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大商人への道
352ー2 最悪の魔獣大氾濫(4)ー2
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◇◇ アルファス国王 地下執務室 ◇◇
これ程の災厄が同時に起こるなどと、いったい誰が想像できただろう。
第一報は、第6王子ルフナがグレードラゴンに襲われ、意識のない状態で高学院に搬送されたとの知らせから始まった。
そしてマギ領・サナへ領・王都・レイム領と、次々にグレードラゴンに襲撃されたと報告が入った。
レイム領は、ブラックドラゴンまでもが加わっている。
最後に報告がきたリドミウム領は、グレードラゴンと魔獣の大群の両方に襲撃された。
グレードラゴンの襲撃は、ブラックドラゴンの雄がティー山脈のグレードラゴンを洗脳したことが原因だと判明している。
王都には、これまでで最高数の6頭が襲来し、いつもの如く王城に被害が出たが、勇者様と光のドラゴンの活躍により数は半分になっている。
レイム領はブラックドラゴンにより旧市街を焼かれ、大きな被害を出したが、間一髪で覇王様によってブラックドラゴンとグレードラゴンは討伐された。
最も被害が大きかったサナへ領では、龍山近くの町がグレードラゴンによって蹂躙され、領都サナへでは領主や側近である高位貴族が亡くなった。
サナへ領からは、何度も覇王軍の出動要請があったが、同時襲撃の可能性がある時は出動できない決まりだと断った。
そもそも覇王軍メンバーは、王都に居なかったのだ。
ずっと私を支えてくれたサナへ侯爵の死の知らせは、通信魔術具で夜遅くに届けられ、助けられなかった申し訳なさに心が痛んだ。
「まるで覇王軍が出動しなかったから、領主が死んだのだと匂わせるような物言いをするなんて、王妃として許せませんわ。
覇王様を敬うことなく、自分の領地だけ特別扱いで覇王軍に助けてもらおうだなんて、その思考こそ、王として厳しく指導すべきでしたわね」
盟友の死の知らせに、何もできなかった無力な己を責め、申し訳なかったと後悔の念に涙していた私に、王妃は怒りを隠さず言い放った。
……助けられなくて済まないと謝罪するのではなく、厳しく指導すべき?
……何故? どうして親友だったマギ公爵まで同意するように頷くのだ?
「自分の領地は自分で守れるようにと、覇王様は覇王講座を開かれましたが、それでも危機が迫れば、命を顧みず戦ってこられました。
私は領主として、心から有難いと感謝してきたのに、サナへ領は違いました。
自分たちの怠慢を棚に上げ、命懸けで戦っている者を責めようとした。
そんな腐った根性、私が王なら、いい加減にしろ! と叱咤したでしょう。
自分たち臣下が不甲斐ないから、領主を死なせてしまったのだと、何故反省しないのでしょう? 私には理解できません。
王様、このままサナへ領を放置すれば、第二のサーシム領になりますよ」
王妃の言葉にショックを受けていた私に、ワイコリーム公爵は更なる追い打ちをかけるように言った。
……領主代行に政治を任せ、領主が管理監督責任を果たさなかった旧サーシム領と同じことになる?
……サナへ侯爵は、領地を顧みなかったのか? いや、嫡男が領地に居るはずだ。
「王様、まだお分かりになりませんか? 覇王様は民を一番に考えられますが、サナへ侯爵は民ではなく貴族主義でしたよ。
だからサナへ領の貴族の多くは、民を一番に考える覇王様を、平民出の卑しい覇王と陰で蔑んでいましたよ。まあ、ラレスト王国の貴族も同じでしたが」
ラレスト王国の残党を捕らえた一般軍大臣のハシム殿は、厳しい視線を私に向けて言った。
娘が王立高学院特別部隊の指揮を執っていて、何度かサナへ領へ救済活動に行っていたが、覇王様に対する言動や態度に、学生たちは全員が腹を立て、サナへ領の貴族は信用できないと言っていますと付け加えた。
これ以上の衝撃があるだろうか?
覇王様は私の息子だ。王子でもあるのに平民出の卑しい覇王?
何度も窮地を助けていただきながら、国王より尊い覇王様を蔑んでいる?
はあ? なんだと!
怒りがふつふつと込み上げてくるが、その怒りは己にこそ向けられるべきだと気付く。
後悔で頭を抱えていても、時は無情に過ぎていく。
グレードラゴンは未だ王城に居座り、未明には激しい雨まで降り始めた。
これ程の災厄が同時に起こるなどと、いったい誰が想像できただろう。
第一報は、第6王子ルフナがグレードラゴンに襲われ、意識のない状態で高学院に搬送されたとの知らせから始まった。
そしてマギ領・サナへ領・王都・レイム領と、次々にグレードラゴンに襲撃されたと報告が入った。
レイム領は、ブラックドラゴンまでもが加わっている。
最後に報告がきたリドミウム領は、グレードラゴンと魔獣の大群の両方に襲撃された。
グレードラゴンの襲撃は、ブラックドラゴンの雄がティー山脈のグレードラゴンを洗脳したことが原因だと判明している。
王都には、これまでで最高数の6頭が襲来し、いつもの如く王城に被害が出たが、勇者様と光のドラゴンの活躍により数は半分になっている。
レイム領はブラックドラゴンにより旧市街を焼かれ、大きな被害を出したが、間一髪で覇王様によってブラックドラゴンとグレードラゴンは討伐された。
最も被害が大きかったサナへ領では、龍山近くの町がグレードラゴンによって蹂躙され、領都サナへでは領主や側近である高位貴族が亡くなった。
サナへ領からは、何度も覇王軍の出動要請があったが、同時襲撃の可能性がある時は出動できない決まりだと断った。
そもそも覇王軍メンバーは、王都に居なかったのだ。
ずっと私を支えてくれたサナへ侯爵の死の知らせは、通信魔術具で夜遅くに届けられ、助けられなかった申し訳なさに心が痛んだ。
「まるで覇王軍が出動しなかったから、領主が死んだのだと匂わせるような物言いをするなんて、王妃として許せませんわ。
覇王様を敬うことなく、自分の領地だけ特別扱いで覇王軍に助けてもらおうだなんて、その思考こそ、王として厳しく指導すべきでしたわね」
盟友の死の知らせに、何もできなかった無力な己を責め、申し訳なかったと後悔の念に涙していた私に、王妃は怒りを隠さず言い放った。
……助けられなくて済まないと謝罪するのではなく、厳しく指導すべき?
……何故? どうして親友だったマギ公爵まで同意するように頷くのだ?
「自分の領地は自分で守れるようにと、覇王様は覇王講座を開かれましたが、それでも危機が迫れば、命を顧みず戦ってこられました。
私は領主として、心から有難いと感謝してきたのに、サナへ領は違いました。
自分たちの怠慢を棚に上げ、命懸けで戦っている者を責めようとした。
そんな腐った根性、私が王なら、いい加減にしろ! と叱咤したでしょう。
自分たち臣下が不甲斐ないから、領主を死なせてしまったのだと、何故反省しないのでしょう? 私には理解できません。
王様、このままサナへ領を放置すれば、第二のサーシム領になりますよ」
王妃の言葉にショックを受けていた私に、ワイコリーム公爵は更なる追い打ちをかけるように言った。
……領主代行に政治を任せ、領主が管理監督責任を果たさなかった旧サーシム領と同じことになる?
……サナへ侯爵は、領地を顧みなかったのか? いや、嫡男が領地に居るはずだ。
「王様、まだお分かりになりませんか? 覇王様は民を一番に考えられますが、サナへ侯爵は民ではなく貴族主義でしたよ。
だからサナへ領の貴族の多くは、民を一番に考える覇王様を、平民出の卑しい覇王と陰で蔑んでいましたよ。まあ、ラレスト王国の貴族も同じでしたが」
ラレスト王国の残党を捕らえた一般軍大臣のハシム殿は、厳しい視線を私に向けて言った。
娘が王立高学院特別部隊の指揮を執っていて、何度かサナへ領へ救済活動に行っていたが、覇王様に対する言動や態度に、学生たちは全員が腹を立て、サナへ領の貴族は信用できないと言っていますと付け加えた。
これ以上の衝撃があるだろうか?
覇王様は私の息子だ。王子でもあるのに平民出の卑しい覇王?
何度も窮地を助けていただきながら、国王より尊い覇王様を蔑んでいる?
はあ? なんだと!
怒りがふつふつと込み上げてくるが、その怒りは己にこそ向けられるべきだと気付く。
後悔で頭を抱えていても、時は無情に過ぎていく。
グレードラゴンは未だ王城に居座り、未明には激しい雨まで降り始めた。
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