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【40】ご両親、関係各位

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 それは、この世界に転生してからどこか慣れ親しんだ感覚。
 このまま物事が穏やかに収まると思うなよ――と言わんばかりの、運命のいたずら。意地悪。
 こう……首筋の辺りがチクチクして背中に汗がにじんでくる、アレな感覚。

「ほお……」

 ディル君が小さくつぶやいた。
 珍しく、私以外のものに感心した声だ。
 私も、『それ』に目が釘付けになる。

 とんっ。とんっ。とんっ。
 軽やかにステップを踏むアムルちゃん。
 いつしか鼻歌を口ずさむのも止め、一心不乱に踊り続けている。

 彼女の身体が、白い光に包まれていた。
 まるで少女アニメの変身シ――いや、この喩えは止めよう。やり直し。
 まるで魔法で織った絹の衣を、踊りながらまとっていくよう。

 とても綺麗。とても幻想的。
 そしてとても――人間離れした光景。

「…………はぁ……っ」

 私たちの前。
 頬を紅潮させ、吐息をもらすアムルちゃん。同性の私でもドキリとする魅力を放っていた。

「アムルちゃん……」

 私はつぶやいた。

「その格好は」
「お姉様……」

 こちらを見上げるアムルちゃんは、天女のような純白の布をまとっていた。
 聖女初心者の私でも感じる、すさまじい聖の魔力。
 これは――。

「素晴らしい進化です主様。この娘の才能、大聖女の城の無限の魔力、そして主様から放たれる聖なる力。それらがこの眠りの間でひとつとなり、新たな聖女の使いを生み出したのです」
「お姉様。わたくしにもわかります。この力……お姉様のものと輝きが同じ。わたくし、無理を言ってここに来て本当に良かったですわ」

 アムルちゃんが目尻に涙を浮かべながら、輝く微笑みを浮かべた。

「図らずも、お姉様のしもべとして生まれ変わることができたのですから!」
「おめでとう、アムルお嬢。いや、これからは同じ主をあおぐ同志として、アムルと呼ぼう」
「はい、ディルお兄様! これからも末永くよろしくお願いしますわ!」

 ふたりの視線が同時に私に向けられる。

 私はその場にひざまずいた。毎日カナディア様に祈りを捧げるように両手を組み、強く、強く心の中で念じた。

 ――アムルちゃんのご両親。関係各位。ほんっっっっっとうに申し訳ありません娘さんが人間卒業してしまいました……っ!!
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