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大商人への道

341ー1 改革(3)ー1

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 旧ヘイズ高学院の昨日までの名称は、ラレスト王国高学院だったそうで、ワートン領にあった旧ワートン高学院は、現在閉鎖されているらしい。
 旧ワートン高学院の学生は、ラレスト王国高学院に転学し、総定数240人になっていたが、逃げた者や経済的な事情から、今日現在では60人に激減している。

 学院内に入ると、建物の一部は魔獣の通り道になっていたため崩れているが、古い教室だったので講義に影響は出ていないとのこと。
 教師の数も激減し、これまで通りの講義はできそうにない。
 学生は俺の命令で毎日救済活動をしていたが、今日は体育館で待機している。


「皆さんこんにちは。私は、覇王様の命により、本日からこの学院、【学園都市高学院】の副学院長に就任することになったエリザーテです。
 王立高学院の上級貴族部を飛び級で卒業し、現在は魔法部の3年に在籍しています。

 卒業に必要なB級一般魔術師資格も取り終え、本日より副学院長兼、総合学部の講師として教鞭を執ります。
 今後学部名は、貴族部を総合学部、商学部を経済学部、特務部を治安学部に変更し、総合学部は2年間、他の2学部は1年で卒業していただきます」

「ええぇーっ!」

昨日まで学生たちの救済活動を指揮していたエリザーテさんの発言に、体育館内の学生も教師を驚きの声を上げる。
 
「私の目標は、この場に居る全学生を1か月間で鍛え上げ、今年度中に卒業させることです。
 私は覇王様や勇者様と同じ実力主義者なので、能力のない学生には退学して頂きます。卒業したければ、最後まで私の指導に付いてくればいいだけです」

 フフフと微笑むエリザーテさんは、今日も隊服が似合い過ぎて美しい。容赦なさにも磨きがかかっているようで頼もしい。


「覇王アコルだ。諸君にはこれから卒業までの3ヶ月間、卒業試験として実習を受けて貰う。
 総合学部と経済学部の者は、覇王・勇者学園都市の様々な業務を手伝い学んでもらう。治安学部の者は、治安部隊と共に治安維持活動をする。

 そして7月末時点で各部署の上司が、正職員として働いても大丈夫だと認めれば、卒業単位の取得となる。
 また希望者は男女問わず、学園都市の職員として就職できるものとする。
 卒業試験は就職試験も兼ねているから、よく考えて実習しろ。

 入学試験を受け合格すれば、これから設立する【覇王学園】と【勇者学園】に進学することもできる。
 俺は身分には何の拘りもないから、全て実力で評価する!
 新しい学園都市を、共に作り上げていく気概のある学生に期待している」

俺は覇王らしく命令口調で話しながら、輝く瞳で真剣に俺の話を聞いている学生が多いことに気付き嬉しくなった。

 救済活動を共にしたラノーブから、学生の多くは覇王様と勇者様が直轄地にしたことを歓迎しているし、覇王軍や王立高学院特別部隊に対する憧れも大きいようですと聞いている。

 学院長代理から正式に学院長に就任したシトラ52歳は、教師も学生も覇王様に従うだろうと言っていたが、名乗ったくらいでは大して影響しなくなった覇気なのに、2人の教師と5人の学生が尻もちをついた。

 心配性のラリエスとマサルーノ先輩が、直ぐに尻もちをついた7人をチェックする。
 親は逃げたが残っている学生も居るし、貴族主義の教師だって居るはずだから、この数は少ないと思っていいだろう。

 ……まあ、現役の学生であるエリザーテさんを副学院長に任命したことへの不満もあるのだろう。

 ……でも、【覇王・勇者学園都市】の大臣に相当する部長職には、卒業しているボンテンク以外は、執行部の現役学生が就任する予定なんだけどな。


「こんにちは。勇者ラリエスです。
 私が皆さんに望むのは、今自分にできることは何だろうかと考え、行動する能力を身に着けることです。
 私は、身分ではなく実力で評価し、その実力に見合った地位を与えると約束します」

 尊敬する勇者の話を、皆は真剣に聞き入っていく。
 最後に新学院長が、これからの予定と決定事項を簡単に説明した。
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