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大商人への道

346ー1 覇王・勇者学園都市(2)ー1

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 エクレアから話を聞いた俺は、トゥーリス先輩に後のことを頼んで、聖魔法が使えるトーブル先輩と一緒にランドルに乗って龍山へと向かった。
 途中、エクレアが何度も瞬間移動して、ケガの度合いや着地している場所を教えてくれる。

『ラリエスは、持っていた中級ポーションを直ぐに使って、ケガの酷いルフナ王子の手当を行っているわ。
 ラリエスも全身打撲で骨の異常があったけど、ルフナ王子は骨折と裂傷、頭にもケガを負っていて、そのせいか意識が戻らないままよ』

 命に別状はないと思うけれどと付け加え、エリスの翼の方が深刻かもしれないと厳しい表情でエクレアが言う。
 
「それで、今はグレードラゴンの攻撃から身を守れているのか?」

『ええアコル、着地というか落下したあと、なんとか木々の間まで移動したみたい』

 目的地である龍山の北東側は、なだらかな斜面になっていて背の高い木々の多い地帯だ。
 魔獣が氾濫した時は発見するのが困難な場所だが、上空のグレードラゴンの目から逃れるには良い場所だろう。

 逸る気持ちを抑えて、グレードラゴンの巣が確認されていた南側の斜面の現状を確認しに行く。
 グレードラゴンが、何故群れで襲ってきたのかが気になる。
 もしかしらた、ブラックドラゴンの雄が関係しているかもしれない。


 確認されていたグレードラゴンの巣より100メートル上空を飛んでいると、眼下には信じられない光景が繰り広げられていた。

「グレードラゴン同士が戦っている? ん? 片方の群はなんだか動きが鈍いようだが、数で優勢って感じなのか?」 

 龍山で確認されていたグレードラゴンの成獣の数は30頭足らずだったはずだが、現在激しく戦っているグレードラゴンの数は50頭を越えている。
 巨大なグレードラゴンの大群が、ギャーギャー喚きながら戦う凄惨な様を人間が間近で見たら、この世の終わりかと思って絶望しそうだ。

 どうやら30頭を越えている方の群は、龍山以外の場所から来たようだ。
 グレードラゴン同士が縄張り争いするとは、全く予想していなかった。

 ……恐らく、半分死んだような目をして戦っている群は、ブラックドラゴンに洗脳されていると考えて間違いないだろう。


 2,000メートル付近に住んでいた上位魔獣が、恐れをなして逃げ出している。
 下手をすると再び魔獣の大氾濫が起こってしまうが、俺としたら、このまま戦わせてグレードラゴンの数を減らしたいところだ。

『ブラックドラゴンの姿は見当たらないねアコル』

「ああランドル。こいつらは、ティー山脈から来たんだと思う。よし、巻き込まれないよう離脱しエリスの所に向かおう」

 群同士の縄張り争いの行方も気になるが、今は仲間の治療を優先しよう。

「ロルフ、マリード領・コルラド領以外に、グレードラゴンの大群が向かう可能性があると伝えて、第一級警戒態勢をとらせてくれ」

『了解じゃ主。王宮と覇王軍本部の両方に指示を出しておこう』

賢者妖精ロルフも危機感を募らせ、王都に向かって瞬間移動していく。 

 先月カルタック教授率いる古代魔術具複製メンバーが、通信魔術具の複製に成功し、冒険者ギルド以外に全領主屋敷にも設置できた。
 王宮からは領主屋敷に緊急連絡が届けられ、覇王軍本部からは各領地の冒険者ギルド支部に指示が飛ぶ。

 ……もともと龍山に住んでいたグレードラゴンの群が負けたら、他の山に移動するしかない。
 ……しかも手負いだ。何が起こるか分からない。



 北東側斜面に来るとエリスの守護妖精トワが現れ、悲愴な面持ちで道案内してくれる。

「アコル様、ラリエスが泣いています。何度もエリスにごめんって謝りながら。
 ラリエスのせいじゃない……のに、私も……何もできなくて……どうか、どうかエリスを助けてください」
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