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4章 みんなの母親アオイはふんわりで怖い
第13話 綺麗で不思議な室内
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もふもふ家族院の玄関扉に手をかける。ゆっくりと開けた。
途端、ふわりと柔らかい匂いが漂ってくる。
外観から大きな建物だなと思っていたが、エントランスはユウキが思っていたよりもずっと広々としていた。
天井は吹き抜けになっているのか高く、二階部分にある丸い窓から外光が温かく差し込んでいる。
エントランスに隣接してリビングスペースがあり、快適そうなソファや椅子がいくつか並んでいた。病院では見たことがないような、木製の大きな丸テーブルもある。鉢植えの観葉植物が適度に配置され、見ているだけで心が落ち着くようだ。
その奥にはダイニングエリアだろうか。長テーブルと椅子の向こうに、ちらりとキッチンの様子も見えた。
エントランスの奥に二階へと上がる階段がある。ユウキのような素人が写真を撮っても、きっと誰もが「素敵」と言ってくれそうなほど、趣のある木製階段だ。映画に出てきそうである。
おそらく天使様が、家族院の皆のために造ってくれたものだろう。
今まで映像や本でしか見たことがなかった光景を、ユウキは自分の目で捉えている。
すごい、本当にすごいや――とユウキは感動に震えながらつぶやいた。
柔らかな絨毯の上を歩いたとき、かさりと、靴がなにかを踏んだ。
綺麗に掃き清められてた床に、何枚か紙が落ちていた。文字がびっしり書いてある。
「あー、サキ。また資料を散らかしてる」
「なはははは」
ヒナタの苦言に、サキが笑って誤魔化す。
彼女らと一緒に紙を拾って片付ける。ヒナタによると、これはサキが研究用にメモしたものだという。リビングで書き物に集中する寝癖少女は、よくこうして資料をぶちまけては家族に怒られているらしい。
ふたりの少女のやり取りを微笑みながら聞いていたユウキは、ふと手元の紙に視線を落とした。異世界人であるサキが走り書きした文章。さすがに読めないよな――と思っていると、不思議なことに頭の中で文章がスラスラと翻訳されていく。
初めて見る文字なのに、『読める』。本当に驚きの感覚だった。
これは転生者の能力なのだろうか。
「ユウキ? どうしたの。目、大丈夫?」
「え?」
「いま、ユウキの目がちょっとだけチカチカしてた」
言われて目をこする。自分では確認できないが、どうやら文章を読んでいるとき瞳の色に変化が起きたらしい。
ユウキは何度か瞬きをして、「大丈夫。なんともないよ」と答えた。この世界の文字が読めるのなら、とても素晴らしいことだ。多少、見た目が変わることなど気にする必要はないだろう、とユウキは思った。あっさりと気持ちを切り替える。
例によってじーっと瞳を観察してくるサキに、拾った紙束を渡す。
ユウキは家族院の中を見渡した。
「とても綺麗な家だね」
「でしょ? すごく快適なの。皆で一緒に暮らしてるから、お掃除とか家のこととかは分担してやってるんだよ。……サキとかはよくサボりがちだけど」
「なはははははは!」
また誤魔化す。ユウキも笑った。
――僕、家事のことは全然わからないや。ヒナタや皆に教えてもらって、早くできるようになろう。
三人でリビングへ向かう。
そのとき、ひとりユウキの足が止まる。
リビングスペースにはふかふかソファーや椅子、テーブルの他にも、大きな本棚や暖炉がある。
その、暖炉の上に、なにやら奇妙なものを見つけたのだ。
丸い。真っ白だ。
毛玉としか言いようがないほどのもふもふ。ユウキの小さな両手にすっぽりと収まるくらいのサイズ感。
最初は風変わりな置物かと思った。
しかし、じっと見つめていると――。
ころころ……。
ころころ……。
「わあ……」
ユウキの目の前で、右へコロコロ、左へコロコロと、ひとりでに動いているのだ。
吸い寄せられるように暖炉へ近づくユウキ。
間近でこの不思議な『もふもふ』を観察する。
「わあ……え?」
もふもふと、目が合った。
途端、ふわりと柔らかい匂いが漂ってくる。
外観から大きな建物だなと思っていたが、エントランスはユウキが思っていたよりもずっと広々としていた。
天井は吹き抜けになっているのか高く、二階部分にある丸い窓から外光が温かく差し込んでいる。
エントランスに隣接してリビングスペースがあり、快適そうなソファや椅子がいくつか並んでいた。病院では見たことがないような、木製の大きな丸テーブルもある。鉢植えの観葉植物が適度に配置され、見ているだけで心が落ち着くようだ。
その奥にはダイニングエリアだろうか。長テーブルと椅子の向こうに、ちらりとキッチンの様子も見えた。
エントランスの奥に二階へと上がる階段がある。ユウキのような素人が写真を撮っても、きっと誰もが「素敵」と言ってくれそうなほど、趣のある木製階段だ。映画に出てきそうである。
おそらく天使様が、家族院の皆のために造ってくれたものだろう。
今まで映像や本でしか見たことがなかった光景を、ユウキは自分の目で捉えている。
すごい、本当にすごいや――とユウキは感動に震えながらつぶやいた。
柔らかな絨毯の上を歩いたとき、かさりと、靴がなにかを踏んだ。
綺麗に掃き清められてた床に、何枚か紙が落ちていた。文字がびっしり書いてある。
「あー、サキ。また資料を散らかしてる」
「なはははは」
ヒナタの苦言に、サキが笑って誤魔化す。
彼女らと一緒に紙を拾って片付ける。ヒナタによると、これはサキが研究用にメモしたものだという。リビングで書き物に集中する寝癖少女は、よくこうして資料をぶちまけては家族に怒られているらしい。
ふたりの少女のやり取りを微笑みながら聞いていたユウキは、ふと手元の紙に視線を落とした。異世界人であるサキが走り書きした文章。さすがに読めないよな――と思っていると、不思議なことに頭の中で文章がスラスラと翻訳されていく。
初めて見る文字なのに、『読める』。本当に驚きの感覚だった。
これは転生者の能力なのだろうか。
「ユウキ? どうしたの。目、大丈夫?」
「え?」
「いま、ユウキの目がちょっとだけチカチカしてた」
言われて目をこする。自分では確認できないが、どうやら文章を読んでいるとき瞳の色に変化が起きたらしい。
ユウキは何度か瞬きをして、「大丈夫。なんともないよ」と答えた。この世界の文字が読めるのなら、とても素晴らしいことだ。多少、見た目が変わることなど気にする必要はないだろう、とユウキは思った。あっさりと気持ちを切り替える。
例によってじーっと瞳を観察してくるサキに、拾った紙束を渡す。
ユウキは家族院の中を見渡した。
「とても綺麗な家だね」
「でしょ? すごく快適なの。皆で一緒に暮らしてるから、お掃除とか家のこととかは分担してやってるんだよ。……サキとかはよくサボりがちだけど」
「なはははははは!」
また誤魔化す。ユウキも笑った。
――僕、家事のことは全然わからないや。ヒナタや皆に教えてもらって、早くできるようになろう。
三人でリビングへ向かう。
そのとき、ひとりユウキの足が止まる。
リビングスペースにはふかふかソファーや椅子、テーブルの他にも、大きな本棚や暖炉がある。
その、暖炉の上に、なにやら奇妙なものを見つけたのだ。
丸い。真っ白だ。
毛玉としか言いようがないほどのもふもふ。ユウキの小さな両手にすっぽりと収まるくらいのサイズ感。
最初は風変わりな置物かと思った。
しかし、じっと見つめていると――。
ころころ……。
ころころ……。
「わあ……」
ユウキの目の前で、右へコロコロ、左へコロコロと、ひとりでに動いているのだ。
吸い寄せられるように暖炉へ近づくユウキ。
間近でこの不思議な『もふもふ』を観察する。
「わあ……え?」
もふもふと、目が合った。
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