンを構えると、皆がこの前聞いた『カルメン変奏曲』を弾きだした。
「おおお!カルメンがロックフェスでござる!」
「この前と同じ曲なのに違う!」
「勝てるんじゃねえ!?」
それに勇実が言う。
「練習あるのみだぜ!まずは選曲からやり直した方がいいんじゃねえか。あんまり有名すぎるグループのコピーだとアラも目立つし、アンチやファンが点数を辛くするかもしれねえ」
何かものすごく勇実もやる気だ。
「でも、皆が知ってる曲の方が親しみもわくよ」
春弥が言うのに、前川が提案する。
「じゃあ、アニメとかクラシックとか?」
なんでもいいが、どうしてやらないお前らがやる気に満ちあふれてるんだ。
「アニメだとどういうのがいいんだ?ターゲットの年代はバラバラだし、アニメを見ない人もいるだろ。全員が知ってそうな番組といえば……」
親父はそれ以上口を挟まず、いつの間にか部屋を出て行った。
曲を絞り込む中で誰もが知るクラシックとして『カノン』を叶が推したのだが、これは俺が反対票を投じた。
わがままではあるが、カノンは先に友田部長と一緒に弾くと約束したので、どうしても引っかかったのだ。その代わり、精一杯協力することにした。
それから毎日、クラブのない日は放課後ずっと、クラブの日は終わってから、練習をした。
もう、たゆたんが誰でもいい。練習そのものが楽しくなっていた。
そして気付けば、百山も面白そうと言って参加することになり、ミキサーを担当してくれることになった。
こうして俺たちは毎日休み時間もああでもないこうでもないと相談しており、小田先輩のような輩を自然とシャットアウトすることになっていたと気付いたのは、終わってからのことになる。
「楽しみだね!写真いっぱい撮るね!」
春弥がにこにこして言えば、勇実は、
「写真、写真に撮らせてくれよな!絶対に!」
と言う。
そうして、ゴールデンウィークが近づいてきた。
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