7 / 10
貴史が遠足に行きました(4)画伯誕生。か?
しおりを挟む
事故と突然の逮捕劇に大きな騒ぎとなったが、貴史たちはそそくさと公園に戻った。
戻るとお昼の時間で、集合場所へ行ってお弁当を食べる。
「どこで書いてたのかしら。先生、探したのにわからなかったわ」
一応教師が見回りをしていたのだが、見つからなかったようだ。
「それはその……」
「秘密よ、先生。絵を楽しみにしていて」
「え、えへへ。うん」
担任の田端は怪しみながらも、
「入っちゃいけないところは入っちゃだめよ」
と言うのにとどめ、
「あんまり回ってないところ……あ、テニスコートはまさか誰も行ってないと思って行ってないわ」
とつぶやき、ふと、隊長たちに目をとめた。
「どうしたのかしら、その犬とか」
どう考えても、朝には居なかった。
「家が近いから、来ちゃったみたいね」
亜弓が言うと、隊長も舌を出してハッハッと言う。
「まあ、仕方が無いわね。もう次はダメよ」
「はあい」
「オカマイナクー」
その日、現場にいた警察官から尚史に連絡が行き、あっさりと貴史たちのことはバレた。
一応、黙って抜け出したことは叱られたが、よくやったと褒められた。
そして、あのおじさんは無事に宝石を売って会社を建て直すことができそうだと、お菓子をお礼に持ってきてくれた。
そして、問題の写生だ。
貴史たちは画用紙をほぼ灰色に塗りたくって提出した。
教師陣が誰も来てそうにないところである駐車場の、石を題材にしたと言ってある。
それを遊びに来た春彦に見せて遠足の話をすると、春彦は爆笑した。尚史は苦笑している。
「お前は、大物になりそうだな」
「そうかなあ」
「おう」
「ありがとう、春ちゃん。
それでね、お弁当が凄く美味しかったんだよ。春ちゃんもきっとびっくりしたよ。お菓子も皆で食べたんだあ。
あ、そうだ。お菓子食べよう。おじさんがくれんだよ」
貴史はうきうきとお菓子を出してくる。
「隊長、ジミーくん、モモちゃん、ハリーじい、ハムさん。おやつにしよう」
それで彼らも集まってくる。
犬用のクッキーと果物などを準備し、揃っておやつだ。
「まあ、何事もなく無事で、犯人も捕まえられたし、よかったな」
春彦はそう言って尚史の肩をばんばんと叩く。
「まったく。たかが遠足と思っていたのに、知らないうちに大冒険してたんだからな」
「くそ度胸はお前譲り、天然なら恵美ちゃん譲りだな」
「ひとごとだと思いやがって、春彦は」
春彦と尚史は言い合っていたが、貴史の書いた「石の絵」を見ると、笑いが出てくるのだった。
「どっちでもいいや、もう」
ペットたちと並んでお菓子を食べる貴史の無事な成長を、ただただ祈った。
戻るとお昼の時間で、集合場所へ行ってお弁当を食べる。
「どこで書いてたのかしら。先生、探したのにわからなかったわ」
一応教師が見回りをしていたのだが、見つからなかったようだ。
「それはその……」
「秘密よ、先生。絵を楽しみにしていて」
「え、えへへ。うん」
担任の田端は怪しみながらも、
「入っちゃいけないところは入っちゃだめよ」
と言うのにとどめ、
「あんまり回ってないところ……あ、テニスコートはまさか誰も行ってないと思って行ってないわ」
とつぶやき、ふと、隊長たちに目をとめた。
「どうしたのかしら、その犬とか」
どう考えても、朝には居なかった。
「家が近いから、来ちゃったみたいね」
亜弓が言うと、隊長も舌を出してハッハッと言う。
「まあ、仕方が無いわね。もう次はダメよ」
「はあい」
「オカマイナクー」
その日、現場にいた警察官から尚史に連絡が行き、あっさりと貴史たちのことはバレた。
一応、黙って抜け出したことは叱られたが、よくやったと褒められた。
そして、あのおじさんは無事に宝石を売って会社を建て直すことができそうだと、お菓子をお礼に持ってきてくれた。
そして、問題の写生だ。
貴史たちは画用紙をほぼ灰色に塗りたくって提出した。
教師陣が誰も来てそうにないところである駐車場の、石を題材にしたと言ってある。
それを遊びに来た春彦に見せて遠足の話をすると、春彦は爆笑した。尚史は苦笑している。
「お前は、大物になりそうだな」
「そうかなあ」
「おう」
「ありがとう、春ちゃん。
それでね、お弁当が凄く美味しかったんだよ。春ちゃんもきっとびっくりしたよ。お菓子も皆で食べたんだあ。
あ、そうだ。お菓子食べよう。おじさんがくれんだよ」
貴史はうきうきとお菓子を出してくる。
「隊長、ジミーくん、モモちゃん、ハリーじい、ハムさん。おやつにしよう」
それで彼らも集まってくる。
犬用のクッキーと果物などを準備し、揃っておやつだ。
「まあ、何事もなく無事で、犯人も捕まえられたし、よかったな」
春彦はそう言って尚史の肩をばんばんと叩く。
「まったく。たかが遠足と思っていたのに、知らないうちに大冒険してたんだからな」
「くそ度胸はお前譲り、天然なら恵美ちゃん譲りだな」
「ひとごとだと思いやがって、春彦は」
春彦と尚史は言い合っていたが、貴史の書いた「石の絵」を見ると、笑いが出てくるのだった。
「どっちでもいいや、もう」
ペットたちと並んでお菓子を食べる貴史の無事な成長を、ただただ祈った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
まずい飯が食べたくて
森園ことり
ライト文芸
有名店の仕事を辞めて、叔父の居酒屋を手伝うようになった料理人の新(あらた)。いい転職先の話が舞い込むが、新は居酒屋の仕事に惹かれていく。気になる女性も現れて…。
※この作品は「エブリスタ」にも投稿しています
お昼ごはんはすべての始まり
山いい奈
ライト文芸
大阪あびこに住まう紗奈は、新卒で天王寺のデザイン会社に就職する。
その職場には「お料理部」なるものがあり、交代でお昼ごはんを作っている。
そこに誘われる紗奈。だがお料理がほとんどできない紗奈は断る。だが先輩が教えてくれると言ってくれたので、甘えることにした。
このお話は、紗奈がお料理やお仕事、恋人の雪哉さんと関わり合うことで成長していく物語です。
夜食屋ふくろう
森園ことり
ライト文芸
森のはずれで喫茶店『梟(ふくろう)』を営む双子の紅と祭。祖父のお店を受け継いだものの、立地が悪くて潰れかけている。そこで二人は、深夜にお客の家に赴いて夜食を作る『夜食屋ふくろう』をはじめることにした。眠れずに夜食を注文したお客たちの身の上話に耳を傾けながら、おいしい夜食を作る双子たち。また、紅は一年前に姿を消した幼なじみの昴流の身を案じていた……。
(※この作品はエブリスタにも投稿しています)
失せ『者』探し、いたします~明知探偵事務所のイクメン調査員は超イケメン~
清見こうじ
ライト文芸
★令和4年〈メディアワークス文庫×3つのお題〉コンテスト◆ホラー×ミステリー部門 最終候補に選出されました🎵
★大事10回ネット小説大賞一次選考通過しました🎵
⭐エブリスタ令和3年3月後半期「新作セレクション」&ミステリー部門トレンドランキング1位作品に選ばれました!
【あらすじ】明知探偵事務所の調査員、土岐田瑛比古さんは街で噂の超イケメン! そして、男手ひとつで4人の子供を育てるスーパーイクメンでもあります。担当は謎が謎を呼ぶ不可思議案件。この度持ち込まれたのは「夕暮れの公園・父子消失事件」。ご先祖様のお力をちょっとお借りして解決に乗り出しますが、なぜか巻き込まれる長男・ハルこと晴比古くん、20歳。事件の影に隠された悲劇と向き合うことになりますが……。
※「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルデイズ」「エブリスタ」でも公開しています
奴隷市場
北きつね
ライト文芸
国が少子高齢化対策の目玉として打ち出した政策が奴隷制度の導入だ。
狂った制度である事は間違いないのだが、高齢者が自分を介護させる為に、奴隷を購入する。奴隷も、介護が終われば開放される事になる。そして、住む場所やうまくすれば財産も手に入る。
男は、奴隷市場で1人の少女と出会った。
家族を無くし、親戚からは疎まれて、学校ではいじめに有っていた少女。
男は、少女に惹かれる。入札するなと言われていた、少女に男は入札した。
徐々に明らかになっていく、二人の因果。そして、その先に待ち受けていた事とは・・・。
二人が得た物は、そして失った物は?
アッキーラ・エンサィオ006『彼女が僕のほっぺたを舐めてくれたんだ』
二市アキラ(フタツシ アキラ)
ライト文芸
多元宇宙並行世界の移動中に遭難してしまった訳あり美少年・鯉太郎のアダルトサバイバルゲーム。あるいは変態する変形合体マトリューシカ式エッセイ。(一応、物語としての起承転結はありますが、どこで読んでも楽しめます。)グローリーな万華鏡BLを追体験!てな、はやい話が"男の娘日記"です。
【完結】恋文が苦手な代筆屋のウラ事情~心を汲み取る手紙~
じゅん
ライト文芸
【第7回「ライト文芸大賞 」奨励賞 受賞👑】依頼人の思いを汲み取り、気持ちを手紙にしたためる「代筆屋」。しかし、相手の心に寄り添いきれていなかった代筆屋の貴之が、看護師の美優と出会い、避けていた過去に向き合うまでを描くヒューマンストーリー。
突然、貴之の前に現れた美優。初対面のはずが、美優は意味深な発言をして貴之を困惑させる。2人の出会いは偶然ではなく――。
代筆屋の依頼人による「ほっこり」「感動」物語が進むうち、2人が近づいていく関係性もお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる